子ども政策が盛んな明石市…泉市長に訊く政治の意義「お金をなんとかするのが政治」

2023.03.09(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月27日(月)の放送では、兵庫県明石市の泉房穂市長をゲストに迎えて、明石市の子ども政策について伺いました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月27日(月)の放送では、兵庫県明石市の泉房穂市長をゲストに迎えて、明石市の子ども政策について伺いました。

◆各方面から絶賛される明石市の子ども政策

泉市長はNHK職員、政治家秘書、弁護士などを経て、2003年に衆議院議員選挙で初当選。その後、2011年に明石市長に就任。現在3期目で今年4月の任期満了をもって引退を表明しています。

明石市では独自の子ども政策を推進しており、医療費は18歳まで全員無料。そして、認可外は対象外となる場合があるものの、保育料も第2子以降は基本的に全員無料。おむつは満1歳まで無料で宅配され、中学校の給食費を無償化。さらに遊び場は親子ともに入場料無料など、これら全て所得制限なし、自己負担なしで行っています。

国にはできないことを実践し、各方面から高い評価を受ける明石市ですが、泉市長としては「要は古い政治。みんなできないと思い込んでいるが、明石市がやっていることは難しいことではない。他の国で当たり前にやっていることをやっているだけ」と話します。

予算についても「お金がないと思い込んでいるが、そんなことはない。みなさんから多くの税金を預かっているわけですから、やろうと思えばできる」と明言。

明石市の予算は約2,000億円で、そのうち子ども政策にかかる費用は約34億円、全体の約1.7%です。これも“やりくり”で実行可能と泉市長。「例えば、子どものいる共働き家庭、年収手取り600万円の世帯で考えると、月に50万円使えるお金があるうちの1.7%は8,500円。子どもの月謝として8,500円であれば、みんなやっていること」と熱弁します。

さらに、明石市では全国に先駆けさまざまな支援を実施しています。例えば、離婚後に養育費が支払われないケースでの立替払や、離婚を経験した親子の面会交流支援、無戸籍児の支援。そして、2ヵ月に1度支払われている児童扶養手当を毎月に分けて支給、こども食堂を小学校区で開設、児童相談所の改革など、多角的に寄り添う支援を展開しています。

泉市長からしてみれば、これらは全て“グローバルスタンダード”。「他の国でやっていることを、(日本も)していかなければ子どもに申し訳ない。(明石市は)遅まきながらやっているだけで、もっと他の地域もやっていけばいい」とさらなる広がりを望みます。

◆泉明石市長が考える子ども政策のポイント

工学博士の古田貴之さんは「(明石市が)素晴らしいのは、トップの方がちゃんとポリシーを持って伝え、実行していることに尽きる」と称賛。さらには「国は少子化というと、とにかく予算をつけてお金を配る、子どもが増えたら予算を増やすと言っているが、明石市は子どもが生まれた後、子どもをいかに育てるかにフォーカスしているのと、弱者の方に対しても手厚い。そうした全方位的なところがポイント」と泉市長の手腕を分析します。

子ども政策に対する泉市長の考え方は、「すべての子どもたちを、まちのみんなで、本気で応援すれば、まちのみんなが幸せになる」というもの。これは市長になる前から主張し、選挙時の公約でもあり、ポイントは4つあると泉市長。

1つ目は、“すべて”の子どもたちに目を向けていること。「一部の子どもたちではなく、明石の子どもはみんな自分の子みたいなもの。たったひとりの子どもも見落とさない」と力を込めます。

2つ目は、まちの“みんな”。“みんな”というのが重要で「子どもはその親の子だけではなく、まち中のみんなの子どものようなイメージ」と説明。3つ目は“本気”で、やる気だけでなく、お金も人もちゃんと子どもに寄せることが大切とし、最も大事なこととして挙げたのが、4つ目のまちの“みんなが幸せ”になること。「子ども支えるというのは子どものためだけでなく、子どもとは未来。子どもを本気で応援したら、そのまちそのものが良くなる」と訴えます。

これらさまざまな政策もあり、明石市は人口増を続け、好循環を生み出しています。泉市長はその流れについても解説。前提として「みんな財源論を語るが、お金をなんとかするのが政治。『お金がない』と言い訳するのは政治家の仕事ではない。あろうがなかろうがやる、それをやるのが最初」と語りつつ、まずやることとして“施策”を挙げます。

「施策を行うことで、まちに安心が生まれ、そういったまちに住み続けたい、そんなまちであればもう1人産める。だから明石市は人口が増え、出生率が増えている。明石市は人口増を狙っていない。結果、人が来ているだけであって、暮らしやすいまちを作るだけ。ポイントは“安心”」と泉市長。その結果としてまちが賑わい、地域経済が活性化。税収が増え、財源ができ、ひいては子どものみならず、障害者施策や高齢者施策など幅広い施策が可能になるという好循環を生むサイクルを解説します。

また、明石市の特徴としては、政策に所得制限をかけていないため中間層が増え、共働きとなると2人納税者が加わることになります。さらに、その人たちは子どもにお金を使うので地域にもお金が落ち、結果的に商店街が潤い、新しいお店ができ、そうなるとマンションも建ち、建設業界も盛況に。「公共事業ではなく民間事業で企業が回り始めたという流れ」と泉市長は好循環の秘訣を補足します。

とはいえ、市長になった当初の財政は厳しく、就任前年の2010年の子どもにかける予算は約125億円でしたが、現在は約297億円。特に税金を増やすことも国債を発行することもなく予算を2.38倍まで増やしています。これは全て“やりくり”の結果であり「このうちの34億円でやったのが5つの無料化であり、こんなの序の口、もっともっとやっている」と泉市長。

今後、明石市の政策を他の自治体が踏襲すれば、明石市に移住する人が少なくなることが考えられますが、泉市長は「別に明石だけが良くなればいいと思っているわけではない。他もみんな良くなればいいと思う。明石市はやりくりをしているだけなので、人口が増えなくてもやっていける状況」と考えを述べます。

泉市長の話を聞き、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「“子どもを増やすことを目的としていない”という市長の言葉は、とても重要」とした上で、昨今、「少子化対策と子育て支援が同じ文脈の中で使われすぎている。本来これは切り離して考えるべきで、今の日本は子どもを増やすために子育て支援するような感じになっている」と指摘。

これに泉市長は「おっしゃる通り」と大きく頷き「人口増や税収増は目的でなく結果。大事なのは、暮らしやすいまちづくり」と強調していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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