日本でも法改正検討“医療用大麻”の合法化 専門医が教える大麻の正しい知識

2023.10.09(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは“医療用大麻の合法化”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは“医療用大麻の合法化”について議論しました。

◆日本でも大麻を巡る議論が活発化

近年、大麻の合法化が世界的な広がりを見せています。8月16日にはドイツで個人が少量の大麻を所持・栽培することを認める法案が閣議決定されました。また、アメリカなど複数の国では、大麻草を原料とした医薬品が承認され、難治性てんかんの治療やがんの痛み抑制などに使用されています。

日本でも大麻を巡る議論は活発化しており、政府は大麻草を原料にした医薬品を国内で使用できるよう法改正の検討を開始。その他、繊維・種子の採取や研究目的にだけ認められている大麻草の栽培を、産業や医療目的でも認める内容を盛り込む方針です。

ただし、法改正を巡ってはもうひとつポイントがあり、それは“使用罪”の新設。現行法では栽培や所持は規制されていますが、使用しても罪に問われないようになっており、これについてはさまざまな意見があります。

議論をする前に、前提として日本における大麻に関する法的解釈を紹介。厚生労働省は大麻に含まれる有害成分は幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下などをもたらすと大麻の乱用について注意喚起しており、現時点で大麻の栽培や所持は法律で禁止されています。

この日の議論には番組コメンテーター陣に加え、医療用大麻の正しい知識の普及を目的とした「GREEN ZONE JAPAN」の代表理事で医師の正高佑志さんも参加。

正高さんは日本で大麻の話をする上で最も大切なことは“安全性”で「危険性をどう評価するか」をポイントに挙げます。大麻の依存性はお酒やタバコに比べてそれほど高くなく、長期間使用しても大きな健康的な問題は出てこないことが科学的な定説になりつつある」と話します。

1948年施行の「大麻取締法」では、大麻の栽培、所持、譲受・譲渡等などは取り扱い免許を受けた人以外は原則禁止。加えて、大麻から製造された医薬品の施用は何人も禁止されています。これら違反した場合、栽培・輸出入で7年以下の懲役。所持・譲渡譲受で5年以下の懲役となり、営利目的の場合はさらに罪が重くなります。

また現在、大麻草は部位によって規制され、花穂、葉、根などは規制対象、種子や成熟した茎の部分は対象外となっています。そして、大麻は100種類以上の化学物質から構成され、それらの成分は“カンナビノイド”と呼ばれています。

主な成分は「THC」と「CBD」の2つ。前者は幻覚など精神作用をもたらすため、化学合成されたものは麻薬として規制され、記憶への影響や学習能力の低下などを引き起こすと言われています。一方、後者は幻覚作用がなく、規制はされていません。そのためオイルや食品などに使用され、ストレスの緩和効果があるなどとして販売されています。

キャスターの堀潤は「海外は大麻を解禁している」という情報だけを伝えるのではなく、こうした大麻に関する正確な情報の周知を望みます。

正高さんは、「“合法化”、“解禁”というと野放しのような印象を受けるが、そうではなく、国がルールを作り、管理し、課税していくことが大事」と補足します。加えて、「THCは悪者、CBDは良いものと二元論で考えられてしまうが、THCも医薬品として使われているという側面があることは伝えておきたい」と主張。

大麻はハードなドラッグの入口になるという懸念があり、哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんは、その危険性を認めた上で「問題を区別する必要がある」と言います。例えば、医療用に使われている“モルヒネ”はアヘンの原料となるケシから精製されているなど、麻薬として禁止されていても医療に使われているものは多々あるため、「大麻に関してもそうした振り分けができれば、議論はもっとスムーズになる」と指摘します。

◆海外ではがん治療にも利用 医療用大麻の有効性とは?

厚労省は現在「大麻取締法」の改正を検討しており、その内容は「大麻由来の医薬品が国内で使用可能にすること」、「薬物の乱用対策として“使用罪”を創設」、「現在の大麻の部位での規制から有害性のある成分を基準に規制するという方向に変更すること」、「ヘンプ(大麻)産業の規制緩和」。

では、医療用大麻はどんな症状に有効なのか。正高さんによると「てんかん」や「パーキンソン病」、「アルツハイマー型認知症」、さらには「がん」など、約200の病気・症状に効果があるのではないかと言われているそうです。

萱野さんは、こうした有効性が見込まれるものは「早く認めたほうが医療福祉を向上させる」と肯定しつつ、一方で普及にあたって邪魔しているのは「大麻に対するイメージ」と指摘。というのも、医療用大麻の解禁を弾みに嗜好用大麻の認可まで求める方もおり、「それが逆に医療用大麻の認可を妨げている。医療用を認めたらその先も認めなければならないという不安を掻き立て、(医療用大麻の合法化を)阻んでいる」と主張。

正高さんからは「どこまでが医療用でどこからが嗜好用なのか、その線引きは難しい。例えば、よく眠れるからと(大麻を)使うのと睡眠薬を使うことはどう違うのか。それは医療用途じゃないのか(という声もある)」との指摘が。これに萱野さんは「そうしたことを言うから多くの人はより警戒する。区別するところから議論しないと認められない」と一蹴。堀は「そのための社会的議論が必要で、こうしてパブリックで話すべき。(大麻について)ちゃんと知ろうというのが今日のテーマでもある」と強調します。

◆世界では多くの国が医療用大麻を合法化

医療用大麻の合法化について街頭で話を聞いてみると、「医療に使われるのであれば賛成」、「大麻自体が危険なものだから危ないのではないか」、「誰もが医療用大麻と大麻の違いを区別できるわけではなく、特に今の若者は情報源がネット、SNS、YouTubeなど公平性が担保されにくいものが多いので、大麻に詳しい団体が(正しい)情報を発信していくことが大事」、「医療用とそうでないものをどう判断するのかを明確にしてからでないといけない」、「幻覚が見えるなどそういうことがなければ、人の命が救われるのであれば賛成」、「良い部分と悪い部分を国が明示し、みんなが危険性と安全性を理解できるようにすべき」など賛否両論、さまざまな意見がありました。

堀は「(使用)目的を誰が判断するのか、社会的モラルのラインを誰が決めるのかなどはすごく難しい問題だと思う」と議論を重ねてなお、医療用大麻の合法化に頭を悩ませます。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは「もしかしたら(大麻という)ワードは変えたほうがいいかもしれない」と提案。なぜなら、日本では大麻という言葉には悪いイメージが付き纏い、タブー化されているから。「(街頭で)医療用大麻のことがわかっていないというコメントもあったが、理解が深まっていないことが問題」と述べます。

マライさんの母国ドイツでは、嗜好目的での大麻使用が閣議決定され、2024年の施行を目指しています。ただし、ルールは厳格化されており、保険当局に団体を登録した上、団体内の集団栽培と最大500人まで募れる会員への流通のみを許可。また、18歳以上の成人個人に25グラムまでの所持と一部の公共の場以外での使用を認め、自宅でも最大3株までの栽培を許容しています。

ただ、マライさんは「ルールを作ることも大事だが、医療用大麻に乗じて(嗜好用も)解禁するのはやめたほうがいい」と危惧。というのも、そもそもなぜドイツで医療用大麻が認められたかといえば、尊厳死・安楽死の議論ありきで闘病者の痛みの緩和のために許されたから。

世界的な状況を見てみると、医療用大麻を合法としているのはドイツをはじめ、イギリス、フランス、スペイン、イタリア、オーストラリア、韓国。対して、違法としているのは、日本、アメリカ(国としては違法。36州及び4つの地域では合法)、ロシア、インド、スウェーデン。さらに、カナダやウルグアイに加え、今後はドイツも嗜好目的での使用が可能になります。

医療用大麻の合法化にあたって、正高さんは「非犯罪化も大事」と主張。要は、未成年の喫煙も違法ではあるが刑務所に入れられるわけでなく罰金刑程度。大麻も同様にすべきとし「それが国際的な潮流」と正高さん。

◆医療用大麻の合法化は認めるべきか?

最後に、この日の議論を踏まえ、ゲスト及びコメンテーター陣が提言を発表。まずmicroverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、大麻以外で緩和する手段がない方への医療用大麻は認めつつも、嗜好品としての扱いには慎重な姿勢を見せます。その理由は、たとえ大麻を解禁し産業化しても日本はその分野に強くないため、何のメリットも生じないから。渋谷さんは「そこの産業は育てる必要がない」と言い、「誰の幸せのための手段か、代替手段はないかを定義しつつ制定でいいと思う」と思いを述べます。

マライさんも渋谷さんの意見に近く「必要な方にちゃんと届けよう」と提案。「日本にも必要な人はいると思うのでそこに届け、裏では流出しないようにする。それが一番大事」と訴えます。

萱野さんは「明確な線引き」の必要性。法律に限らず何においても線引きは難しいとしながら「特にこうした大麻のような問題は、明確に線引きしない限り、社会の理解は得られない」と明言。

最後に正高さんは、「(大麻は)日本でも昔、漢方薬として処方されていた経緯がある。いろいろな症状に効果があることが徐々にわかってきているので、(医療で)幅広く使えるようにできたら」と話しました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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