とにかく長寿命、驚異の「原子力電池」とは?

2021.04.29(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」。3月4日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」では、化学講師の坂田薫さんが“原子力電池”について述べました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」。3月4日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」では、化学講師の坂田薫さんが“原子力電池”について述べました。

◆火星探査車の動力源…100年使える原子力電池

NASA(アメリカ航空宇宙局)は、火星探査車「パーシビアランス」が火星着陸の際に撮影した映像と史上初めて録音した火星の風の音を公開。計画の技術主任は、この映像について「何度見ても鳥肌が立つ、ただただ素晴らしい」とコメントしました。

この火星探査車は今後2年以上に渡ってさまざまなミッションに臨みます。その動力になっているのが、放射性物質を使った「原子力電池」。そして、それに利用されているのが「放射性同位体」です。

例えば、炭素(元素記号:C)には、重さを表す数値が12、13、14のものがあるそうで、坂田さんは「このように、同じ元素で重さが異なるものが同位体」と解説。さらに、その中でも重さ14のものは不安定で放射線を出しながら壊れていくそうで、それを「放射性同位体」と言います。そして、この放射性同位体が出す放射線(β線)のエネルギーを電気エネルギーに変える装置が原子力電池だと解説。

原子力電池の特徴を一言で言うと、どんな放射性同位体を使うかで変わるものの「とにかく長寿命」。寿命を表す1つの指標を「半減期」と言い、これは本来あった放射性同位体が半分になるまでの時間のことで、火星探査車の原子力電池に使われている「プルトニウム238」の半減期は約88年。そして、「炭素14」の半減期は約5,730年だそう。

◆日本だからこそできることがある

今、実用化に向けて研究されている原子力電池に「ダイヤモンド電池」があり、これは半導体に人工ダイヤモンドが使われています。ただ、その人工ダイヤモンドはかなり純度の高いものが求められ、それを実現する技術が日本オリジナル。これについて坂田さんは「これから世界をリードしていける可能性のある技術」と太鼓判を押します。

さらに、ダイヤモンド電池は「炭素14」や「ニッケル63」を使った研究が進んでいるそうで、なかでも坂田さんが注目しているのが「炭素14」を使ったもの。というのも、イギリスやアメリカの企業や大学が研究を進めているのは核廃棄物の「炭素14」を使って電池を作るというもので、これが実用化されると核廃棄物を利用することが可能に。しかし、「炭素14」の出力は非常に小さく、ダイヤモンド電池はコストがかかるといった課題を抱えています。

まとめとして、坂田さんは「日本だからこそできることがある」と主張。彼女は広島出身で過去には“原子力”にはネガティブなイメージがあったそうですが、今は化学を学び、「原子力も良いか悪いかではなく、あくまで人間が作り出したたくさんの技術のなかの1つ」と考えるようになったとか。

さらには、「どんな技術であっても人間の手でコントロールできる範囲で、環境に配慮し、人間や動物が幸せになるために使う、それは原子力も例外ではない」とも。特に日本は原爆と原発事故の両方を経験している唯一の国であり、「原子力の怖さを知っているからこそ発信できる言葉やアイデア、技術があると信じている」と声を大にします。

株式会社キャスター取締役COOの石倉秀明さんは、今後、電池の開発は世界的な競争になると示唆し、「日本にチャンスがあったとしても“原子力”という言葉が入ることで議論が進まなくなるのは嫌。そこはちゃんと分けて議論し、新しいチャンスを掴めるといい」と言います。また、キャスターの宮瀬茉祐子も、原子力を含め、正しい知識を身に付ける重要性を訴えていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00(※番組終了)
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

 

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