コロナ変異株の名称をギリシャ文字に…「社会的スティグマの防止」とは

2021.06.29(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月21日(月)放送の「フラトピ!」では、新型コロナウイルスの変異株“デルタ株”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月21日(月)放送の「フラトピ!」では、新型コロナウイルスの変異株“デルタ株”について深掘りしました。

◆病名による偏見や風評被害を防ぐために

「デルタ株」とは、WHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスの変異株に対し、ギリシャ文字を使った名称へ変更しようと提唱したものの1つ。最初にインドで確認されたデルタ株以外にも、イギリスで見つかった「アルファ株」。南アフリカで確認された「ベータ株」、ブラジルで確認された「ガンマ株」があります。その他にも「イプシロン」、「ゼータ株」、「ラムダ株」などもあり、これらは特定の国への偏見や風評被害を回避するために命名されました。

では、メディアではどう扱われているのか、「東京新聞」整理部 整理記者の大島晃平さんに聞いてみると、同紙では基本的にWHOが提唱する方針に則って表記していると説明。ただ、突然デルタやアルファと表記しても読者がわからないため、記事の冒頭で「インドで最初に確認されたデルタ株は……」といった具合に補足や注釈をしていると言います。

一方、初代ユーグレナCFO(最高未来責任者)の小澤杏子さんは、病名に地名などを入れることで風評被害などが起こってしまうことは理解しつつも、「急にアルファ、ベータと言われても区別できないところもあるのではないか。正直、それ以外に(良い呼び名は)なかったのかなと思ってしまう」と見解を示します。

WHOのこうした動きは今に始まったことではなく、2015年に「新しい感染症に関する提言」で病名について言及。避けるべき用語として「地理的な場所」や「人名」、「動物や食品の種」などを挙げています。

これに対し大島さんは、6年前から啓蒙活動をしていたにも関わらず、昨年はアメリカのトランプ前大統領がコロナを「チャイナウイルス」と呼ぶなど「(提言が)そこまで浸透していない」と語る一方で、コロナは早い段階から“COVID-19”という名前に統一しようとしていたことは評価。

実際に名称による風評被害が起きた例を見てみると、豚が起源のウイルスが人に感染した「豚インフルエンザ」のときには、農業・食品団体が風評被害を懸念し「インフルエンザA型」とその名称が変更に。その他にも「日本脳炎」や「スペイン風邪」といった国名がついたものもあります。

◆ユニセフ・WHOも提唱、社会的スティグマの防止

病名による風評被害や差別が起こらないようにするべく、ユニセフやWHOでは「“社会的スティグマ”の防止」を提唱しています。社会的スティグマとは、個人や集団をある特定の病気と否定的に関連付けること。特定の人々が疾患と直感的に結びつけられ、レッテルを貼られたり、固定観念を持たれたり、差別や迫害を受けるなど社会的地位が損なわれてしまうことを指します。

この社会的スティグマを引き起こさないようにするためには、どうすべきか。キャスターの堀潤がその術を尋ねると、小澤さんは「これは海外に限ったことではなく、日本国内でも水俣病など(地域の)名前が使われているのはよくない」と指摘しつつ、名前をアルファやベータなどではなく、世界全体で考えていくべきと示唆。例えば、「レベル3の○○」と一目で危険レベルがわかるようにするなど、「いろいろな種類があるのはわかるが、知識のない人からすれば、アルファだろうがベータだろうが関係ない。そこの使い分けができるといいのでは」と希望します。

大島さんも「ビジュアルで伝えられるのが一番いい」と賛同。昨年、兵庫県で新型コロナが感染拡大した際に、同県の知事が「感染源は大阪」と発言したことを挙げ、「感染症は人のせいにされやすいと思った。だからこそ(病名に)地名などを付けないことが大事」と主張。

最後にキャスターの田中陽南は「地名よりも、私は症状が気になるので、症状を名前に付けるとわかりやすくて良いと思う。この番組でもデルタ、アルファなどを使いながら、症状も伝えていけたら」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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