渋谷区は今月、スマートフォンを持っていない、区内の高齢者を対象に2年間にわたり、スマホを無償で提供した実証事業の結果を公表しました。その目的はデジタルデバイドの解消です。
デジタルデバイドとは、スマホなどで、インターネットを使える人と使えない人の間に起こる情報格差のことで、渋谷区はこの実証事業でその解消に向けた一つの結論を導き出しました。
街の高齢者に普段、どのようにスマートフォンを使っているのか聞きました。
(70代男性 スマホ歴10年以上)
「支払い関係ね。PayPayとかそういう支払い。あとLINEとか。あと孫から来る『みてね』っていうアプリ」
(83歳女性 スマホ歴10年以上)
「一番はLINE。写真送ったり送られたり、辞書引いたり、どこか行くときは時間も調べるし、色々できる」
スマホを便利に使いこなす一方で、こんな声も…
(83歳女性 スマホ歴10年以上)
「スマホ持ってない人と、出かける時は連絡取れないし面倒」
(70代女性 スマホなし)
「いわゆるガラケー使っている。この辺もスマホ決済の店がどんどん出来ているので、いずれ現金も使えなくなって、取り残されていくのかなという気もする」
こうしたデジタルデバイドの解消のために、渋谷区が始めたのが、高齢者へのスマホの無償提供です。こちらは2021年、渋谷区が実証事業を始めるにあたり行ったスマホの講習会の様子です。
(先生)
「初めて使うスマホになります。こんなに軽いんですよ」
(80代女性)
「はいはい。私の持っている携帯より軽いですね」
実証事業は渋谷区と携帯電話大手のKDDI、津田塾大学が連携して行ったもので、渋谷区内のスマホを所有していない65歳以上の高齢者約1500人を対象に、2年間スマホを無償で提供し、どのように使ったのか、使ったことで生活にどういう変化があったのか調査しました。渋谷区によりますと、このような大規模な実証事業は、世界でも類を見ない取り組みだということです。
渋谷区が行った世界でも初めてとみられるスマートフォンの実証事業でどんなことが分かったのか、見ていきましょう。
今回の実証によって、参加した高齢者に行動の変化があったことが分かりました。まず災害時にスマートフォンで情報収集する人の割合は、実証開始から2か月後に33.2%となり、実証終了後は58.4%まで増加しました。
続いて希望する区からの連絡方法については、LINEを希望する人が40%近くまで増え、一方郵送は15%ほど減少しました。
そして実証を終えて、スマホを購入するかについては、購入した人と購入予定の人を合わせて82.8%となり、多くの高齢者が実証によって、スマホの利用が定着したことが分かります。スマホを使うきっかけさえあれば、定着にも繋がるんだなと感じますよね。
ではこの実証の一番の目的であるデジタルデバイドは解消されたのか。まず解消と一言で言っても、どうすれば解消といえるのか、解消の定義について渋谷区は3つの基準を設けました。「スマホの基本操作ができるのか」「LINEなどで他人とやり取りができるのか」「スマホ決済などアプリが使えるのか」。
すると参加した高齢者からは、「文字入力はできないけど、音声入力でメッセージのやり取りができる」「基本操作はできないけど天気や防災などの情報は見れる」など、人によって、デジタルデバイドの解消の形は様々であることが分かりました。
それを踏まえて渋谷区がまとめた実証事業の結果はこちらです。さきほどの3つの基準のうち、1つ可能になった人が12%、2つ可能になった人が22.2%、そして全て可能になった人が52%となり、全体のデジタルデバイドの解消率は合計で86.2%としました。
また解消に繋がった取り組みについては、スマホ講座の定期開催やコールセンターの設置、参加者同士の交流の場の提供などを上げていて、渋谷区はこうした取り組みを今後も継続する必要があるとしています。
「情報のインフラ」として重要視されつつあるスマートフォン。国や都、自治体がその利用をどのようにサポートしていくのか注目していく必要がありそうです。
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