TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「激論サミット」のコーナーでは、減少傾向にある“自治会”の必要性について議論しました。
◆もはや形骸化している“自治会”は必要か?
地域ごとに設けられている“自治会”。これは、一定の地域に住む人々が住みやすい地域社会作りのために自主的に活動を行う団体ですが、今、年々減少の傾向にあります。
街頭で話を聞いてみても「(自治会に)加入している」という声とともに「入っていない。煩わしいというイメージ」、「入っていない。積極的に入りたいわけでもない」といった意見が散見。さらに、昨今自治会を巡ってさまざまなトラブルが発生しており、住みよい暮らしを整えるはずの団体が揉め事の火種になっています。
なお、東京都内の自治会・町内会などのいわゆる地縁団体は6年間で144減少。住民の加入率低下とともにメンバーの高齢化もあって自治会運営が困難となり、消滅・合併せざるを得ない実情があるようです。
果たして自治会は現代社会において必要なのか。NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんと元宮崎県知事で元衆議院議員の東国原英夫さんは「必要」。一方、コラムニストの河崎環さんとキャスターの堀潤は「不要」とします。
河崎さんはかれこれ27年間、地元の自治会やマンションの理事会、子どものPTAを国内外で経験してきており、実際の経験を通して「不要」だと示します。というのも「自治会はそこに住んでいる同じステークホルダーが同じ利益、同じ目的のために組むものだが、今は完全に形骸化している。今の出来上がった自治会をどう維持するか、そして役割をやりたくない人たちがいかに持ち回りでやるかに終始している」とその構造について触れた上で、「再編するべき」と力説します。
大空さんは、河崎さんの主張に頷き、改革前提で「必要」とします。そして、今後さらに都市部への人口集中が加速し、過疎地域の存続が難しくなれば、自治体も必然的に広域化。行政が全てのサービスを提供するのが困難になることが予想できます。「そうなると自治会のような互助組織がないと回らない。だから、改革を前提に必要」と過疎地域での自治会の必要性を指摘。
東国原さんは「住民の生活が多様化しているので、これまでの旧態依然とした自治会は時代遅れ。各地域で特色が違うので、その地域にあったコミュニティのあり方を議論するべき」と改革の必要性を唱えます。
冒頭では「不要」としていた堀でしたが、より機能する自治会の必要性に共感しつつ、その上で各地域において「持続可能な共助ビジネスの創出」を熱望。「民間も企業もソーシャルセクターも参加し、対価を得られるような仕組みを作り出したいし、それをぜひみなさんと議論したい」、「寄付などに依存しないあり方、どうしたら持続可能なビジネスモデルが生み出せるのか関心がある」と力を込めます。
◆自治会を巡るトラブル、裁判所の見解は?
自治会を巡るトラブルを見てみると、兵庫県・神戸市のある自治会では、非加入の住民がゴミ捨て場の利用を禁じられました。すると、それを不服とした非加入の住民が提訴し、結果として地裁・高裁ともに自治会の対応を違法としましたが、2審の大阪高裁ではその住民がゴミ捨て場を利用する権利はないとの判決が下っています。
こうしたトラブルが各地で起きているなか、河崎さんはそれらの問題の発端、自治会の大きな功罪として「基本、女の仕事になっている」と訴えます。「自治とは名ばかりで、動ける男はみんな会社に行ってしまっていて、地域にいない」とし、専業主婦率が下がり、共働き社会となった今でも自治会などの活動をするのは女性が多い現状を非難します。
東国原さんはその意見に頷きつつ「男性も入らなければいけない。やはり自治会は新しいコミュニティに改革していくべき」と同意。
大空さんは性別的な役割の問題も重要でありながらも、それ以前に「自治会がやっていることを、もっとオープンにしなければいけない」と透明化を切望。また、“自治会”と“自治体”の関係性についても、憲法が認める最低限度の生活保障に関わる部分は自治体(行政)、防災や地域の繋がりなどについては行政だけでは限界があるので自治会が担うなど、「その棲み分けができていないことがそもそもの問題」と課題を挙げます。
◆うまく機能している自治会は会費なし!?
総務省の地域コミュニティに関する研究会のメンバーで、地域活性化コンサルタントの水津陽子さんは「大規模災害を想定すれば、いざというときに、例えば一人暮らしの人に誰かが気づいて助けてくれる人がいたり、困ったときに助け合えたり、相談できる人が身近にいたり、そういう仕組み自体は必要」と地域の共助システムとしての自治会の意義を解説します。
なかには住民とコミュニケーションを図りながら、上手く機能している自治会があります。そのひとつがお台場のマンション5棟が協力して運営している「お台場合同自治会」。この自治会の特徴は住民から会費を取っていないこと。港区から受けるゴミ収集関連の助成金のみでやりくりできるよう自治会運営を必要最低限に抑えています。
それでも災害が起きた時の備蓄倉庫をマンション内に設置したり、イベントには有志がボランティアで参加するなど、住民の要望に極力応えられるよう工夫しながら自治会運営を行っています。
この話を聞き、大空さんは自治会に加入したくない人の理由として「なぜお金を払わないといけないのか、そこに尽きると思う」と会費の問題に言及。「例えば、マンションに住む方は管理費を払っているが、それを払いたくない人はあまりいない。なぜなら、管理費を払うことで得られる対価が明確に示されているから。しかし、自治会は会計報告をできていないところがある。(自治会は)任意団体だから法的な権限も根拠もないので報告する必要はないが、その不透明さがこうした問題を作り出しているのではないか」と指摘。
ここで堀からは、自治会再編に向けたひとつの案として「サービスグラント」というNPOの活動を紹介。サービスグラントは高齢化によってデジタル化が遅れるなど機能しなくなった自治会に対し、企業に働きかけて専門家をボランティアとして集める“プロボノ”なる活動を実施。
集まった方々を地域にマッチングし、課題解決に取り組んでいるそうで「これを上手く応用できれば、例えば企業の新しい技術やサービスの実証の場として使ったり、そういう機会を増やしてはどうか」と提案。東国原さんは「企業と大学の官民協働、新たなシステムは必要」と頷きつつも、「(堀の提案は)先進的。ただ、地方となるとそこまでいかない」と話します。
◆今後の自治会のあるべき姿とは?
自治会のメリットとしては「地域の防犯・防災」、「情報共有」、「環境美化」、「コミュニティの拡大」などがある一方、デメリットに「会費」、「役職・仕事の負担」、「共有物を巡るトラブル」などが考えられますが、これまでの議論を踏まえて、最終的に自治会はどうあるべきなのか。
大空さんは「自治会費の使い道をオープンに!」と要望。まずは透明性を担保するよう望み、「自治会を大きくして、みんなが入る組織にするべき」と強調。なぜなら現状では自治会長の多くは時間とお金がある人が担っており、これはPTA会長や民生委員も然り。「毎日活動するのはお金や時間がある人しかできない。そうしたことをなくすためには幅広く、みんなで薄く負担していかないと厳しい」と改革案を提起します。
河崎さんは「自治というものは本来、下から湧き上がっていくもので、自分たちで決めようと出来上がるものが一番機能する」と持論を展開。そのためには「共通の目的が必要」と声を大にします。昨今のタワーマンションは自分たちの資産価値に大きく関わるため自治会が機能しており、「漠然とした目的があっても共通の目的が明確ではないからみんなが必要性を感じられない。目的があれば機能する」と主張。
また、東国原さんが提示したのは「スリム化と多様化」。スリム化とは「行政の仕事を行政に戻すべき」と訴えるも、一方で「行政も人もいない、財政も逼迫している」と危惧。そして、多様化は前述の通り、住民の生活が多様化しているなか「それぞれに見合った自治会のあり方、地域コミュニティのあり方を模索するべき」と述べます。
最後に堀は「足りないのは対価。参画するにはインセンティブがあったほうがいい」と主張。「企業も今SDGsを叫ぶなら、SDGsに関わるゴールは地域課題そのもの」と企業の参入を促し、「サービスやプロダクトを開発する場所にしてほしい」と望みます。また、東国原さんのスリム化に賛成し、その資金としてふるさと納税を提案。「僕は“志”だと続かないと思う」と地域の自治参画にあたって報酬の必要性を訴えていました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag
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