これがあれば聴覚障害者が健常者と対等に戦える…選手が渇望した画期的なシステムとは?

2023.06.09(金)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは“聴覚障害者のスポーツ”をキャスターの田中陽南が取材しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは“聴覚障害者のスポーツ”をキャスターの田中陽南が取材しました。

◆聴覚障害のある選手をサポートする画期的なシステム

陸上競技において、聴覚障害者と健常者と一緒に出場するケースでは、健常者はスターターのピストル音でスタートが切れるものの、聴覚障害者はスターターの動きを見たり、周囲の選手が走り出したのを見てからスタートするそうです。そうなると、聴覚障害者のスタートが健常者よりも出遅れてしまうのは確実です。

今回田中が訪れたのは、そうした状況を打開するべく聴覚障害の陸上選手をサポートする画期的なシステムを導入しているという「東京都立中央ろう学校」

聴覚に障害のある中高生が通う同校の陸上部の練習を見学してみると、スタートを切る選手たちのスタートラインには、スタートの合図と同時にさまざまな色に光るライトが。

陸上部顧問・竹見先生によると、この機器は聴覚に障害のある選手が確実にスタートを切るための専用スターターで、スタートの合図となるピストル信号を光に変えて選手に通知。

選手たちは「位置について」「よーい」「ドン」の3つの合図を3色の光で確認し、一斉にスタートすることが可能になります。

選手たちに話を聞いてみると、このシステムの有無が競技の結果に大きく影響していると言います。全く耳が聞こえない選手は「通常の大会に参加することが一度あったが、そのときはスターターを見てスタートしていた。自分の走りよりもスターターを見なければいけないと考えてしまい、結果的に良くないタイムで終わってしまった。私は100メートルで、スタートランプがあるときとないときの差は0.4秒ぐらいある」と話し、この専用スターターさえあれば健常者と走っても負けない自信があると笑顔をのぞかせます。

別の選手にも話を聞いてみると、「(このスターターがないと)音が鳴ったかどうか自信がなく、不安になる。光でスタートした方がストレスなくスタートすることができる」といった意見も。

この装置の開発の発起人は竹見先生で、開発の経緯について「前任の学校で陸上部の顧問をやっていた際、健聴の大会で(聴覚障害のある生徒が)『絶対にこれでは勝てっこない』と泣きながら私に訴えてきた。スタートランプを開発してくれないかということで、企業さんと一緒にやってきた」と明かします。

◆2025年にはデフリンピック開催、普及に向けての課題とは?

このろう学校では陸上部以外でもさまざまな機器が用いられており、例えば授業では先生の前にパネルを立て、文字起こしアプリを使って先生の言葉をそこに表示。

また、先生や生徒が補聴を援助するシステム「ロジャー」を首から下げることで、マイクで拾った先生の音声を生徒の補聴器や人工内耳に届けています。

さらに、体育の授業では、ホイッスルの代わりにライトを使用。先生は手元のボタンを押してライトを点滅させることで、生徒に合図を送ります。

ちなみに、体育館にあるホワイトボードには“光が鳴ったら”との言葉があり、この“光が鳴る”という表現は、ろう学校ならでは。

現在、聴覚障害を持つ陸上選手たちが使っていたスターターを保有しているのは、全国4つの自治体と都立中央ろう学校のみ。喫緊の課題はその普及にあるそうで、竹見先生は「2025年に東京でデフリンピックがあるので、それをきっかけにろう学校、各都道府県に1台ずつぐらいは設置できるような活動をしていきたい」と抱負を語っていました。

取材した田中によると、このスターターは9台で約300万円。普及が進んでいない背景には、世間にそれほど知られておらず受注が少ないため、基板を作るにも手作りのような状況となっているなど、現状について言及。その一方で、授業で使われていた機器は広く知られていて、導入の必要性から都や県から補助金が出ているケースがあり、そうした予算面も「今後の課題になってくるんだなと感じました」と取材を通じての実感を語ります。

フリーアナウンサーの荘口彰久さんは「(行政は)こうしたところに積極的にお金を使ってほしい」と望みつつ、光刺激スタート発信装置のような機器を活用することで聴覚障害者と健常者が同じフィールドで競技ができることにも繋がるとし「(聴覚障害者にとって機器の普及は)励みになるのでは」と期待を寄せます。

これにインスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんも「こういうところに税金を使っていくべき。もっと(一連の機器が)普及すれば」と同意。日本だけでなく海外にまで市場を拡大することで需要も高まるのではないかと提案します。

そうした意見に「普及させることができるんじゃないか」と語るのは、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さん。というのも、「FIFAワールドカップカタール2022」で脚光を浴びたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)をはじめ、昨今、スポーツとテクノロジーの親和性、技術開発は進んできており「0.001秒を争う陸上の世界で、スタートとその後の秒速を記録するようなテクノロジーをセットで売れば、陸上業界のデフォルトを作れば普通に売れて、生産台数が増えればコストも下がってくるという構造が作れると思う」と今後の進展に期待します。

2025年には東京でデフリンピックが開催されます。デフリンピックとは聴覚障害(デフ)の選手による国際的なスポーツの大会で、オリンピック同様4年に一度、夏季大会と冬季大会が行われます。そして次回、2025年の東京大会では陸上、サッカー、卓球、バレーボール、バスケットボールなど全21競技が行われ、70~80の国と地域から約3,000人が出場する予定です。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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