英語スピーキングテスト結果は入試の評価に加算すべき!? Z世代と視聴者が議論

2022.10.18(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月10日(月・祝)放送の「GENERATION」のコーナーでは、視聴者を交え“英語スピーキングテスト”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。10月10日(月・祝)放送の「GENERATION」のコーナーでは、視聴者を交え“英語スピーキングテスト”について議論しました。

◆英語スピーキングテストは高校入試の加算対象にするべきか?

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、番組に出演するZ世代のコメンテーターとともにひとつのニュースについて議論する新コーナー「GENERATION」。2回目となるこの日のテーマは“英語スピーキングテスト”です。

公立中学校の3年生を対象に11月に実施される英語スピーキングテスト(ESAT-J)を巡り、テスト結果を入試の評価に加えないという条例案が都議会本会議で否決されました。

英語スピーキングテストとは“使える英語”の育成を目指し、話すことの力を評価する試験で、その結果が来年度の都立高校の入試で評価に加算されます。

これに対し、都議会では立憲民主党などが「評価の公平性を保つのが困難」として、英語スピーキングテストの結果を入試の評価に加算しないとする条例案を提出。都民ファーストの会は会派として反対の方針でしたが、採決では所属議員3人が造反し波紋を呼びました。

公立中学3年生を対象とした英語スピーキングテストに関し、番組では事前にTwitterで投票を呼びかけたところ、放送時点では導入に「賛成」が13%で「反対」が64%。「どちらでもない」が23%と、反対の声が上回りました。

日本大学 文理学部 助教の大澤正彦さんは教育者として、このニュースには2つの思いがあると言います。それは「当事者の気持ち」と「テクノロジーの進化vs教育の進化」で、前者については「反対意見は多々あり、保護者や当事者の不安な気持ちや反対する気持ちには反論する余地がない」と大澤さん。

そして、入試改革に関しても「未来のためにというか、今年良くなるというより(結果も)長期的に見るため、その代わりに今年の当事者は大変な思いをするかもしれない。そこのバランスを取ることが必要。今年の受験生は特に不安なので、彼らの声を聞くことは徹底しないといけない」と話します。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは「果たしてスピーキングテストを導入するのが受験でないといけないのか」と訝しみます。というのも、茶山さん的に入試は自身の能力や才能を試す場所であると同時に、中学でどれだけ勉強に励んできたのか、その努力を試す場でもあり「英語のスピーキングは、語学の才能やバックグラウンドによって左右されてしまう」と危惧。また、「そもそもスピーキングテストに耐えうるような英語のスピーキング教育が今までなされてきたのか疑問に思う」とも。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、近年、翻訳技術の進化が著しく、より高性能な機器の誕生が予想されることから「みんなが英語を学習しないといけないということは古いんじゃないかという気もしなくもない」と英語学習の存在意義について言及。

さらに、英語スピーキングテストが学生にとってどういった位置付けなのか、そして、本来受験対象外となっていた私立や国立の中学校の生徒の受験が認められたのが9月という遅さだったことに「年度内で決めてしまっていることが問題であり、そこは少し性急と言わざるを得ない」との指摘も。

スペースに参加している視聴者からは「導入にはあまり違和感はない。それは受験生にとってプラスになればいいという考え方からで、彼らにとって今後プラスになるならそれでいいと思う」という声や、「将来的に英語スピーキングテストを導入するのは良いが、今のテストは入試に加算されるレベルじゃないと思う。ちゃんとした正解、評価基準があって初めてテストとして成立するもので、内容を見るに今はそうではなかったので、これで人生への影響が大きい入試には組み込めない」という意見など、賛否両論ありました。

◆解答方法はタブレットに録音し、音声データをフィリピンで採点

英語スピーキングテスト「ESAT-J」は都立中学校に在籍する3年生の全生徒が対象で、試験日程は11月27日(日)。運営はベネッセコーポレーションが行い、テスト方法はタブレット端末で解答音声を録音。その後、受験生約8万人の音声データをフィリピンに送り採点します。その際の組織や経営形態、雇用人数などは公表されていません。そして、その結果は来年度の都立高校入試結果に最大20点加算されます。

茶山さんは、採点基準に関して「スピーキングテストなので仕方ないが、わりと定性的。聞く人によって採点が変わる、それは公平性の観点でどうなのか」と私見を述べます。

大空さんは「今後はAIなどを使い、客観的な(採点)基準を示すことは不可能ではない気がする」とし、「ただ、それができたら良いのかと言えば、僕はあまりそう思わない」と意見。むしろ大空さんが気にかけていたのは、タブレットに向かって解答を話すことで、「英検もそうだが、(スピーキングには)生身の人間がいる」と指摘。

「(受験生が)8万人もいるからできないということかもしれないが、スピーキングは本来会話。会話のターンの中で何を話そうか考える、それがスピーキングテストの本質で、タブレットに向かって話すのはそもそもスピーキングと言えないのではないか」と訴えます。

スペース参加者からは「ようやくスピーキングテストについて広がってきたことを実感。そもそもあまりニュースになっていなかったので、そこはすごくよかった」という意見や「私的には(賛成・反対の)どちらでもないが、そもそも“使える英語”の基準はどこなのか疑問がある。また、英検など既存のシステムに組み込んで年に数回チャンスを与え、例えば英検3級は会話のテストがないが、そこに会話のテストの基準を設けて、英検3級取得を条件としたほうがまだ平等になると思う」といった意見もありました。

また、最後に大澤さんは「この議論は10年はやっていると思うが、この10年で英語のテクノロジーが発展している。改革に10年かかり、その10年で英語の必要な能力が大きく変わってしまうことにどう向き合っていくべきなのかも、併せて考えないといけない。大学のAO入試みたいな形式も積極的に入れるなど、そういうことも考えたい」と入試に対する考え方自体の変化の必要性も挙げていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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