品川区の大井町駅近くで11月21日に起きた火災では12棟が焼けました。経営する飲食店を失ったネパール人の女性は、「頑張る気力も尽きてしまった」と失意の胸の内を語りました。

大井町駅近くで起きた、12棟を焼く火災。一夜明けた11月22日、燃えてしまった店の前を1人の女性が訪れていました。
サラミラさん:「ここ、サラダイニングと書いてある看板が私のお店です」
この地域で飲食店を営む、ネパールから来たタマン・サラミラさん。8年前に来日してから飲食店で働き、創業資金800万円を貯め、3年前、大井町に念願のお店をオープンしました。自身の名前から「サラダイニング」と名付けた店を1人で続け、コロナ禍もなんとか乗り越えましたが、11月21日の火事で入口以外が全て燃えてしまい、常連客を迎えていた看板も灯すことができなくなりました…。
サラミラさん:「自分の名前「サラ」を入れて「サラダイニング」。みんなここでサラさんって言ってたけど、これから(店が)ないから、あんまり覚えていたくない」
ふるさとのネパール地震で家を失った両親に仕送りするため、店を必死で切り盛りしてきたサラさんですが、火災によって頑張る気力も尽きてしまったと嘆いています。
サラミラさん:「ネパールのうちが地震でなくなったのに、飲食店まで…。自分のもの(店舗)を持っていた方が頑張る気持ちがあったけどそれもなくなった」
火事で燃えた店舗の保険は一部下りるものの、それだけでは店を再開する資金が足りず、サラさんは今後、アルバイトで生計を立てていくことを考えているということです。
ここからは取材した牧田記者とお伝えします。火災現場の取材を通してどんなことが印象に残っていますか?
牧田記者:「これまで何年もかかって築き上げてきたものが火災によって1日で失われ、一瞬にして人生が変わってしまうという、火事の恐ろしさを感じました。
そしてサラさんの取材を進める中で、行政の支援のあり方について気づかされることがありました。11月22日、サラさんは支援を求めて市役所に行ったところ、日本語での説明が分からず、帰ってきてしまったそうです。
品川区に確認したところ、英語や中国語での対応窓口は定期的に開かれていますが、ほかの言語についてはタブレットの翻訳アプリを通じた対応をしているということです。しかしサラさんが訪ねた担当課では、タブレットがあることを知らなかったという職員もいました。
日本がうまく話せない外国人は、日本人以上に困った状況に陥り、支援の手が届かなくなってしまう可能性がありますから、緊急時、細やかな対応ができる環境整備が、もっと必要はないかと感じました」