ふるさと納税“一人負け”東京の巻き返しは?

2023.01.22(日)

10:00

 いま、三重県の地方自治体「四日市市」が年収1000万円で募集している求人広告が話題となっています。その募集人材は「ふるさと納税のシティプロモーション戦略プロデューサー」です。かなりの好条件となっている理由は、四日市市が「ふるさと納税」で年間8億円(2021年度)もの赤字になっていることにあります。年収1000万円を出してでも、ふるさと納税の赤字を解消したいという思いがあるのです。実は「ふるさと納税」で東京23区の自治体は赤字になっていますが、その金額は深刻なものがあります。

 いま、三重県の地方自治体「四日市市」が年収1000万円で募集している求人広告が話題となっています。その募集人材は「ふるさと納税のシティプロモーション戦略プロデューサー」です。かなりの好条件となっている理由は、四日市市が「ふるさと納税」で年間8億円(2021年度)もの赤字になっていることにあります。年収1000万円を出してでも、ふるさと納税の赤字を解消したいという思いがあるのです。実は「ふるさと納税」で東京23区の自治体は赤字になっていますが、その金額は深刻なものがあります。

 自治体同士の競争が過熱している「ふるさと納税」の総額は全国で8302億円と、大きな金額になっています。北海道紋別市(153億円)のように多くの寄付が集まって“黒字”となった自治体もある一方で、本来なら得られる税収を失った自治体には横浜市(マイナス230億円)を筆頭に、ワースト2位が名古屋市(マイナス143億円)・3位大阪市(マイナス123億円)、4位川崎市(マイナス103億円)、5位世田谷区(マイナス87億円)と続きます(いずれも2021年度)。

 ただ、ワーストスリーの横浜・名古屋・大阪の各都市よりも事態が深刻なのが、4位の川崎市と5位の世田谷区です。その理由はどちらも「不交付団体」と呼ばれる自治体だからです。

 不交付団体は税収が多く、国から「地方交付税」を受けていない自治体です。ふるさと納税の制度では“減収した分は地方交付税によって減収額の75%が国から補填(ほてん)される”ことになっていますが、不交付団体にはその補填がないため、減収額がそのまま自治体の財政を直撃してしまいます。東京23区は不交付団体で、冒頭で紹介した三重県の四日市市も不交付団体です。

 東京23区で構成される「特別区長会」は制度の見直しを国に要望し続けていますが、なかなか見直す動きにはなっていません。東京の多くの自治体はこれまでいわゆる「返礼品競争」には積極的には加わってきませんでしたが、赤字額が年々増えていく中で背に腹は代えられないと方針が変わりつつあります。

 都内で最も赤字額が大きい世田谷区は、14年間での累計では364億円もの“赤字”になっていて、税収の減少は住民サービスの低下につながります。世田谷区の保坂展人区長はこれまで「制度自体に問題があると考えてきたので、返礼品競争に加わりながらの制度批判は避けたい」として、制度の活用に消極的でしたが、2022年11月に“自衛策”として方針を転換しました。ウェブサイトを新たに作り、返礼品も150点ほど追加しました。すると、寄付額が方針転換後のわずか1カ月ほどで7514万円も集まったということです。

 さらに、都内ではユニークな返礼品も登場しています。2022年度は「マイナス21億円」に上るとみられている中野区は、返礼品としては全国で初めてとなる「トレーディングカードゲーム」を追加しました。トレカの製造・販売を行う「ブシロード」の本社が中野区にあることが理由で、内容は2月3日に発売される新商品に加え、返礼品限定という「中野区のシティプロモーションキャラクター『中野大好きナカノさん』の特製PRカード」があります。必要な寄付額は2万円ですが、区の担当者によりますと「非常に好評で、予想以上の申し込みがある」ということです。

 返礼品の魅力が上がるのは利用する側としてはうれしいものですが、東京の自治体の税収が大きく減ってしまっている現状は都民としては心配です。ふるさと納税の在り方を改めて考えてみる必要があるかもしれません。

 

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