シリーズ「池袋暴走事故から4年…進む社会のその先に」。3日目は、車大国として知られるドイツの高齢者の交通対策についてお伝えします。

ドイツは日本の国土とほぼ同じ大きさで、人口は日本の3分の2ほどの8320万人ほど。日本と同じく高齢化が進んでいます。そしてBMWやメルセデスベンツ、フォルクスワーゲンなど、世界的な自動車メーカーが多いところも日本と似ています。そんなドイツを杉本記者が訪れ、高齢運転の現状と対策を取材しました。
東京から約9000キロ、西ヨーロッパに位置するドイツ連邦共和国。記者が訪れたドイツの南部に位置する「バイエルン州ミュンヘン」は歴史的な建造物が並び、多くの観光客が訪れるドイツ第三の都市です。ミュンヘンにはロードサービスやカーレンタルといった、車大国には欠かせないサービスをドイツ全土に展開する民間団体、「ドイツ自動車連盟=ADAC」の本部があります。
ADAC担当者:「ADACでは長年にわたって運転能力チェックを実施していますが、高齢ドライバーからも好評です」
ADACはロードサービスのほか政府や州などと連携し、交通事故対策などにも取り組む団体で、その中で力を入れている取り組みの1つが高齢ドライバーへの支援です。日本では人口の4分の1以上が65歳以上と高齢化が進んでいますが、ドイツも人口の5分の1以上を高齢者が占めていて、日本同様、高齢者ドライバーが社会問題の1つとなっています。
80代のドライバー:「私はまだ運転する。まだ目が見えるし耳もよく聞こえるし、反応も問題ないから。高齢になってからも車を運転することに意味があるかどうか、ドイツでも議論はある。日本だけじゃない、他のどの国でも」
70代のドライバー:「安全性は歳を取るとよくなるものではない。ある年齢になったら検査を受けるべき。75歳か80歳の間でしょうか、遅くとも80歳では必須ですね」
日本では去年5月から、免許を更新する75歳以上の高齢者に運転技能検査が義務付けられました。しかしドイツではドライバーの権利を守る考えが強く、免許更新の際に適性テストの実施を義務化するといった国が定める法律はありません。そこでADACが、高齢者を中心とした運転に不安を覚えるドライバーに、運動能力テストや視力・聴力、認知症検査などの適性テストを自主的に受けることを促しています。
ADAC担当者:「私たちADACは運転能力テストを実施しており、特に高齢ドライバーはドライビングインストラクターに能力テストを受けてもらうことで、車を安全に運転してもらうことができます」
ADACのモットーは「生涯安全運転を」です。年齢に関係なくドライバーが快適に、安全に運転できる環境づくりに取り組んでいます。その中でドライバー自身が、自分の運転能力や適性を考える機会を増やし、自分の状態を自覚してもらうことが交通事故の減少につながると考えています。
ADAC担当者:「ADACは自発性の問題を非常に重要視していて、誰もが簡単に自己評価をすることで最終的に交通安全に貢献することができます」
誰もが安心して安全な運転ができる社会を目指して、活動は続きます。