国立市 異例の事態 完成間近のマンションが解体へ

2024.06.12(水)

10:50

国立市にある完成間近のマンションが引き渡しの直前に急きょ解体される異例の事態となりました。その理由は、「富士山が見えなくなる」という住民からの訴えでした。

国立市にある完成間近のマンションが引き渡しの直前に急きょ解体される異例の事態となりました。その理由は、「富士山が見えなくなる」という住民からの訴えでした。

記者:「本来ならこの先に富士山の全貌が見えるのですが、あちらにあるマンションが建ったことによって景色が遮られ、このたび解体することになりました」

解体が決まったのは、JR国立駅から歩いて10分ほどの場所にある「グランドメゾン国立富士見通り」です。

記者:「このように事業中止のお知らせと解体に向けた準備のお知らせと書かれている紙が張られています」

マンションは地上10階建ての18戸で去年1月に着工し、来月引き渡しの予定でしたが、今月4日、事業主の積水ハウスが国立市に事業の中止と建物の解体を届け出ました。一体なぜ、このような事態になったのか…

近隣の人:「富士山がすごく見えるのを楽しみに、よく振り返りながら通っていた。それが半分になってしまって、富士見通りの意味を成さないかな」「シルエットが残っていないですもんね、これのせいで。右側のシルエットが全然なくなっちゃっていたから」

マンションの前にある「富士見通り」はその名のとおり、美しい富士山を眺めることができ「関東の富士見100景」に選ばれるほどの場所です。しかしマンションの建設によって富士山の半分が見えなくなってしまい、周辺住民らがマンション建設に反対を訴えました。積水ハウスは富士山の眺望に影響が出るという指摘を受け、11階建ての計画を10階建てに変更するなど修正を重ねましたが、先月、「景観への影響の検討が不十分」だとして完成直前に解体することを決定しました。

近隣の人:「それこそなんか資源の無駄じゃないけどね」「こうなる前に話し合いがもうちょっとできてたら良かったじゃないですかね」

積水ハウスは契約者に対し、順次返金など、できるかぎりの対応を行っていくとしています。

住宅の引渡しが来月に迫る中、完成直前のマンションが解体になるという異例の事態について不動産コンサルタントの長嶋さんに聞きました。

「ある意味前代未聞、おそらく初めてのケースではないかと思います。景観眺望に配慮するといった設計変更をした上で、建設工事に踏み切っていくと。今回はそうしたプロセスも経ているんですね。場合によっては裁判になるとかですね、あるいは反対運動が続くということが懸念されたんだと思います」

長嶋さんによりますと今回のマンションは法令に遵守した形で建築が進められていたものの、「不動産業界の慣例」として住宅メーカー側が地域の声を聞いていたということなんです。そして完成間近のマンションの解体に踏み切る背景として、反対運動の長期化や裁判などへの発展を懸念して、「金銭的な損失」のほうを選んだのではないかと長嶋さんは推測しています。

では、その金銭的な損失がどれほどかといいますと、数十億円から100億円に上るのではないかということなんです。住宅メーカーとしては建築費や解体費、マンションの契約者に返却する手付け金に加え、判断が入居開始ぎりぎりだったことから「お詫び金」なども発生する場合があるということで長嶋さんは最大100億円ほどの損失になるのではと推測しています。

このように大きな損失が予想される異例の事態が、不動産業界全体にどのような影響を与えるかも伺いました。今回の解体を例にとり、マンション建設に対する反対の声が強まることで、住宅メーカーとしては「一定の配慮をしても建築を進められない」あるいは「建築後も問題が起きてしまう」といった懸念から、マンション建設が今後、慎重になっていく可能性もあると長嶋さんは警鐘を鳴らしています。

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