教員免許更新制の廃止で教員の負担は軽減されるのか? 質は担保されるのか?

2022.06.01(水)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“教員免許更新制の廃止”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“教員免許更新制の廃止”について深掘りしました。

◆教員免許更新制が廃止になった背景とは?

5月11日、10年ごとに免許更新が必要な「教員免許更新制」を廃止し、新たな研修制度を設ける改正法が参院本会議で可決・成立しました。

この教員免許更新制は2009年4月より導入され、その背景には“指導力不足の教員”がいるとの批判があり、教員に必要な資質能力保持のため最新の知識や指導方法の取得を目的として開始。国内外の教育施策やいじめ・不登校への対応、英語教育など30時間以上の講習が必要となり、期間は夏休み中。3万円の費用は自己負担となっていました。

教員免許更新制廃止に対し、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんは「教員は夏休み期間が長いと言われているが、日々の労働時間も長いので、そうした負担や費用負担が解消されるのはいいこと」と肯定的な意見を示します。

しかし、デジタル化が進むなど教員側も多岐に渡る能力が問われ、何かしらの研修は必要という声もあります。

一方、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「これは単純に教育業界の政治力の問題だと思う」と主張。というのも、医者や弁護士にはこうした更新制度はなく、その理由を「医師会と弁護士会、日弁連(日本弁護士連合会)の政治力が強いから」と大空さんは訴えます。他方、教員・学校職員による労働組合の連合体「日教組(日本教職員組合)」は、大空さん曰くアンチ自民党的で「だからこそ自民党は臆することなく、この更新制度ができた」と言います。

そうしたなかで教員免許更新制が廃止されるのは、現場の教員の声がSNSにより可視化されるようになり、「日教組の政治力が上がったというより、教育業界全体の政治力が上がり、無視することができなくなってきたことがひとつの要因」と推察。

総じて、「今回の件では教員不足が教員の質の低下を招くという大前提が抜け落ちていたというのが本質だが、そこを変えていこうという声が現実問題になったことはいいこと」と結果的には良い方向に転んだことを評価。この意見にはキャスターの堀潤も賛同します。

◆教員の負担を軽減するには…Z世代からの提案

文科省では教員の声をアンケート調査という形で収集していますが、2021年の調査では「教員免許更新制」に関し約60%が「不満・やや不満」と回答。そのなかには「現実とかけ離れ、実践的でない」、「教育委員会の研修と重複する」、「免許更新制に意義を感じない」などの声がありました。

また、多忙な教員の働き方改革に逆行していることなどもあり、現実的には教員採用試験の倍率は下落。人材不足が顕著となっています。

一方で、子どもを持つ親はどう思っているのか。街頭の声を聞いてみると、「子どもへの細かなケアが疎かになるのであれば、わざわざ講習をやらなくていい。教員の負担はなるべく軽減し、もっと子どもたちに目を向けてもらいたい」(42歳 女性)、「講習よりも先生間での意見交換の場や時間を取らずに勉強できる場があればいいのではないか」(50歳 女性)、「預ける身としては教員免許更新制があった方が安心。以前、教員が逮捕されたことがあったが、そういうことがなくなればいい」(49歳 女性)、「教員免許更新制が廃止され、ブランクがある方が復帰するとなると、今の教育現場がわかるのか不安」(33歳 女性)といった意見がありました。

また、気になるのは新たな研修制度ですが、その中身は「ICT(情報通信技術)やデータの利活用」、「障害のある児童生徒への対応」、「外国人の児童生徒への対応」などとなっており、さらには教員の負担を減らすべく、オンライン研修の増加、研修後の報告書を簡略化するということです。

これにタレントで起業家の加藤ジーナさんは、これまで10年に一度だった研修がどれぐらいのスパンになるのか案じていましたが、阿部さんによると、そうした具体的な制度はこれから議論されるとか。

さらに、阿部さんはこの解決策に対し「本当に教員の負担は解決されるのか」と疑問視。教員が学校にいる時間は「教員免許更新制」導入前の2007年が11時間12分で、導入後の2016年は11時間54分と42分増。しかも、これはあくまで学校にいる時間で、持ち帰って仕事をしている教員も大勢おり、こうした状況が本当に改善されるのか懸念します。

そして、「本質的な議論はここではなく、先生は目の前の生徒や保護者とどう向き合うのか、それがニーズとして求められていると思う」と教員の本懐を力説。

教員が多忙であることはかねてから問題視されていますが、ここで堀は「少子化なのに先生の負担が重たくなるというのはちょっと不思議」と疑問をこぼすと、大空さんが「それは教える内容が増えているから」と回答。教科書は年々厚くなり、以前に比べ小学生のランドセルも重くなっているという研究結果があるそう。

そうしたなかで、大空さんは本当に教員の負担を軽減させたいのであれば「部活動をやめたらいい」と指摘。実際、教員のなかにもそうした声はあるそうですが、その一方で子どもたちからは部活動は大事という声も多数。そこで大空さんは「今、教員がやっている業務の一部を外部に委託、アウトソーシングしていけばいい。それは今までできていなかったことなので、やらなくてはいけない」と提案します。

また、今回の改正では講習を受けずに失効した教員免許の復活も認められていますが、大空さんは「そこが一番の問題。やるべきではない」と否定。なぜなら、真面目に実費を払って更新してきた人がいるからで「不公平を生むのは制度としてよろしくない。失効免許のあり方についてはもう一度議論する必要がある」と持論を述べます。

最後に、時折小中学校で教鞭を執ることがあるという堀からは「(学校側も)もっと声をかけてくれたらいいのにと思ったりもする」という声が。そして、「空いている時間に関われる地域の大人もたくさんいると思う。そういう人たちが先生方と一緒になって教育をサポートできるような日本の教育であってほしい」と望んでいました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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