TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、2023年10月1日から導入される“インボイス制度”について議論しました。
◆10月から導入されるインボイス制度とは?
“インボイス”とは、適用税率や消費税額などを正確に伝えるために作成される請求書(適格請求書)のこと。今年10月から導入されるインボイス制度とは?
現状、例えば3,000円の商品を購入した場合、消費者は10%の300円を消費税としてお店(事業者)に支払い、事業者はその商品を1,000円で仕入れていれば、仕入元にその10%、100円を消費税として支払っています。そして、事業者は消費者から預かった300円から仕入元に支払った100円を引いた200円を納税することになります。
ただ、年間の売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」と呼ばれ、消費税の申告・納税が免除されているため、事実上消費税分が事業者の利益になります。これはいわゆる“益税”と言われていますが、10月1日のインボイス制度導入以降、この仕組みは大きく変更となります。
10月1日以降、上記の例の場合、仕入元がインボイスに登録していれば事業者は消費税分200円の納税で変わりません。
しかし、仕入元がインボイスに登録していない場合、年間の売上高に関係なく、発生した消費税300円は、全て事業者が払わなくてはなりません。
さらに、年間の売上高に関係なく結果的には消費税を納税することから、事業者の負担が増える可能性があります。
◆インボイス制度、個人事業主は「手続きが煩雑で面倒」
インボイス制度導入に関して、ジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは「とにかく面倒」、「多くの手間をかけ、自分に何かメリットがあればいいが全くない。手間がかかるだけ」と不満を露わに。
「要するに、消費税が3%だった時代は細かいお金はいいからと放っておいたが、(消費税が)ここまで上がり、将来さらに上げるとなると、この辺で課税強化しておこうという、つまりこれから消費税を上げるという事前準備のような制度」と政府の思惑を推察します。
キャスターの堀潤は「年間売上1,000万円以下の事業者がなんとかやりくりしていたところに負担が加わるとなると、生活設計や事業設計そのものが変わってきてしまう」と危惧。さらに、仕入元がインボイス発行事業者の登録をしていないと事業者は大きな負担になってしまうため、今後はインボイスを登録している仕入元に変更する可能性も考えられます。
法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんからは「益税というキーワードが出ていたが、そもそもこれはズルいことなのか?」との質問が。
これに経済ジャーナリストの荻原博子さんは「それは財務省が植え付けてきたこと」と言い、消費税が導入された経緯に言及。荻原さん曰く、当初3%の消費税を導入する際、政府・財務省は益税を取り入れることでひとまず事業者を納得させ、それ以降は消費税が増える一方で益税を縮小。免税事業者の対象が年間売上高3,000万円以下だったところから1,000万円以下になり、そして今回「免税事業者をなくそうという魂胆」と話します。
◆インボイス制度、コメンテーターは全員導入反対!?
このインボイス制度は「賛成」か「反対」か、コメンテーター陣に聞いてみると荻原さんと辛坊さんは「反対」。由井さんは「一部賛成」。堀は「賛成」とします。
「一部賛成」とした由井さんは「反対が多いかなというところで一部賛成に」と本意ではないことを示しつつ、「そもそも適格請求書を作ることは必要」と話します。なぜなら、現状では消費税が8%と10%に分かれているため、消費税をしっかりと納税するとなるとインボイスに登録した「適格請求書発行事業者」と適格請求書が必要だから。
ただし、「僕のような弁護士は仕入れがほとんどなく、お客様からもらう報酬が全て売上になり、消費税もしっかりと10%払うので(インボイス制度が導入されても)生活にそれほど変わりがないが、仕入れをしている業者は影響がある。なので、その人たちを免税にするのか補助をするのか、そこは何か必要だと思う」と推し量ります。
辛坊さんは、「反対」の理由として、今回の制度はとにかく手続きが煩雑であることを挙げます。そうした面倒を行ったにも限らず増える税収は2,480億円程度で、そのコストパフォーマンスの悪さも反対理由のひとつとします。
同じく「反対」の荻原さんは「消費税を導入する際、ヨーロッパのように最初からインボイスもやっておくべきだった」と指摘。なぜそれができなかったかといえば、とにかく消費税を導入したかったからだと荻原さん。さらにここにきてインボイス制度を導入する理由は、消費税を上げていくためとし「この先の増税につなげていこうという前段階」と強調します。
唯一「賛成」とした堀ですが「どう考えても賛成万歳にはならない、議論のために賛成にした」と本音を明かしつつ、もしも国がこの制度を推し進めるのであれば、導入とともに「再分配策をセットしてほしい」、さらに「1,000万円以上の売上が立つような業を起こすための支援を徹底的にやってほしい」と“再分配”と“起業支援”を熱望します。
◆インボイス制度導入は実質的には“増税”か?
では、インボイス制度の導入によりどんな効果があるのか。財務省の試算によると、約2,480億円の税収増の見込みですが、国会ではこの制度を巡り、野党議員から「税収が増えるということは増税ではないか?」という質問が。これに対し、岸田首相は「増税とは税率引き上げや制度を変えて増収を図ること。結果としての増収と増税は別だ」と回答しています。
岸田首相は「増税ではない」としているものの、「一定の人たちにとっては実質増税ですよね」と由井さん。荻原さんは「どう考えても増税」とし、「コロナ禍にイギリスやドイツは消費税を下げた。国民が(生活に)困ったら下げていたが、この国はそうしたこともせず、コロナの最中にこの案を進めていた。もう“どういうこと!?”と思う」と憤りを隠せません。
なお、政府はインボイス制度の導入にあたり、経過措置も設けています。例えば、事業者がインボイス登録していない仕入元と取引をする場合、制度が導入される10月1日以降3年間は80%、さらにその後の3年間は50%の控除が受けられるようになっています。
しかし、経過措置について、荻原さんからは「一気にやると風当たりが強いから、ガス抜きとして経過措置がある」との声が。
◆インボイス制度は必要か? 識者の意見は全員…
最後に、今回の議論を通してインボイス制度はどうすべきか、コメンテーター陣が提言を発表します。由井さんは「やはり(インボイス制度導入は)反対」と自身の立場を明らかにし、「もしも導入するなら“対等交渉”、フリーランスという弱い立場の人がちゃんと交渉できるように。フリーランス保護はセットで」と切望。
さらに「国はフリーランスや副業を推進していこうという話なのに、それで今、実質増税を本当にやるのか。今、税収はめちゃくちゃ上がっているのに、このタイミングなのか」と政府の方針に疑問を呈します。
一方、荻原さんは異例の提言「なし」。「やめたほうがいい。みんな大変なんだし、増税してもろくなことに税金は使われない」と冒頭から首尾一貫して反対の意向を示します。
辛坊さんは「ヤメロ!」と声を大にし、改めてコスパの悪さに触れつつ「あれだけ問題になっているマイナンバーカードでさえ、住民票を簡単に取れるとか少しはメリットがあるが、これはなんのメリットもない」と声を上げれば、荻原さんからは「メリットどころか零細業者いじめ」との意見も。さらに辛坊さんは、導入されれば逆に景気を冷やすのではないかと案じます。
堀は「これだけ国がデジタル化を進めようと言っているんだから、この制度こそデジタル化が進んでからにしてほしい」と望み、「年間売上が1,000万円以下のような産業はもう潰してもかまわないと国が言っているようにしか聞こえない。だったら本当に稼げるように支援してほしい」と改めて起業支援を訴えていました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag
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