子ども政策で評価の明石市・泉市長「世界のグローバルスタンダードを国がやればよい」

2023.03.14(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月27日(月)放送の「フラトピ」のコーナーでは、兵庫県明石市の泉房穂市長をゲストに迎えて、国と都の“少子化対策”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月27日(月)放送の「フラトピ」のコーナーでは、兵庫県明石市の泉房穂市長をゲストに迎えて、国と都の“少子化対策”について議論しました。

◆異次元の少子化対策とチルドレンファースト

岸田首相が表明する“異次元の少子化対策”では、児童手当を中心とした経済的支援の強化や働き方改革の推進と制度の充実などを掲げています。また、東京都の小池知事も“チルドレンファースト”と銘打ち、少子化対策を重点政策とし都の一般会計予算案のうち約1兆6,000億円を計上。18歳までの子どもに月5,000円給付、第2子の保育料を2歳まで完全無償化を謳っています。

そうしたなか、10年以上子育て支援への取り組みを続ける明石市の泉市長は、昨年、参議院内閣委員会に参考人として出席し「世界でのグローバルスタンダードは、日本だけやっていない政策ばかりなんです。お金がないからセコいことをするのではなく、お金がないときこそ子どもにお金を使うべき」と訴えました。

ちなみに、明石市では医療費は18歳まで全員無料。認可外保育園は対象外となる場合があるものの、保育料も第二子以降は基本的に全員無料で、おむつは満1歳まで無料で宅配。そして、中学校の給食費は無償化され、遊び場は親子ともに入場料無料など、これら5つの無償化を所得制限なしで行っています。

まず泉市長は、東京都の動きに対し「嬉しかったですね」と顔を綻ばせます。というのも、明石市では7年前から第2子の保育料無償化をしてきましたが、追随する自治体がなく「頑張っているのに寂しかった」と本音が。また、月5,000円の給付についても、明石市では昨年高校生世代にも拡大しており、それを都も行うことを評し、「これで一気に全国に広がる。大きなとっかかりだと思う」と喜びます。

◆国がやらないから自治体がやむなくやっている…

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんからは、第2子の保育料無償化について質問が。現状、認可外保育園に通う子どもは必ずしも無償化の対象になっていない理由を問いかけると、泉市長は「認可外も補助は出している。制度が違うだけ」と回答。認可外保育園のなかには、保育料が高いところもあるため、一定の基準を設けて補助を出しているとのこと。

さらに大空さんは明石市が直面する問題のひとつとして、待機児童問題を指摘。解消すべく動いてはいるものの、急激な人口増により全国的に見ても高い数字が顕在化しています。これに対し泉市長は「もちろん明石市も不十分な点はある。すごい数の子どもが来ているので、待機児童と道路渋滞は問題」と認めた上で、現在、これらの問題に取り組んでいるとも。そして、「(何事にも)光と影がある。影の部分も意識するのが政治。(明石市も)まだ完璧ではない」と話します。

理想の社会を実現すべく邁進している明石市の姿勢が高く評価される一方で、明石市の政策によって「“しわよせ”が生まれた」という“言われなき批判”もあると言い、泉市長は「しわよせなんてない。しわよせがないようにやるのが政治。明石市はインフラ整備もやっている。子どものみならず高齢者対策もしている。そのバランスを取るのが当たり前」と熱弁します。

さらに、「そのバランスを日本が失している。明石市の予算配分がいわゆるグローバルスタンダードで当たり前のことをしているのに、みんな異常な状態に慣れ親しんでいるので、明石市が珍しいと思われる。国は異次元ではなく、当たり前の少子化対策をすればいいだけ」と主張。

政府と東京都、双方からさまざまな支援策が打ち出されているなか、工学博士の古田貴之さんは「国は国、都は都なりの役割があると思う」と言い、その辺りの区分けに関する意見を求められると、泉市長は「医療費や保育料、給食費の無償化ぐらいは本来、国が全国一律ですべきこと。こんなことは自治体の競争ではない」と力を込めます。基本的な安心を国が担保した上で児童虐待防止やひとり親家庭支援などを個別に対応するのが家庭に近い自治体の役割であり、「国が何もしないから自治体がやむなくいろいろな無償化しているだけ」と泉市長。

明石市の財政を見ると、お年寄りや障害者、子どもに関与する「民生費」が約50%と高くなっていますが、これは国家規模でもできることなのか。

泉市長に聞いてみると「40年前から日本だけ異常で、他の国の半分しか子どもに予算を使っていない。だから、他の国並みに、すぐに子ども予算を倍増、できれば3倍増ぐらいすればいい。ハンガリーなどはやっている」と他国を引き合いに挙げます。

ここまでの話を聞き、Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部さんは人口増などの好循環を生み出し、誰もが幸せを享受できる社会を目指す泉市長の手腕を評する一方で、他の地域が追従した場合、最終的な目的が違う広まり方をする地域もあるのではないかと危惧すると、泉市長は「私は一貫して『やさしい社会を明石から』と言い続けてきた」とキッパリ。「一人ひとりがホッとできるやさしい社会を作りたい。それを明石市から全国に広げていきたいという強い思いでやってきた。最近、濃淡はあるものの、だいぶ全国に広がりつつある」と手応えを口にします。

◆泉市長が語る市長の役割…「市長の仕事は3つだけ」

昨今、東京23区でも給食費無償化を行う自治体が増えています。中央区や台東区、品川区、世田谷区、北区、荒川区、葛飾区などは新年度から無償化する方針で、足立区でも中学校のみ無償化。そして、世田谷区では1年間無償化を実施し、以降は社会経済状況を見て判断していくとしています。

とはいえ、まだまだ二の足を踏む自治体が多いのが現状。そうした地域に対して、泉市長は「最終的にはトップが決断すればできること」とアドバイス。

また、子ども政策に関しては、世間で“所得制限”の是非が問われていますが、明石市ではそれを撤廃し、全ての子どもに政策を実行しています。これについて泉市長は「子ども施策は子どものための施策だから。親のものではない。もしも所得制限をかけるのであれば子ども自身にかけるべき。親の責任という発想があるが、子どもはフェアに、まちのみんなで子どもを応援するもので所得制限は適さない」と持論を述べます。

ここで大空さんから、多額な予算をかけた子ども政策のわかりやすい成果、結果としてどこで効果を測るべきなのか問われると「まちの笑顔が本当に変わった」と泉市長。「市民から『今の明石がいいね』と言われる。70~80歳の年配の方々からも『生まれて始めて明石に誇りを持てた』とみんな言う」と胸を張ります。

人口も出生率も増加していますが、それ以上に満足度調査も91.2%まで跳ね上がっているとし「(ひとつの指針としては)暮らしている方の幸せ度・満足度がポイントだと思う」と述べます。

また、泉市長から提言がひとつ。それは子ども政策にはお金だけでなく“人”も必要ということ。明石市では泉市長の就任前は市の職員約2,000人のうち、子どもを担当する職員は39人だったものの、現在は135人と3.46倍に増やしました。

しかも、ただ人数を増やすだけでなく質も担保し、専門性の高い職員を配置することで緻密なケアを可能にしたそうで「お金と人、この2つがポイント。人を支えるのは人、大事なのは人」とその言葉にも熱がこもります。

そして、人材の確保する手段に関しては“待遇改善”を挙げます。例えば、一般的に手話通訳士やDV相談員の年俸は200~300万円程度ですが、明石市では正規職員として採用し700~800万円支給。「本当に人を大事にするのであれば、人に寄り添う人の待遇を変えること。国の基準が悪すぎる」と泉市長。

こうしたきめ細かな行政に対し、古田さんから市長として人事にまで関与しているのか問われると「市長の仕事は“方針決定”、“予算案のシフト”、“人事”の3つだけ。市長の仕事は少ない」と明言。「子どものまちを作るために予算を倍増し、子どもに寄り添える職員を3倍にする。これをやれば子どものまちができると信じている」と声を大にします。

番組Twitterの「スペース機能」に参加していた視聴者からも泉市長にさまざまな質問が。まず保育士・保育所不足への対策を問われると、待遇改善を唱え、保育士に支援金を直接支給すること、家賃負担の軽減、保育士の子どもが待機児童にならないように優先的に保育施設へ入所できることを挙げ、「弁護士職員が保育士の立場でトラブルになったときに助ける。つまり保育園ではなく保育士の側につくようにしている」とも。

これにはキャスターの堀潤も「なるほど!」と行政が現場の職員の味方になる姿勢に感心していると、「保育士支援と言いながら実際は保育所にお金を配っているところが多い。明石市は直接保育士の口座にお金を入れている」と泉市長。また、給食費無償化についても「(給食費を)払う・払わないの問題が表面化しないためにも無償化する。子どもが不憫な思いをしなくて済むのは大事なポイント」と話していました。

※この番組の記事一覧を見る
    
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね

RELATED ARTICLE関連記事