東京都が実施する中学校英語スピーキングテスト。11月末に2度目の試験が実施されるのを前に、大学教授らが「検証が行われていない」として高校入試への活用中止を求めました。
武蔵大学 大内教授:「入試の「公平性」と「公正性」に反することに加えて、「透明性」と「信頼性」が欠けています」
去年11月、「使える英語」の育成を目的にはじめて実施された、中学校英語スピーキングテスト。テストを巡っては点数の配分に偏りがある点や、評価の仕方が不透明など問題が相次ぎ指摘され、高校入試への評価から外すよう求める声があがっていました。さらに、予定通り実施された試験でもトラブルが続出。その結果は今年度の都立高校の入試に活用されました。
11月6日、都庁で会見を開いた大学の教授らは試験当日、他人の回答が聞こえてしまうという問題について、試験から1年が経とうとする今も検証が行われていない現状を訴えました。
武蔵大学 大内教授:「現時点まで、都教委による生徒への聞き取り調査は行われていない。しかるべき調査が行われていない以上、「音漏れはあったが解答に影響はなかった」という説明は信頼性が薄いと判断できる」
今年の試験は今月26日に実施される予定で、東京都は対策として先月、広報誌にイヤーマフの装着方法を掲載しています。
ここからは英語スピーキングテストの取材を続ける椿原記者とお伝えします。去年の初めての実施からまなく1年となりますが、未だに多くの問題が山積していますね。
椿原記者:「スピーキングテストについては実施前から様々な問題点が指摘され、実施後もテストを受けた生徒や都議会、教育関係者からも問題を指摘する声が相次いでいる状況です」
では、これまでに指摘されているスピーキングテストの問題点を見ていきます。まず1つ目が、試験中に他の人の声を遮るための「イヤーマフ」についてです。イヤホンの上からこのイヤーマフをして試験を実施するのですが、テストを受けた生徒からは「隣の人の声が聞こえて集中できない」「他人の回答が聞き取れる」などの声が多く聞かれ、正確な試験が実施出来ていないのでは?と指摘されています。
2つ目が、生徒たちの回答が録音された音声データについてです。音声データについては実施前から、生徒が密集する中で正確な録音ができているのかと指摘する声が上がっていて、テスト実施後の音声データの開示が求められていました。これに対し都が公開した音声は、全体の一部のみに編集され、個人情報保護という理由で加工されたものだったことから、何を話しているのか分からない状態のデータでした。こうした都の対応から、実際に採点に使われた音声データがしっかりと録音されていたのか、現在でも疑問が残っている状況です。
そして3つ目。スピーキングテストを様々な理由で受けられなかった人、「不受験者」の扱いについてです。スピーキングテストを受けないことで結果的な評価が変化し、合否が変わってしまう「逆転現象」が起きる問題が指摘されています。都もその可能性を認めていますが、テスト実施後それについての情報開示は行われておらず、今後も逆転現象が起こる可能性は捨てきれない状況です。
椿原記者:「こうした指摘は私の取材の中でも多く聞こえます。その対応をを議会や教育関係者から求められてきたのですが、東京都はこのテストについて「特に問題はなかった」の一点張りで、指摘された問題についてほとんど対応していないように見えます。今月26日に行われる二度目のスピーキングテストが適正に行われるのか、懸念される状況です」
こうした課題が指摘される中で、今月26日には2回目となるスピーキングテストが実施されます。さらにこの回を最後に、出版大手の「ベネッセ」がスピーキングテストの運営から撤退することになりました。こうした点も今後のスピーキングテストに影響が出そうですよね。
椿原記者:「事業者の変更によって、イヤーマフの問題や録音の問題については改善する可能性もありますが、不受験者の逆転現象については事業者が変わっても残る問題でさらなる問題となります。まずは都が情報の透明性を発揮して対応することが、今後のスピーキングテストをより良いものにする第一歩だと思います」
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