中国ゼロコロナ抗議デモがSNSで拡散…日本の論客が懸念する事態とは

2022.12.26(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、ゼロコロナ抗議デモに見る“中国の現状”について、視聴者を交えて議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、ゼロコロナ抗議デモに見る“中国の現状”について、視聴者を交えて議論しました。

◆ゼロコロナ政策への不満爆発…中国で異例の抗議デモ発生

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは“中国ゼロコロナ抗議デモ”です。

中国ではゼロコロナ政策として国民に厳しい行動制限を強いるなか、11月27日に上海市で習近平政権に対する異例の抗議デモが発生。

発端となったのは、新疆ウイグル自治区で10人が死亡したビル火災で、コロナ禍で周囲が封鎖されていたため救助が遅れたとされ、抗議活動に発展しました。その後、北京では抗議活動の呼びかけがネット上で広がり、「白紙運動」と呼ばれるデモで数十台の警察車両が出動する厳戒態勢に。

さらに、デモはオーストラリアやイギリス、アメリカなど海外にも拡大。日本でも新宿駅で大規模な抗議活動が行われました。

こうしたことを受け、12月1日、孫春蘭副首相はオミクロン株が弱毒化しているとし、コロナ対策を緩和する姿勢を示しました。その後、北京市ではバスや地下鉄に乗る際のPCRの陰性証明が不要となっています。

キャスターの堀潤は、新宿で起きたデモに取材に行き、そこでは中国にルーツを持つ20代の若者が大勢いたと振り返ります。そのなかで武漢出身の大学生は「そもそもコロナの問題点を最初に発信した科学者が不当に拘束された。もっと早く事実を伝えるべきだった」と訴え、天津出身の20代の女性からは「私たちは子どもの頃、自由や民主というものに憧れていた。しかし、それはきっと叶わない夢。叶えられたとしても何十年も先、きっと声をあげても変わらないと思うが私はここにいる」との声もあったと話します。

XY世代の金融アナリスト・戸田裕大さんは、中国でビジネスを展開してきた経験から今回の件に関し「私は自由で民主的な価値観が好き」と自らの立場を明確にした上で、「そうした立場から見ても、今回の抗議デモはかなり異例」と驚きを隠せません。そして、参加者たちが拘束されるリスクを背負いながらもデモを展開したことに対し「相当不満や鬱憤が中国国内で溜まっていたんだろうと思う」と所感を述べます。

モデルでタレントの藤井サチさんは、中国のデモ映像をTikTokで観て知ったと言い、「こんな衝撃的な映像はなかなかないと思って観てみたら、(そのデモが行われていたのは)まさかの中国だった。本当に中国なのかなと思った」と映像を観たときの印象を語ります。

SNSの普及により、そうした映像が全世界に配信されていることに「ものすごく意味のあること」と思うと同時に、若者たちが顔を出してデモに参加している姿に「彼らはこのまま中国で安全に暮らしていけるのかな」と案じます。さらに、2019年に香港でデモが起きた際は多くの人が参加しながら規制されてしまいましたが、今回はどうなるのか。一過性のものなのか、継続的なものになるのか「注目していきたい」と藤井さん。

◆今回の抗議デモで習近平政権の対応は…

堀は雑感として「中央政府・習近平政権は柔らかい対処をした。香港などとは全く違う形」と話します。というのも、規制・行動制限は徐々に緩和され、それにより抗議の声もかなり下がったから。「(政府が)それだけ危機を感じていたのか、世界が見ているというなかでの対処だったのか」と思いを巡らせます。

一方、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「(中国政府は)楽観視していると思う」と堀とは逆の意見を示します。

なぜなら、今回の抗議活動は主に物質的な自由を求めているもので体制を揺るがすまでには至っておらず、革命を起こそうとしているわけではないから。「天安門事件の再来というメディアがあったが、どう考えてもそうはならない。実際、もうある程度落ち着いてきている。一級都市でも規制が緩和されつつある」と現状を語ります。

さらに、実態を見誤ってはいけないとも。中国国外で学生を中心に習近平体制、一党独裁に対する反発の声はあるものの、それを中国国内の若者がどう捉えているのかは別で「当然声をあげている人はいるが、中国の若者がSNSで声をあげていると大きな括りで報道するのは間違っている」と指摘。「実態を直視し、習近平を含め、中南海の指導者たちが楽観視している現状を見ないといけない」と主張します。

この意見に、戸田さんは「的を射ている」と述べ、中国が抱える問題点に言及。「中国が難しいのは、年間7%経済成長を遂げてきたことで(習近平体制に)みんな黙ってついていっているところはある。多少自由がなくても成長してきたところがあるが、それが今、若干揺らぎ始めている。そこはかなり危ない」と警鐘を鳴らします。世界中でインフレが起こるなか、中国だけはデフレに向かい「それぐらい中国国内の需要が減っている」と危機感を募らせます。

現段階では自由に対するデモとなっているものの、今後景気が落ち込み、矛先が経済に向かうと「かなりきな臭い問題になるし、日本にも危機が及んだり、台湾有事が本格化したりというところにも繋がってくるので、警戒して見ておいたほうがいい」と憂慮。

◆日本は今後、中国とどう向き合っていくべきなのか

先日、1989年に勃発した民主化や言論の自由などを求めた大規模運動「天安門事件」の際の学生リーダー・王丹氏が会見を行い、「89年と同じく学生ら若い世代が最前線にいる」と指摘。

天安門事件は当時、改革派の胡耀邦氏の死去をきっかけに学生らが決起したもので、同じように今回のデモにあたっても江沢民元国家主席が死去し、SNSでは追悼集会を呼びかける動きがありました。これについて王丹氏は「ネットやSNSを駆使した活動が、今後の社会運動の代表例になるのでは」と意見しています。

堀は、過去に中国の国営メディアのジャーナリストと話をした際に、忘れられない一言があったとし、「習近平氏が大衆をコントロールしているのではない。今はSNSがあり、我々が声をあげれば中央政府は動かざるを得ない。つまり、大衆社会がコントロールできる時代なんだ」という発言を紹介。「今回、声をあげれば政府が動くことを体験した中国が、今後、政府を含めどう変容するのか、それともしないのか」と大きな関心を示します。

大空さんは「ネットやSNSは、自由社会のなかでこそ本質的な価値を発揮する」と持論を述べ、「中国のような体制下では、逆に危険。監視され、世論が動きやすい。世論は意外と脆く、大衆社会でコントロールできてしまう現状がある」と危惧。そして、「天安門事件のときにSNSがあったら上手くいっていたかといえば、そうではないと思う。実際、香港やウクライナを見ても、権威主義の国ではSNSやネットで民意が盛り上がっても何の意味もない。そもそもの自由といった本質が社会のなかでないという現状を、憂う必要がある」と述べます。

Twitterスペースに参加していた視聴者からは「今回の報道には、2つ思うところがある。1つは、元来景気が悪化していたところにさまざまな不手際があり、溜まった不満が一気に爆発したということ。もう1つは学生が顔を出してデモを行っていることにすごくハラハラする。今は大丈夫でも今後潰していくことも手段としてあり得るので、彼らが心配」と藤井さんと同じく参加者を案じる声が。

藤井さんは、今回の騒動で若者たちが“白い紙”を持って集合していたことに注目し、「今後、白い紙という象徴的な意味を持つ言葉も規制がかかっていきそう」と懸念しつつ、さらに「VPN(仮想プライベートネットワーク)を使っている方が多く、その規制もかかり、むしろ自由がなくなっていく可能性もあるのかな」と今後について言及。

堀が過去に出会った中国の学生は「今、最も関心があるのは“中国の成長”であり、民主を求めるのはもう少し先」と語っていたそうで、当時、堀はそこにリアルを感じたと回顧。その若者も今では「自分たちも経済の先にある社会を考えて行動すべきではないか」とアップデートしているとし、日本人もそうした変化を捉え、「国内でも議論していきたい」と述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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