履歴書の顔写真で採用を決める“顔採用”は令和の今でも残存?それはルッキズムに当たるのか?

2023.10.27(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは“顔採用の是非”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは“顔採用の是非”について議論しました。

◆履歴書の顔写真を見て決める…顔採用は“ある”!?

昨今、都内のある写真館が就活生の間で人気を博しています。それは証明写真を修整してくれるサービスを展開する写真館。要望に応じて肌質補正やパーツ修整などが可能で、就活用の証明写真を修整する人が増えているといいます。

キャスターの堀潤は、就活写真の加工問題を考えるにあたり、就活を巡って度々議論になる“顔採用”に言及。「果たして顔採用は本当にあるのか。就活とルッキズムの関係は?」と今回の問題の核心を問いかけます。

まずは、企業は本当に顔採用を実施しているのか。この日のゲスト、ベンチャー企業に特化した就活サイトを運営するCheer 代表取締役の平塚ひかるさんに話を聞いてみると「あるか、ないかで言えば“ある”と思う」と見解を示します。ただ、純粋に顔のパーツで選ぶ会社もあれば、「人生を積み重ねてきた経験からくる自信、表情や笑顔のかわいらしさなどによる顔採用もあると思う」と一概に美しさを求めているわけではないことを補足。


 

顔採用の是非について平塚さんは「顔採用の何が悪い」ときっぱり肯定します。前述の通り、顔採用といってもさまざまなだけに「それまで培ってきた経験からくる自信が顔つきや表情に現れると思うので、そうしたところを評価するのは当然。新卒はポテンシャル評価なので、それが基本になってくる」とその理由を語ります。

採用する側である株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「ウチの会社はクリエイティブや開発がメインなので、見た目は必要ない。最後まで顔を見ずに(採用を)決めることもある」と自身の会社では顔採用はしていないものの、「職種によっては見た目が指標になるときもあると思う」とその必要性を容認。

美容系の会社を経営する国際社会文化学者のカン ハンナさんも「顔のパーツではなく、雰囲気などが自分のブランドっぽいと感じることがある。それに、スキルは2~3度面接しただけではわからないので、顔つきは慎重に見てしまう」と顔採用は“あり”派。

一方、唯一顔採用は「なし」としたのは、元裁判官で国際弁護士の八代英輝さん。顔がその人の人格を表すことは理解しているものの、履歴書の写真まで加工するのは筋違いとし、「顔は能力の指標ではない」と見た目で判断する傾向を否定。そして、「履歴書の段階で選考から漏れないよう写真を盛るのか?」と昨今の若者の行動原理に疑問視。

平塚さんによると、それもありつつ、さらには最近の就活の在り方も影響しているそうで「今は“ダイレクトリクルーティング”と言って、就活生は(就活用の)サイトに登録し、顔写真や履歴書の内容を見て企業からスカウトオファーをもらう流れが主流になってきているので、そうなると顔や見た目が重要な武器になってくる」と解説します。

八代さんは「(履歴書の写真と)本人との落差が大きいのはデメリットにならないのか?」と疑問を呈すと、カンさんは「韓国では就職のために整形する人もいて、写真が人形のような人もいる。採用する側もかわいいから会ってみたいという人が意外と多い。実際に会うと別人といったことも当然あるが、一度(採用担当者と)会わせてもらえる、話せる機会がもらえるだけでも大きい」と韓国の就職事情を明かします。

◆欧米では履歴書に写真を貼るのは違法!?

では、採用担当者はどう思っているのか。2019年に化粧品メーカーが新卒採用担当者にエントリーシートの写真をどれだけ重視しているかアンケートをしたところ、「大事」と答えた人は87.8%。また、エントリーシートの写真で自社に合う人材かわかるか聞いてみると「わかる」と答えた人は46.2%。一方、写真が加工されていると内容も脚色されていると思うと答えた人は76.7%いました。

この結果から日本では顔写真が重視されることが見て取れますが、八代さん曰く、アメリカやイギリスでは履歴書に写真を貼ることは違法。さらには年齢や性別を書くことも。その事例に触れた上で「履歴書に写真をきれいにして貼るのは時代遅れ、ナンセンス」と酷評します。

しかし、日本の現状は世界とは大きく異なるようで「今の話を聞いて日本は真逆だなと思うところでは、ダイレクトリクルーティングのデータベースに写真が登録されていないとそもそもスカウトが来ない。写真を登録していないと『やる気がない』と思われたり、そもそもオファーが来ない。日本では写真は必須」と平塚さん。

また、顔写真がネガティブな評価に繋がるという調査結果もあります。昨年6月に中京大学が病気やケガなどで見た目が変化した場合を含めた架空の顔写真を多数用意し、人事担当者など約800人に評価してもらったところ、最も評価が高かったのは「女性・特徴なし」。そして、顔にパッと見てわかる症状がある方や茶髪の男性、肥満の女性などは強いネガティブな効果が出たということです。

この結果に、堀は無意識の偏見である“アンコンシャスバイアス”の存在を懸念し、「悪意でも故意でもなく、知らず知らずに評価しているのがルッキズムの恐怖」と危惧。

八代さんは、これまでとは逆の影響を憂慮。「企業側もいかにも顔で採用しましたというのを避けて、当たり障りのない人を採用していく。そうなると、その会社にとって本当に欲しい人材を採用しているのかわからなくなるのではないか」と案じます。

◆顔写真を加工する就活生の気持ちは

実際に顔写真を加工し、美容業界を目指す女子大学生に話を聞いてみると、加工した理由は、コンプレックスをなくすため。そして、顔採用については「もちろんビジュアルもすごく大事だけど、それまで何をしてきたのかという中身も見ていると思う。でも、外見あっての中身。ある程度、身だしなみはきちんとしておかないと、という思いはある」と胸中を明かします。

こうした学生が増えるなか、平塚さんは就活生に向けて「入社がゴールではない」とメッセージを送ります。むしろ入社後の活躍が大事であり、「自分は何を評価され、それに対するパフォーマンスを発揮してお金をもらうのか。そうしたことは企業側も意識する必要があるが、学生側にそういう教育が足りていない。伝えていく必要がある」と指摘。

キャスターの豊崎由里絵からは「エントリーシートに写真を貼らなければいけない限り、私は一生加工すると思う」との意見が。というのも、「企業側は大量のエントリーシートを見ていくので、無意識に顔写真を見る人もいるだろうし、学歴を見る人もいる。それはさまざまである以上、やはり加工したほうがいいという女性の気持ちは止められない」と昨今の就活生の気持ちを慮ります。

するとカンさんも「就活生100人中90人が加工していて、10人がやっていなかったら、その10人が落ちる可能性は高いと思う。全員(加工を)止めない限りは(加工をなくすことは)無理だと思う」と示唆します。

◆顔採用ではなく、就活生の魅力を適切に判断するためには?

最後に、就職採用で学生の魅力を適切に判断するにはどうすればいいのか。ゲスト&コメンテーター陣の意見を聞いてみると、カンさんは「できるだけ会うべき」と主張。「書類審査で落としているからこうした問題が起こる」と顔採用問題の要因を指摘し、「一人ひとりの人材は企業にとって大事。私自身、(就活生とは)何度も会っている。会うと言葉や考えによって『この人と働いてみたい』と思うこともある。なので、企業側は写真ではなく実際に会って向き合ってほしい」と切望。

古井さんは「傾聴」と企業側に就活生の声に耳を傾けるよう訴えつつ、さらには「企業側も面接などで(話を)聞く気がないと就活生も話す気がなくなってしまうので、採用する側も“大人の余裕を持つこと”が大事」と願います。

一方、八代さんは「履歴書に写真はいらない」と意見を曲げず、ひいては「法律で禁止すべき」とも。そして本来、企業としては顔採用を行っていると思われること自体が「企業にとってプラスではない」、「恥ずべきこと」であり、その考え方が世間に浸透していないことを憂い、「こうした風潮を作っているのは企業だと思う。だから、企業が写真の掲載をやめるべきで、やめられないのであれば法律で禁止すべき」と強い口調で語ります。

平塚さんは「対話」と主張した上で、「採用の場となると企業側が有利と勘違いされがちだが、(企業も就活生も)どちらも相手を見極め、選んでいる。最初から顔がどうなのか判断する前に(企業側も)自社のことを知ってもらい、理解してもらい、魅力を感じてもらう必要がある。それはすごく大事なことだが、できていない企業が多いからこそより対話を行い、お互い中身を知ることは大事」と持論を述べます。

そして、堀の意見は「顔は変わる」。採用する側もされる側も日々、顔は変化していくものとあって、「あまりそこを気にしないでもいいと思う。そこに期待しないほうが長くお付き合いできると思う」と話します。

豊崎は、カンさんや平塚さんと同様に「全員30秒面接(リモートも可)」と熱望。「30秒でもいいから企業が実際に会ってくれれば、(顔写真を)加工に依存する文化はなくなると思う」と語ります。加えて、過去にアナウンサーとして採用された経験、採用に関わった経験から「顔でいい人を選ぼうという採用はあまりないと思う」と吐露。ただ、単純に美しさではなく、顔つきがいい人、場を和ませる顔などもあり「そういう顔採用ならばアリだと思うし、これからも続いていくと思う」と予想していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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