クラス全員で育てたヒラメ「命をいただく」授業 東京・足立区の小学校

2022.06.07(火)

10:00

 東京・足立区の小学校で行われた「命の授業」で、クラス全員で育てたヒラメを食べると結論を出した児童たちが、実際にさばいて食べる“最後の授業”が行われました。

 東京・足立区の小学校で行われた「命の授業」で、クラス全員で育てたヒラメを食べると結論を出した児童たちが、実際にさばいて食べる“最後の授業”が行われました。

 足立区立弘道小学校の6年生は2021年9月から、まだ小さかったヒラメを毎日当番を決めて餌やりや水槽の掃除などを行い、大切に育ててきました。これはヒラメの養殖体験を通して水産資源などへの関心を持ってもらう、日本財団の「海と日本プロジェクト」の一環です。

 人が生きるために必要な魚を育てる「養殖業」についても勉強してきた子どもたちでしたが、6月2日、いざヒラメを「食べるか、食べないか」を決める話し合いをすると、最初の投票では「食べる」が18票・「食べない」が7票だったのが、話し合いを進めてもう一度投票をすると15対10になって「食べる」に投票する子どもたちの数が減るなど、話し合うほど、ヒラメの「命をいただく」ことに対する子どもたちの心の葛藤が浮かび上がりました。

 話し合いの結論は「食べる」に決まりましたが、講師を務めたNPO法人・日本養殖振興会の斉藤浩一代表理事は「どちらの考え方もすごく大切。食べる方もただ食べればいいわけじゃない。食べるためには感謝が必要」と話しました。ヒラメを育ててきた子どもたちからは「考える時間があった時も、どっちがいいかずっと悩んでいた」「ずっと餌を与えていた。(海に放して)餌が自分で取れないで死んじゃうよりは、頑張って育てたから食べてあげた方がいいかなと思った」などさまざまな声が聞かれました。

 そして翌日、実際に「ヒラメを食べる」授業が行われました。日本養殖振興会の斉藤さんは「ヒラメの命に向き合う授業を行います」とした上で「(魚をさばく様子を)必ず見なさいというわけではない。つらい人はその場で目をつぶったり下を向いてください。食べるのも最後の最後までみんなの判断に委ねます。絶対食べなさいというわけではないので、食べる寸前までみんなが考えてください」と呼び掛けました。途中で涙を浮かべ、席に戻る児童もいましたが、多くの児童はヒラメがさばかれていく様子を真剣な表情で見届けました。斉藤さんは「食べられなかった人が駄目というわけではない。人間だから持つ『情』がある。だから、食べられなかったから駄目とか悪いというわけではありません」と語りかけました。

 子どもたちは一人一人が自分の気持ちと向き合い、育てたヒラメの味をかみ締めました。ヒラメを育ててきた子どもたちからは「最初は『食べない』にしようと思ったけど、育てたからには『食べる』にしました」「つらかったけど、ちゃんと育ててきたから大切に食べてあげようと思った」「おいしかったです」「命の大切さを知れて、授業をやってよかった」などといった意見もありました。

 クラス全員に大切に育てられたヒラメの命は、子どもたちの心にも大きな栄養を与えてくれたようです。

 

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