判断が難しい著作権・演奏権…カラオケは? 音楽教室は? その概要を弁護士が解説

2022.11.03(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月25日(火)放送の「ニュースFLASH」のコーナーでは、最高裁判所で判決が下った“音楽教室の著作権使用料”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月25日(火)放送の「ニュースFLASH」のコーナーでは、最高裁判所で判決が下った“音楽教室の著作権使用料”について議論しました。

◆音楽教室の生徒も著作権料を払う!? 最高裁の判決は?

音楽教室のレッスンなどで使われる楽曲の著作権使用料を教室側がJASRAC(日本音楽著作権協会)に支払う必要があるかどうか争われた裁判で、最高裁は生徒の演奏については「支払う必要がない」との判断を下しました。

最高裁は判決で「生徒は演奏技術向上のために自主的に演奏している」と判断。「音楽教室が楽曲の利用主体ではない」とし、生徒の演奏については徴収の対象外としました。最高裁が音楽教室での著作権について判断を示すのは初めてのことです。

◆今回の判決を、現役弁護士が解説

この裁判について、法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんが解説。まず、今回問題となっているのは、音楽に発生する著作権に付随する“演奏権”

これは公衆に向け営利を目的として演奏する場合、その楽曲の権利者から許諾を受け、その上で著作権使用料が必要な場合は払わなければなりません。ポイントとなるのは「公衆に向けられているか」という点で、閉ざされた空間で勝手に歌っているのであれば問題なく、さらに「営利目的かどうか」、つまりお金をとっていなければ問題はありません。

今回の裁判でいえば、これらに加え「主体は誰なのか」も争点に。音楽教室でも先生の場合は教室側が雇い、その意向のもと生徒=公衆に向け演奏し、お金もとっているので営利目的。一方で生徒は営利目的で演奏しているわけではないため、生徒が主体になっているものの「演奏権を侵害していることにはならない」と説明。

「音楽教室が生徒に演奏させている」という意見もありますが、最高裁はそれを認めることなく、生徒は自主的な練習として演奏していると判断。音楽教室を主体とするのはおかしいという判決を下したことになります。

◆“カラオケ法理”に鑑みる、音楽教室と著作権料の問題

こうした今回の問題に対し、作曲・編曲に勤しみ、自宅とスタジオの往復を繰り返しているという視聴者が「生徒さんに払ってほしいなどとは誰も全く望んでおらず、当然JASRAC側も全く言っていないということは全く伝わっていないのだろうな」と番組Twitterにツイート。Twitterスペース上で話を聞くと、「“カラオケ法理”というものがあり、カラオケではお客さんがひとりで歌ってもJASRACの徴収対象になる」と指摘しました。

このカラオケ法理について、由井さんが解説。カラオケ運営者は営利目的で運営しているものの、歌う主体ではなく、演奏もしていません。お客さんは歌うことでお金をもらうわけではないものの、歌うのは事実。

つまり、演奏しているのはお客さんということになりますが、ここで演奏権を行使し、著作権料を払うのは誰なのかを決めたのが、カラオケ法理。

これには判例もあり、カラオケがお客さんに歌わせている、カラオケが営利目的で演奏しているとみなし、カラオケ運営者が著作権料を払うとしています。

今回、このカラオケ法理が適用できるのではないか、音楽教室の生徒はカラオケにおけるお客さんであり、音楽教室に著作権料を払わせることができないのかがひとつの争点になっていました。結果的に一審は先生も生徒も著作権料を「徴収できる」としましたが、二審・最高裁は先生からは徴収できるものの、生徒は徴収対象外に。

由井さんが注視するのは、生徒は徴収対象外となっているものの、そもそもこれは生徒から徴収するのではなく、払うのはあくまで音楽教室ということ。「もともと生徒から徴収するという話ではないことは、誤解のないようにしたい」と強調します。

由井さんは今回の判決に対し、「ある程度、現実的な判決がなされたと思う」と率直な印象を語ります。

一方で、先生から著作権料を徴収すべきかは「議論の余地がある」とも。なぜなら、先生の行為は教育にあたるから。「(先生は)教育として人を育てるために演奏している。演奏してお金を取るというより教育目的でやっているので、そこから(著作権料を)取るべきなのかはひとつルールを作ってもいいのかなと思う」と持論を述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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