10月4日の北朝鮮によるミサイル発射で発出された全国瞬時警報システム=「Jアラート」について、松野官房長官は5日、東京の島しょ部に発出したのは誤りだったと謝罪しました。
北朝鮮のミサイルの日本上空通過から一夜明けた5日、松野官房長官は会見で「Jアラートについては、システム上の不具合により注意が必要でない東京都の島しょ部の9町村に対して発令されることになった。ご心配おかけした9町村の住民にはおわび申し上げる」と述べ、誤って発信先に東京都の島しょ部を含めたことについて謝罪しました。
4日、政府は午前7時27分に大島や三宅島など、東京都内の2町7村にJアラートを発出しました。しかしそのおよそ9時間後、同日夕方の会見で松野官房長官が「東京の島しょ部はアラートの対象にする必要がなかった」と発表したのです。Jアラートが発出された三宅村の島民の1人は「放送を聞いてびっくりした。試験放送はこれまでもあったが具体的な国名が入り、テストとは違った印象だった」と当時を振り返りました。また、誤った発信だったことについてはいまだ、政府や東京都から説明を受けていないと明かしました。
政府は今回、誤って送信されたことについて「過去の訓練での送信先情報が消去されず残っていたことが原因」と説明しています。
また、東京都の小池知事が松野官房長官と寺田総務大臣に対し、Jアラートの改善に関する緊急要望を出したことが分かりました。要望書によりますと、Jアラートを速やかに改善するとともに、今後はより迅速で詳細な情報提供を求めるとしています。
<Jアラート発出はミサイル通過と“ほぼ同時” 専門家が3つの問題点を指摘>
10月4日の北朝鮮によるミサイル発射は、日本の対応のさまざまな課題を浮き彫りにしました。中でも不安が残るのが、全国瞬時警報システム=「Jアラート」です。
4日午前7時22分ごろに中距離弾道ミサイルが北朝鮮から発射され、午前7時27分に北海道と東京都の島しょ部を対象としてJアラートが発出されました。さらにその2分後となる午前7時29分、今度は青森県と東京都の島しょ部に同じ内容が流れました。しかしこの頃にはすでにミサイルは北海道・青森県の上空を通過していて、その情報はその13分後となる午前7時42分に伝えられました。さらに、東京都島しょ部への情報は誤った発信だったことが分かりました。
原因は「過去の訓練の送信先情報が残っていたため」と明らかにされました。国の緊急事態のための重要なシステムであまりにもお粗末なミスが発生し、誤った情報発信によって、多くの自治体や人々に混乱や不安をあおってしまう結果となりました。
Jアラートについては専門家からも問題点が指摘されています。イギリスの軍事情報誌で東京特派員を務める国際ジャーナリスト・高橋浩祐さんは3つの問題点を挙げています。1つ目は、アラートの対象地域が二転三転したり誤った情報を発信するなどの『不慣れな対応』、2つ目は、発射から7、8分で到達するミサイルに対して伝えるまでに5分以上の時間がかかっているという『情報発信の遅さ』、そして3つ目は、防衛省が「迎撃の必要なし」と判断したミサイルに対し、その一方で避難を呼びかけているという『情報のちぐはぐ感』です。
その上で、高橋さんは問題解決のための提案をしています。まずは、Jアラートについて「日本にミサイルが着弾する可能性がなければ、発射の情報のみを発出し、避難の呼びかけはしないこと」。そしてもう1つは「ミサイルの発射を迅速に把握するために、日本とアメリカ共同で行っているミサイル警戒用の小型衛星の打ち上げを早期に進めることが必要」と指摘します。
世界情勢が緊迫する今、実効性のある、そして抜かりのない緊急対応が求められています。スタジオでは共同通信編集員の太田昌克さんにも、今回の誤発信について、そして日本への脅威が差し迫った際の対応についての課題などについて話を聞きました。動画でご覧ください。
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