東京都議会で“異例の”発言取り消し動議 認識は?

2024.06.03(月)

10:50

東京都議会の第2回定例会が始まりました。7月の都知事選と都議補選前の最後の定例会ということで、各政党による活発な議論が繰り広げられる見込みです。その一方で、3月に開かれた都議会では「議員の発言を取り消す動議」が提出され、成立しました。極めて異例ともいえる「発言の取り消し動議」の背景を取材しました。

東京都議会の第2回定例会が始まりました。7月の都知事選と都議補選前の最後の定例会ということで、各政党による活発な議論が繰り広げられる見込みです。その一方で、3月に開かれた都議会では「議員の発言を取り消す動議」が提出され、成立しました。極めて異例ともいえる「発言の取り消し動議」の背景を取材しました。

3月の都議会予算特別委員会で自民党、都民ファーストの会と公明党が、共産党議員の発言について取り消しを求める動議を提出し、成立しました。

動議の発端は、予算特別委員会で共産党の福手裕子都議が東京都・子供政策連携室長との質疑の中で一人称を「私」として、東京都こども基本条例を巡り「子どもの国籍は問わない」という答弁を過去に得たとする発言をしたことでした。

3月13日・予算特別委員会 共産党の福手都議「以前、私、委員会で『国籍を問わないか』という質問をして、その時は『子どもに国籍は問わない』と答弁された。国籍を問わないと前に答弁したが、もう一度伺います」

東京都・子供政策連携室の田中慎一室長(当時)「東京都こども基本条例に規定されている子どもとは全ての子どもであると認識している。施策の実施に当たって、東京都こども基本条例の理念と施策の性質を踏まえて判断されるべきものだと考えている」

福手都議「では、以前『国籍は問わない』と言ったのは何だったのか?なぜここでちゃんと『国籍は問わない』と言えないのか」

発言の取り消しを求める動議では「過去に質問をしたのは福手都議ではなく、同じ共産党の原都議」「都側で答弁したのは子供政策連携室長ではなく、人権部長」「対象となったのは東京都こども基本条例ではなく、人権尊重条例」だと指摘し、これらの点を踏まえ、福手都議の発言は「虚偽である」としました。

つまり、都側が過去に人権尊重条例の考え方では「国籍は問わない」と答弁したにもかかわらず、予算特別委員会では人権尊重条例ではなくこども基本条例を引き合いに出し、子どもの学ぶ権利の尊重の対象について「国籍は問わない」という都の答弁を引き出そうとした、と動議は結論付けています。 

3月26日の予算特別委員会で、都民ファーストの会の菅原直志都議は「総務委員会などで東京都こども基本条例第8条の規定にかかる学ぶ権利の尊重の対象となる子どもについて、都が『子どもに国籍は問わない』と発言したかのように本委員会で子供政策連携室長に迫り『国籍は問わない』という答弁を本委員会で引き出そうとしたことは極めて悪質であり、東京都議会の信頼を著しく失墜させる手法は断じて許されるものではない」と述べました。

発言の取り消しを求められた福手都議は「発言は虚偽ではない」と主張していて「虚偽があったということだが、私は『虚偽ではない』とはっきりと述べたい。そもそも私たち議員には発言権が保障されている」と述べました。一方、動議では「質問した議員」「答弁した都の担当者」「対象となった条例」が異なるとしているため、2つの主張は食い違っています。

TOKYO MXが速記録を調べたところ、去年=2023年3月15日の総務委員会で質問していたのは原都議、答弁していたのは人権部長、対象となったのは人権尊重条例で、動議の趣旨に合致するものでした。

これについてTOKYO MXが福手都議に話を聞いたところ「あの時、私たちも相談しながら質問した。なので当然、原都議が質問したことで、答弁も人権部長が答えているというのは当然私も知っていること」とした上で、記者の「あの時の『私』というのは、原都議も含め、総務委員会にいた2人という意味合いか?」という問いかけに対し「議会は限られた時間でのやりとりというのもあるから『私は私』ということで言っている。ただ、私が発言したというのは、私は原都議の質問と答弁を知っていて、それを踏まえて共通認識だということで、東京都にまた子ども政策に聞いたということですから、それは私です」と述べました。

元都庁の職員で都議会に詳しい中央大学の佐々木信夫名誉教授は一般論として、議会の秩序維持のために動議を出すことはあると説明しています。佐々木名誉教授は「都議会の秩序を大きく揺るがすような不規則発言などがあった場合、議会の秩序を維持するためにそういう動議が出されることがある」と話しました。

また、石原慎太郎知事の下で副知事を務めた明治大学の青山やすし(=※「にんべんに八の下に月」の文字)名誉教授は「常識的には、事実と違う形で発言をしたのであれば、自ら取り消されるのが一番よろしいのではないか」とした上で、議会では正確性をもって議論を行う必要性があると強調しています。

青山名誉教授は「議会という場で事実関係で間違った、あるいは勘違いされそうな発言をするのは、議会に対する信用の問題ということになるので気が付いたら訂正をするということが必要だ」と指摘しています。

可決した動議に法的拘束力はなく共産党が削除を認めなかったため、発言は議事録に残ったままで、動議も成立したままです。

 

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