次世代エネルギーとして注目の「核融合発電」を専門家が解説

2022.03.28(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、量子科学技術研究開発機構の栗原研一さんをゲストに迎え、研究開発が進んでいる“核融合発電”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、量子科学技術研究開発機構の栗原研一さんをゲストに迎え、研究開発が進んでいる“核融合発電”について深掘りしました。

◆世界の電気の未来を担う次世代エネルギー「核融合発電」

現状、日本の発電方法は大きく4つあり、なかでも最も発電量が多いのは「火力」でその割合は76.3%。メリットは安定供給できることですが、温室効果ガスを排出してしまうデメリットがあります。次いで「太陽光」、「水力」と続き、前者は場所を選ばないものの天候に左右され、後者は変換効率が高いものの場所を選ぶという特徴があり、4つ目が「原子力」。これは発電量が多いという強みがある一方で、放射性物質の処理が必要となります。

どれも一長一短あるなか、注目されているのが次世代エネルギー「核融合発電」。現在、その実現に向けた国際的なプロジェクト「ITER」が進行中で、そこには日本・ヨーロッパ・アメリカ・ロシア・韓国・中国・インドが参画。核融合実験炉「ITER」を共同製作しており、日本では茨城県の那珂研究所でITERより先端的な研究を行う実験装置「JT-60SA」を製作しています。

核融合の研究は約40年前に世界中で本格化したといいますが、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、40年も研究しているにも関わらず、あまり実用化に至っていないその原因を疑問視。これに栗原さんは「それがまさに核融合発電の難しさ」と回答。

核融合は、装置の規模が小さいとエネルギーが取り出しにくく、大きくなればなるほど取り出しやすい傾向があるため、「小さな規模から徐々にスタートしていたので、なかなか性能が上がってこなかった」と栗原さん。対して大空さんは、これまで国が多くの投資をしてきているものの、欧米に比べれば足りなかった部分があると指摘し、「これは成長戦略・成長産業になると思うので、しっかり投資し、早い段階での実用化を目指してほしい。これは官民で研究していく問題」と期待します。

◆原子力に比べ格段に安全だが…核融合発電の大きな課題

では「原子力発電」と「核融合発電」の違いは何か。それは原子力発電が“核分裂”を使用し、資源のウランに中性子をぶつけ、分裂するときのエネルギーを使うのに対し、核融合発電は、重水素と三重水素をぶつけて融合するときに出るエネルギーを使います。

そしてメリットとしては、日本はウランを海外から輸入していますが、核融合発電の資源である重水素と三重水素は海水から抽出可能。また、放射性物質の処理も核分裂で使用すると約10万年かかる一方で、核融合だと約100年で済むといいます。

さらに栗原さんは「ポイントは、ウランは主にブレーキを使って制御する“連鎖反応”が中心なのに対し、核融合はアクセルで制御する。制御の仕方に大きな違いがある」と解説します。

また、「高レベル放射性廃棄物が出てくるウランに対し、核融合の燃料は無害なヘリウムなので、燃料廃棄物的にも無害」、さらには「核融合でも中性子が出てくるが、これが炉壁に当たると“コバルト60”という放射性物質を作り、このコバルト60は半減期が約5年。100年ぐらい放置すると約100万分の1に下がるため、多くのものは一般物に戻る」と核融合の安全性を力説。

ここで臨床心理士のみたらし加奈さんからは新たな問題提起が。「核融合が広がった際、那珂研究所以外にどこに施設を作るのか。核融合と名前がつくと、いろいろと憶測を呼び、施設の近隣住民が嫌がるのではないか」と疑問を呈します。

これに栗原さんは「核融合は非常に安全性が高いことがひとつの特徴」と明言しつつ、それでも「立地の問題は、まさにこれからのテーマ」と返答。「各国でどこに作るかという話が今後スタートしていくと思う。そういう意味では、場所についてもこれからみなさんの意見を伺いながら決めていくことになると思う」と展望を語ります。

核融合発電の発電量は燃料1グラムで石油8トン分(原発は1.6トン分)。さらに安全性に関しては、核融合は単独反応ということで不測の事態が起きてもスイッチを切ればすぐに停止可能。しかし、デメリットとしては、設備のコストが高額になります。

また、「イータージャパン」の公式Twitterで、人工知能(AI)開発のDeepMindが核融合炉の磁気制御に成功し、ほぼ思い通りのプラズマの制御が可能になったと発信しているように、今後はAIとの連携も想定されていますが、そのあたりのリスクはどうなのか。栗原さんに聞いてみると、核融合の制御にはさまざまな手段があり、それが複雑に絡むため、AIによって制御方法を最適化することは「将来的にも有望」と見解を示します。

◆核融合発電の今後…2050年には発電できる原型炉を建設予定

現在、実験炉ITERの建設進捗度は2021年10月末で約75%。2035年にも本格的に運用する予定で、発電ができる原型炉も2050年頃に建設予定。一方、茨城県にあるJT-60SA実験装置は、今年の秋にも本格的に稼働予定だということです。

ここで大空さんは「もし何か問題があったときに停止できるとはいえ、例えば電磁力やプラズマの熱で炉のなかの壁を壊すなど、それで炉が稼働できなくなるとことはあり得ると思う」と改めて核融合の安全性を危惧。

これに栗原さんは「炉が溶けてしまうという話があったが、炉のなかは1億度のプラズマで、密度は空気の30万分の1よりも小さいので、熱という意味では壁の金属を溶かすようなことは絶対にない」とその安全性を論理的に解説。さらには、「核融合の稼働については、一度確実にできれば止まることはほとんどない」とも。

最後に、栗原さんは「2050年頃に原型炉という発電装置の運用を目指しているが、そこで社会の中心として活躍されるのがまさにZ世代。その方々にぜひ核融合発電というものがあることを知っていただけたら」と核融合発電時代の鍵となるZ世代に向けて、思いを語りました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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