東京都が導入を検討するカスハラ防止条例はあくまで罰則なしの「理念条例」、これで社会はどう変わる?

2024.03.05(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「FLAG NEWS」のコーナーでは、東京都が全国初の導入を検討している“カスハラ防止条例”について取り上げました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「FLAG NEWS」のコーナーでは、東京都が全国初の導入を検討している“カスハラ防止条例”について取り上げました。

◆全国初のカスハラ防止条例は罰則なし

小池知事は、客が従業員に理不尽な要求をする“カスタマーハラスメント”、いわゆる“カスハラ”の防止に向けた全国初の条例を制定する方針を示しました。東京都はカスハラ対策を巡り、去年10月から有識者による検討部会を開き検討を進めています。条例案は、カスハラが許されないということを都民に周知することを目的とし、罰則規定は設けない方針です。また、条例とは別に具体的な禁止行為についてはガイドラインで示す見通しで、都は2024年中の都議会への条例案提出を目指しています。

microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、カスハラの現状に関して「事業者観点で言えば、やはり(事業者側は立場が)弱い」と言います。なぜなら、顧客に悪い印象を与え、インターネット上などで悪いレビューを書かれたくないから。そのため、防止条例、ガイドラインが制定されることについては「事業者としては、すごくありがたい」と渋谷さん。

エッセイストの小島慶子さんは、歌手の三波春夫さんの有名な言葉である“お客様は神様です”という言葉を引き合いに挙げ、多くの人が意味を誤解していると指摘。そもそも、この言葉は“お客様を神様のように崇めなさい”、“お客様の言うことは聞きなさい”と謳っているのではなく「三波春夫さんはお客さんを前にしたときに、神様のような大いなるものに対して祈るような気持ちで歌うことで、目の前の人にも(気持ちが)届くんだと。だから自分にとってのお客様は神様であると思って歌っていますよという意味らしいです」と小島さんは解説。

ちなみに、三波春夫さんの“お客様は神様です”というフレーズの真意については、三波さんの公式サイトにもしっかりと明記されています。

今回、東京都が推進するカスハラ防止条例は、罰則のない「理念条例」となっています。その理由としては、罰則対象外の行為は許されるのではないかなどの誤った解釈の防止。そして、行きすぎた行為があった場合は刑法で適用できるためです。

◆国際弁護士、会社経営者の条例に対する見解は?

この「理念法・条例」について、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは「私は基本的には強制力を持たないものは意味がないというスタンス」と自身の考えを述べつつ、「ただ、この国はそれがあてはならない」と言います。というのも、日本の社会は「理念法・条例」を過剰に尊重する傾向があるからだそう。

今回の条例のポイントとして、八代さんは、「罰則はないが事業者の対して働いている方々の労働環境を整えることは法律上の義務であることがこの条例によって強化されることになる。つまり、事業者は労働者がカスハラに合わないような環境、カスハラから守る環境を作る必要があるというメッセージとしての意義がある」と指摘します。

この意見に対し、事業主である渋谷さんは環境整備の必要性は認める傍ら、一方で「経営者と従業員だと目線がずれるところがあり、経営者視点では2つ。従業員を守らなければいけないということと(お客さんの)レビュー(評価)を下げたくない、二律背反するラインがある」と素直な思いを吐露。

その上で、「ただ、こうした条例ができることはお客さんに対しても、ここまでは対応させていただくというガイドライン、言い訳の拠り所にもなるので従業員を守ることにもつながるし、(悪い)レビューを書かれたとしても反証できる根拠ができたことは安心材料」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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