TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、政府も注目する“メタバース”の普及についてZ世代の論客が議論しました。
◆自治体や教育現場でも普及するメタバース
インターネット上の仮想空間で、アバターを使って活動する“メタバース”。その世界市場は、2021年度は389億ドルでしたが、2030年には6,788億ドルになると推測されています。日本でも自治体や教育現場でメタバースを活用したサービスが続々と開始され、政府も研究会を設置。
東京大学では「メタバース工学部」が設立され、福岡県では引きこもりなどの若者の自立就労支援に活用中。さらに、埼玉県戸田市では「メタバース登校」も行われています。
メタバース登校とは、ゲームのような空間にアバターで参加するもので、そこで行われるオンライン授業には全国から不登校の小中学生が参加しています。これは認定NPO「カタリバ」が“新たな学習のきっかけになれば”と始めたもので、現在は埼玉県戸田市をはじめ、6の自治体と連携するなど拡大中。
実際に体験した人からは「朝、起きられるようになった」「目標を持てるようになった」という声があり、夏休み明けから実際に登校できるようになった生徒もいるということです。
かつて不登校児童だった株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは、メタバース登校について「めちゃくちゃいいと思う。(子どもの頃に)欲しかった。こういった選択肢が増えることは非常に良いこと」と評価します。
また、体験者の声にあった「朝、起きられるようになった」ということは非常に重要だと小幡さん。なぜなら、不登校児童・生徒は、生活リズムが昼夜逆転しがちで、そもそも朝が楽しくないから。「みんな学校に行く準備をし始めていることや、正直テレビで『いってらっしゃい』と言われることすら僕は辛かった。僕は(学校に)行けないから」と当時の胸中を吐露。
そうした自身の体験からも、メタバース登校の普及で朝が楽しくなるのは「良い循環になる」と歓迎。さらに、メタバース登校で成績が上がったなどの成果・実績が増えていくことで、選択肢の1つとしてメタバース登校を望む声も増えてくるであろうとし、良い事例が生まれることを期待します。
Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんも、選択肢が増えることに賛同し、「学校に通って学ぶ子もいれば、こうしたメタバース空間で学ぶ子もいて、馴染めない子にも他の選択肢が用意され、みんなが学びを受けられるようにすることが大事なので、そのきっかけのひとつになれば」と希望。さらに、「最初はメタバース上の自分と本当の自分が乖離してしまうかもしれないが、徐々に一緒になり、最終的に登校できるようになるのかなと思うとすごく良いことだと思う」とも。
自意識の部分に関して、キャスターの堀潤は「本当の自分とそうではない自分は誰もがあって当然のことで、仮想空間となると乖離の話ばかりになってしまうのは嫌」と自身の見解を示します。
メタバースを主戦場としているmicroverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんも「まさにその通りで、(仮想空間かリアルか)二項対立的な話をされることが多いが、そもそも二項ではない」と持論を述べます。
その上で、メタバース登校については「すごくいい使い方」、「こうした使い方で学校や職場に行き、そこで学び、働けるような使い方は素晴らしい」と評価し、「生きる世界が増えるということ、生きる世界が広がることがメタバースの本質」と明言。
そして、メタバースというと、VRゴーグルをつけたり、没入感の高さばかりが話題になりますが、渋谷さんはそうしたことばかりだと可能性は狭まってしまうと危惧。最新ばかりを意識するのではなく、「今のテクノロジーであれば2D、平面の世界で移動したらチャットでみんなが繋がれるぐらいがちょうどいいと思う。そうした使い方であれば、学校や職場など新しいコミュニティができるところでいろいろな活用方法がある」と語ります。
◆メタバースをより幅広い層にリーチするためには?
街頭でメタバースについて聞いてみたところ、「知らない」という若者が多かったものの、「フォートナイト」や「Minecraft」といったゲームなど、「子どもたちが日常的にやっているゲームのほとんどが、もはやメタバース」と小幡さん。メタバースという言葉を知らずともゲームを通してそうした空間を慣れ親しんでいる子どもたちもいることから「今の子どもたちはすんなりと理解する側になると思う」と所感を述べます。
こうした認知度の低さはメタバースの大きな課題のひとつですが、他にも現実空間で動くのとは違い「操作性」が難しいことや「社会性」という意味では生活内ではまだ利便性が少ないこと。
さらに、トラブルの際の責任はどうするのかといった「安全性」など課題は山積しており、特にトラブルについて慶應義塾大学法学部の大屋教授は、「想定していない法的な課題もある」と指摘。誹謗中傷などのトラブルの際、どこの国の、どの基準で、どう裁くのかまだ整備ができていないと案じます。
法的な課題に関して、渋谷さんは「この話はSNSも同じで、メタバースに限ったことではない」とし、むしろ著作権や商標、商業利用権といった権利問題を懸念。「例えば、バーチャル渋谷を作ったときに『SHIBUYA109』の看板を使っていいのか、ロゴを使っていいのか、そうしたところのほうが課題」と話します。
小幡さんは「操作性」に関して「僕は現実世界のほうが難しい。運動能力が低いので、むしろゲームのほうが楽。これは人によると思う」と実感を語ります。
メタバースの今後について渋谷さんに聞いてみると、まずはデバイスに言及。その進化には歴史上“直感性”と“情報取得量”の2つの大きなポイントがあり、ガラケーからスマホへと移行した際もそれらが革新的に飛躍しました。
その延長線上で言えば、デバイスに関しては「AR的なグラス越しに現実世界に投影された世界観というのが来るのではないか」と推察。
ビジネス面に関しても今押さえておくべきこととして“デバイスレイヤー”を挙げ、「スマホでアクセスするなら平面、動画でいい。操作性を悪くし、遅くしてまで奥行きが必要なのかという感じなので、であれば情報取得量が多く、その中に面白いコンテンツがあるという世界観を作っていくための施策が大事」と力を込めます。
最後に、Z議会を代表して渋谷さんはメタバースの普及に関して「デバイスのアップデート」、「キラーコンテンツ/アプリ構築」、「経済圏構築」の3つの提言を発表。
現状、ARグラスやVRゴーグルといったデバイスが普及しなければスマホで十分ですが、それらが進化し、アクセスが容易になれば多くの人がメタバースを体感するようになるものの「アクセスした先に何もなければ人は使わない」と渋谷さん。
そうした課題を打破するためにも、面白いゲームやコミュニケーションツールなどキラーコンテンツやアプリケーションが必須となり、その先に重要になってくるのが経済圏。「生きる選択肢を増やすという意味では、そこで経済活動をして仕事ができないといけない。アプリケーションやコンテンツの中で働き、お金が稼げるような経済圏の構築の重要」と話していました。
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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
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