TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月19日(水)放送の「フラトピ!」では、キャスターの田中陽南が“教育界の課題”をテーマに取材しました。
◆文科省の狙いとは裏腹の「#教師のバトン」
昨今、教育を巡りさまざまな課題が浮き彫りになっていますが、今回は2つのテーマに注目。1つは、SNS上で話題になっている「#教師のバトン」です。
これは“教師不足”が社会問題となるなか、文部科学省が今年3月に「教職の魅力を広めよう」と始めたプロジェクトで、このハッシュタグ「#教師のバトン」とともにSNSで教師の魅力などポジティブな情報を発信していこうというもの。しかし、実際にはネガティブな投稿も散見。多忙な教員たちによる苦悩や不満などのツイートが溢れ、文科省の狙いとは真逆の事態を招いています。
なぜ、裏目に出てしまったのか。30代の現役教師に話を聞いてみると「教員という仕事に魅力がないことはない」と言いつつ、「仕事時間が長く、仕事量も多い。総合的に考えると、現状はしんどさしか残らない。不満のほうが多い」と悲痛な心情を吐露。
この教師によると、不満の要因は「労働環境」にあると言い、例えば労働時間は午前8時25分~午後5時が定時となっているものの、定時の時間内で「業務は全然収まらない」と現状を語ります。授業の後には部活があり、それが終わるのが午後6時頃。そこから翌日の準備や別の仕事を始めるため、帰宅時間は午後8~9時になってしまうことがざら。それでいて残業代が出ることもなく、そんな自身の職場を「どブラックです。真っ黒」と表現します。
では、その労働環境がなぜ改善されないのか。この教師は「残業して遅くまで学校に残っている人ほど、すごく一生懸命頑張って仕事していて偉いと。(生徒に対し)どれだけ自己犠牲を払ったかが評価に繋がっているから」と話します。
そして、「#教師のバトン」に関しても、「文科省の人たちは一生懸命考えてくださったと思うが、現場の声を聞かずに考えているから1人で相撲をとっている感じ」との見解を示していました。
◆年々増加する不登校…それ自体は悪いことではない!?
2つ目の課題は「不登校」。不登校の子どもに向けた情報発信をする「不登校新聞」編集長の石井志昴さんに話を伺ってみると、「5月は不登校が増えやすい時期の1つと言われている。4月に環境が変わって、その環境に馴染めない子が疲れ果て、徐々に体調不良や登校しぶりが始まる時期」と解説します。
また、不登校は7年連続で増加しており、しかも2019年度の小学生の不登校は53,350人。さらに中学生の不登校は127,922人で過去最多を更新。ただ、石井さんは「不登校自体は悪いことではない」と明言し、「不登校で苦しむ人をなくしたい」と自身の願いを語ります。
2017年には、学校での学習機会を失った子どもに登校を強制せず、それぞれにあった学習環境を保障する「教育機会確保法」が施行。しかし、この法律も「#教師のバトン」同様、教育現場と文科省との間に温度差があるといい、「以前は学校に戻すことだけが全ての指導だったが、不登校でも教育の機会が確保されるようにと変わった。しかし、これが学校現場にも親にも伝わっておらず、国は“学校は絶対じゃない”としながら先生たちは学校を絶対視する。そのジレンマに子どもたち自身が苦しんでいる」と石井さん。改善への道のりは「まだまだ厳しい」と語ります。
◆今や選択肢増、学校に行かなくても生きていける!
今回、取材を行った田中は、「現場の声が届きにくい環境にあると感じた。政府も、打ち出しているものはすごくいいんだけど、それがなかなか届かない。宣伝と現場の声を吸い上げる方法がうまく噛み合っていない」と実感を述べます。
そんな現場と政府の“ズレ”に対し、作家で起業家の小幡和輝さんは「教育も各自治体、市町村単位でもう少しフレキシブルに変えられるようにしたほうがいい。日本中、全てを文科省だけで見るのは無理」と話します。そして、父親が教師であると明かし「(父親が)“めちゃくちゃ働いているな”というのは子どもながらに思っていた。家に帰ってもずっと作業していた」と回顧。その上で「先生に対する負担が重過ぎることは昔から変わっていない」と危惧します。
そんな小幡さんも過去には約10年間不登校でした。当時は親とかなり衝突があったそうですが、「自分のことを認めてくれて、好きにしたらいいとなって、そこからすごく仲良くなった」と振り返ります。
不登校は年々増加傾向となっており、その理由について、小幡さんは「子どもたちの価値観などが多様になってきているのが1つある」と推察。さらには「ただ、今はポジティブな意味の不登校が増えている」と主張します。それは、オンライン学習や小幡さんも通っていたというフリースクールなど、学校以外の選択肢が増えているから。
「不登校新聞」の石井編集長が言っていたように、小幡さんも「不登校で苦しむ人がなくなるのが大事。不登校を減らす、失くすより、なった後にどうするかが重要」と強調します。小幡さん自身、かねてから不登校を肯定し、どうするのかを考える「#不登校は不幸じゃない」というプロジェクトを推進。不登校を経験した人と今悩んでいる人が話せる場を設けたり、不登校を正しく理解してもらうべくハッシュタグでメッセージを共有したり、その輪は「徐々に広がってきている」と手応えを語ります。
そして、最後に不登校の子どもたちやその親御さん、さらには先生たちに向け、小幡さんは「学校は行かなくて“も”いい」とメッセージを送ります。「学校を否定するわけではなく、“行かなくてもいい”という選択肢がある。学校の授業や友達を作るなどの役割はすごく大事だが、特に今の時代は学校じゃなくてもできる」とその真意を語ります。そして、「学校という枠に拘らなくても生きていけることを伝えていきたい」と述べていました。
※この番組の記事一覧を見る
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね