日本の教育現場にもEBPM(証拠に基づく政策立案)を! EBPM導入によるメリットを慶應義塾大学・中室教授が解説

2024.04.04(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、教育現場におけるEBPMの重要性について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜6:59~)。「New global」のコーナーでは、教育現場におけるEBPMの重要性について取り上げました。

◆欧米に遅れをとる日本の教育現場

教育現場にEBPM(証拠に基づく政策立案)の導入を望む慶應義塾大学の中室牧子教授。教育経済学を研究する彼女は、2010年にEBPMが浸透しているアメリカから帰国し、日本政府の教育に関する審議会に出席。すると、その際に日本とアメリカの大きな差を体感。「オバマ政権下ではエビデンス(証拠)のない政策は概算要求が通らない法律ができたこともあり、エビデンスなき政策に予算はつかないことはアメリカの行政官の間ではスタンダードになりつつあった。それと比較すると、日本の審議会に出てビックリした」と当時の状況を振り返ります。

そして、「多様な意見を取り入れることは大事だが、根拠のない多様すぎる意見を取りまとめて、この国の教育のあり方を考えるほど非常に雑な印象を受けた。教育にEBPMという考え方自体が当時は全く根付いていなかった」と悲嘆。

また、中室教授は、日本ではデジタル化の遅れにより、教育経済学の研究に必要なデータが不足していると指摘。

「(世界は)賃金や就業、幸福感など教育に対する投資は学校を卒業した後に本番が来るという考え方。長い人生で見たときのデータが(欧米では)ちゃんと繋がるようになっている」と語り、「ほとんどの研究はアメリカや欧州で行われた研究なので、海外の研究について精査をし、日本に当てはまるかどうか検討しなければいけない」とも。

そんな中室教授の意見に、経済ジャーナリストの荻原博子さんは賛同し、「教育現場は勘や昔からの知識などに頼ってやっているが、それだと本当の意味での教育を徹底させていけない」と危惧。

法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんは、「最近は教育現場でもタブレットを使っているのでデータを活用できるはず。そこは国が先頭を切って進めていかないといけない。そして、『EBPMをやりましょう』だけではダメで、まずはそれに基づくデータが必要」と訴えます。

また、中室教授は、子どもへの“教育投資”を始めるタイミングについても言及。ノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・ヘックマン氏は、子どもが小さいうちに投資をしたほうが、効果が大きいと指摘しており、その理由は技能・知識の蓄積に福利の原理が働くため。また、ヘックマン氏は日本に対し、“教育改革”に優先的に取り組むべき、質の高い幼少期教育の提供が重要であり、受験に重きを置かず、スキル形成・創造性重視の教育が大切であると警鐘を鳴らしているそうです。

この意見に付随し、キャスターの堀潤は子どもへの教育に“働き方改革”も大きく関与していると言います。なぜなら、現状では親が子どもに関わる時間が少ないから。「子どもとともにいる時間をもっと作り出さないといけない。その分野が、今は弱いから働き方改革が必要」と主張。

国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんはデジタル化、さらには親子で教育をともにする姿勢を重要視。というのも、つい最近、モーリーさんはネットで数学の奥深さを知ったそうで、「そうしたものに今は子どもも(ネットで)アクセスできるようになった。学生時代に理数系に萎えた親も今あるツールでそのトラウマを克服し、親子で感動できる時間が作り出せたら最高」と力を込めます。

中室教授によると、海外には他にも興味深いデータがたくさんあり、例えばアメリカ・ハーバード大学のラジ・チェティ教授は、親・子・孫と三世代に渡って貧困の連鎖がある世帯と連鎖がない世帯を比較。すると、そこには地域的な影響が見受けられ、さらには貧困の連鎖がある地域からない地域に引っ越した場合、子どもの収入に変化が見られたとか。なお、貧困連鎖がない地域の特徴としては近所の人たちの結びつきが強く、そして良い教育が提供されていたそうです。

さらに、教員の質に関してもアメリカでは担当クラスの生徒の学力・非認知能力を伸ばせるかどうか、全米100万人の児童生徒の成績と卒業後の収入などのデータから測定。デンマークでは、公立小中学校の全授業を学習用タブレット端末から情報収集し、どの担任がどんな内容で教えたかをデータ化。「良い教え方」の研修動画で生産性向上させるなど各国さまざまな検証を行っていますが、日本はそうしたことがなかなか実行されていません。

こうしたデータの存在を知り、キャスターの豊崎由里絵は「良い先生とは何か、その基準は親としてもとても難しい。子どもの成績が上がればいいのか、クラスの平均点が上がればいいのかなどいろいろあるが、(子どもの)人生で見るというのは面白いし、とてもヒントが多い」と感心しきり。

由井さんも「先生の質なんてよくわからない。経験値によって積んでいくものがあると思うが、やはり証拠に基づいてやっていくのは本当にその通りだと思う」と教育現場におけるEBPMの大切さを痛感していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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