東京都は伝統的な踊りなどを登録する指定無形民俗文化財として、室町時代に始まったとされる足立区の行事「じんがんなわ」を指定しました。550年もの間にわたって受け継がれてきた伝統の祭りを取材しました。
イチョウの木に高く掲げられたのは、わらで編み上げられた大きなヘビです。この映像は2009年1月に足立区の大乗院で行われた無病息災を願う祭りの様子です。
室町時代から続くという無病息災を願う「じんがんなわ」では、なぜ大きなヘビを編むのでしょうか。言い伝えには『室町時代の応仁の乱の頃、大乗院の薬師堂が火事で焼けました。火事のため、すみ着いていた白ヘビがいなくなってから、この地域は疫病と飢饉(ききん)がはびこりました。そこで人々はこれは白ヘビがいなくなったからだと考え、白ヘビの代わりにわらの大蛇を作り、祈願することにした』(足立区地域文化課作成)とされています。
村で暮らす農家が無病息災を祈願することから始まった祭りの歴史は550年以上にわたります。その長きにわたる伝統の継承が評価され、2022年3月、祭りは東京都の指定無形民俗文化財に指定されました。
今回、保存会の顧問を務める増田久助さんにお話を伺いました。増田さんは「大蛇は昔のまま、わらと紙だけで作り上げている。今でもビニールも使わず作り、昔そのままの造りで、伝統は変えていない」と語り、祭りで使われるわらで編まれたヘビはこだわりとして、作り方を変えず今に継承されています。
伝統をつなぐ一方で、550年続いた祭りも高齢化と“若者離れ”が進む現状がありました。94歳になるという増田さんは「みんな大体70代いっぱいぐらいまで続けている。今の時代を生きる人たちの中には、あんなのは迷信だと言う人もいる。そういう家庭は参加しなくなってきている」と話します。街では都市化の影響で農家を廃業する家が出てきて、これまでのように祈願を始めた限られた農家だけで代々受け継ぐことも難しくなりました。
祭りでは10年ほど前から祈願を始めた家庭だけではなく、近隣住民や子どもたちも参加できるようにしました。また、これまで農家の休みに合わせて1月7日に開いていたものを、少しでも多くの人が足を運びやすいようにと、開催日を「成人の日」に変更しました。
550年の伝統を変わらず受け継ぎながらも今の時代に合った形へと変化する祭りについて、増田さんは「名誉ある歴史のある行事で、これは何年も続けていった方がいいのではないかと痛感している。最初に祭りを始めた人々が頭をひねって作り上げた大蛇だから、それを守って作り続けていきたい」と、未来を見据えています。





