スコットランドで生理用品無償提供法が施行…一方で日本は?

2022.08.31(水)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。8月22日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、“生理用品無償提供法”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。8月22日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、“生理用品無償提供法”について深掘りしました。

◆スコットランドで世界初の生理用品無償提供法が施行

イギリスのスコットランドで8月15日、生理用品を無償で得られる権利を保護する法律「生理用品無償提供法」が施行されました。これは自治体や教育機関などで無償提供が義務付けられ、アプリで提供場所を確認することが可能。世界で初の法制化となります。

これに対し、生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは「『必要とするすべての人』に無償提供と法律で明記されている。生理を経験するあらゆる人に配慮していることを評価する」と話しています。

食文化研究家で株式会社食の会 代表取締役の長内あや愛さんは、生理は女性にとって避けられないものとあって「国として対応してもらうのは当たり前のことで、なぜ今までフォーカスされなかったのか、逆に疑問に思う」と見解を示します。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、谷口さんが強調していた“必要とするすべての人”という部分に着目。「性自認が女性ではない方で生理がある方もいるので、そうした言葉のニュアンスひとつとっても、すごく進んでいる印象」とスコットランドの政策を評価します。

一方、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは日本で生理用品の無償提供ができない理由について言及。そもそもスコットランドを含むイギリスでは非営利セクターの活動が大きく、市民社会もそれをしっかりと支えているとし、「果たして日本はそうなっているのか」と疑問を呈します。そして、「大前提として当然行政がやるべきだが、行政がやれない場合に『なぜ行政がやらないんだ』と問い詰める前に、実際にその取り組みを行っているNPOや支援団体を支援していくことが重要」と主張。

実際、スコットランドではさまざまな団体が支援しながら政府と協議。そして、市民団体もそれをしっかりと支えていたことを引き合いにし、「一部ではあるかもしれないが、残念ながら日本はそういう風潮があまりないと思う」と惜しむ大空さん。「行政だけに文句を言い、実際に支援している人々を支えないのは違う。まずはそこをやらないといけない。日本に一番足りていないのはその部分だと思う」と持論を述べます。

◆日本の女性、12人に1人が生理用品の入手に苦労

厚生労働省は今年3月、生理用品の入手に苦労したことがあるかどうかを聞いたアンケート調査を実施。

その調査結果によると、およそ12人に1人が「苦労した経験がある」と回答。年齢が若いほどその声が多く、購入・入手に苦労した理由としては「収入が少ない」(37.7%)、「自分に使えるお金が少ない」(28.7%)、「その他のことにお金を使わなければいけない」(24.2%)など、経済的な理由が多く見られました。

こうした現状に長内さんは、生理用品を無償で提供するにしても「もらいに行かないともらえないというのは変えてほしい」と望みます。なぜなら、女性のなかには生理に関して相談できる人が周囲にいない人も多く、「生理が始まる年代の人たちにとっては、もらいに行かなくても置いてあるというのが心強いと思う」とも。

現在、子どもの貧困が7人に1人の割合で存在し、そこに「生理の貧困」も深く関わってくると思われがちですが、大空さんは「貧困というところをクローズアップしすぎるのは良くない」と指摘。なぜなら、貧困の問題を持ち上げれば上げるほど、子どもたちが生理用品を取りにいきづらくなるから。

「自分は貧困の子ども」、「生理用品が買えない」と周囲から見られてしまうなどの不安から、保健室に生理用品を置いてもあまり利用されなかった事例があると言い、なかには、必要な人には物資を送るようなプッシュ型の対応をしている支援団体もあるとした上で、「頼れないというスティグマもあるということも考えないといけない」と注意を促します。

みたらしさんは、大空さんの意見に頷きつつ「孤独・孤立はある日突然降ってくるものじゃないと思う」とコメント。「日常生活のなかの、大人からしてみれば『どうってことない』と言ってしまいそうな些細なズレ、現実や周囲とのズレが徐々に積み重なって孤独や孤立に繋がっていくと思うので、そうしたところを国や自治体、NPOも含めてカバーしていくことが大切」と孤独・孤立を防ぐ手立てを提案します。

◆東京、千葉、そして政府も…日本でも広がる無償提供

内閣府による2021年7月の調査では、「生理の貧困」の取り組みを実施している自治体は全国で581あります。東京都でも2021年9月から都立高校で生理用品を無償で提供し、2022年1月には千葉県で全ての県立学校のトイレなどに設置。

また、政府も2021年6月に発表した経済財政運営の指針「骨太方針」で「生理の貧困」を初めて明記。谷口さんは「日本でも行政が主導で生理を経験するすべての人に生理用品へのアクセスを保障することを期待します」と話しています。

長内さんは“生理の貧困”に対する一連の政策を歓迎しつつ、「生理の貧困という言葉が出てきたことで注目され、一歩一歩進んでいくことは非常に良いと思うが、今後目指すところはその言葉がなくなっていくこと」と次のステップに触れます。

また、長内さんは、必要なときにすぐにアクセスできる環境整備を期待するとともに、生理に関しては性別・年代によって感覚も異なるとして、「女性も男性も含め、いろいろな年代の人にこの問題を考えてもらいたい」と呼びかけます。

今後、いかに制度化していくべきかについて、大空さんは「縦割り問題の解消」をポイントに挙げます。厚労省が対応するのか、子どもは文科省なのか、はたまたこども家庭庁がやるのか、さまざまな課題が考えられるなか、「いずれにしても縦割りのなかで行政の支援が隅々まで届かなかった側面はあるので、そこを組織論として解消していくと同時に、我々はスティグマをどうなくしていくのか考えないといけない」と主張。

みたらしさんは「とりあえずやってほしい」とまずは行動することを熱望しつつ、「どうしても生理は色をつけられやすいなか、生理のメカニズムすら理解できていない人もいて、もう少しフラットに(生理用品が)生活必需品であり、(生理は)体の出来事という捉え方をしていったほうがいい」と述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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