将来、妊娠や出産を望む人を対象とした卵子凍結の特集です。東京都が最大30万円の助成を進める中、支援を受ける女性は、金銭的な負担が軽減された一方で、社会のさらなる理解が必要だと話します。

(卵子凍結を行う女性)
「助成金が受けられるんだったら、チャレンジしてみようと…」
高額なものでは100万円ほどかかることもある卵子凍結について、東京都は今年9月、将来、妊娠や出産を望む女性を対象に最大30万円を助成することを決めました。
助成を受けるためには参加が条件となっているウェブでの説明会には、6700人以上が申し込みを済ませているということです。
卵子凍結は、年齢を重ねると妊娠しづらくなるため、年齢が若いうちに採卵して凍結保存しておくものです。採卵前には2週間ほど、医療機関などで卵子の成長を促す注射を打ち、卵子が大きく育ったタイミングで採卵します。こちらの北区に住む30代の女性は都の支援があることを知り、卵子凍結を行うことを決めました。
(卵子凍結を行う女性)
「転職を控えているので1人前になるまで2、3年位はかかると思う。すぐに出産とかは考えられないところが…」
決心した女性ですが、目の前に立ちはだかったのは仕事との両立という壁でした。医療機関での複数回の受診など1カ月ほどかかるため、仕事のキャリアに影響しないよう、転職までの休みの期間を選んだということです。また採卵日を決めるためには、性周期や卵子の成長具合などを考慮する必要があるため、先の予定が見通せないことも悩みの種のようです。
(クリニックの院長)
「次回17日(2日後)に来るってできますか。17日に採血をして次には採卵日決めたい。イメージとしては19、20日のどちらか」
この日は診察の結果、卵子の状態を考慮し、採卵日を決めることができず、2日後に再度、診察を受けることになりました。
(卵子凍結を行う女性)
「結構直前にならないと通院の予定が立てられない可能性もあるので、両立するのは仕事内容とか職種によっては難しい方もいると思う」
仕事との両立についてクリニックの医師は…
(クリニックの院長)
「性周期に合わせて処置していくので、受診日を完全に読み切るというのはなかなか難しいので、都の試みが女性の選択肢の一つとして浸透していくには、会社も含めた社会のサポートも少し重要と思う」
お話を伺った女性は2日ごとに通院が必要になったということで、院長も会社を含めた社会の理解が重要だと話していました。
東京都もその課題への対応を進めています。卵子凍結への助成を打ち出したタイミングで企業への助成も始めていて、まず卵子凍結を行う人への休暇制度を整備した企業に20万円、さらに、企業独自で卵子凍結の費用を助成するなど福利厚生制度を整えた場合には40万円を加算して助成しています。
都の担当者によりますと、既に21社への交付が決まっているということで、その多くは中小企業だということです。担当者は大企業でもあまり整備されている話は聞かないとし、企業の規模に関わらず整備を進めてほしいと話しています。
そして今回、取材したクリニックの院長に卵子凍結のメリットとデメリットについて伺いました。メリットは、卵子が老化していない状態で凍結ができ、妊娠の可能性を高められること。一方のデメリットは都の負担があっても金銭的な負担がゼロではないこと、さらに採卵は針を使って行うため、他の臓器を傷つけるなど身体的な負担となる可能性があること、そして仕事との両立を挙げています。また卵子を凍結したからといって必ず妊娠できるわけでないことも留意しておく必要があると指摘しています。