日本生まれのマジック「手妻」 若き伝統芸能の継承者に密着!

2021.03.25(木)

10:00

 日本独自のマジック「手妻(てづま)」は「手を稲妻のように素早く動かす」ことが語源で、江戸時代にはすでにあったという“日本独自のマジック”です。この「手妻」の魅力を今に伝える若手の男性手妻師に密着しました。

 日本独自のマジック「手妻(てづま)」は「手を稲妻のように素早く動かす」ことが語源で、江戸時代にはすでにあったという“日本独自のマジック”です。この「手妻」の魅力を今に伝える若手の男性手妻師に密着しました。

 和の所作や舞踊の要素を取り入れた伝統芸「手妻」は日本で独自に発展したマジックで、国の無形文化財にも指定されています。歴史はとても古く、江戸時代には4代将軍・徳川家綱に披露された記録も残っています。そんな「手妻」継承者の1人、藤山大樹さん(33)は2019年、文化庁芸術祭で日本マジック界歴代最年少で「新人賞」を受賞し、過去にはマジック界のオリンピック「FISM」でアジアチャンピオンにも輝いています。

 藤山さんが伝統芸「手妻」に出合ったきっかけは、高校生の時にマジックに興味を持ち、後の師匠となる手妻の第一人者、藤山新太郎さんの講演会に客として行ったことだといいます。そして、大学の卒業とともに新太郎師匠に正式に入門し、修行を積みました。藤山さんは師匠について「一言で言えば厳しい人。外向けと内向けの顔は明らかに区別されていた。しつけは厳しかった」と話します。決して甘くない芸の道であるだけに、師匠の指導は厳しいものでした。しかし藤山さんは「辞めたいと思ったことはなかった。芸だけでなく、人との付き合い方やプロのマジシャンとしてどうやって仕事を取りに行くのか。お客さんとどうやって話をするのか。いろいろなものを教えてくれる先生でした」と当時を振り返り、師匠には手妻だけでなく生きる術まで学ばせてもらったと話します。修行を続けていくうちに手妻師として生きていくことを決めた藤山さんは手妻の魅力について「もちろん不思議であることは大事だが、そこに文化があるところ」と話します。着物を装い、道具や所作など日本の伝統に通じた「手妻」には、単純に見える演目にも奥深いストーリーが隠されています。

 藤山さんには手妻の継承者として10年の歳月をかけて作り上げた演目があります。そのお披露目の場となったのが、東京・大田区民プラザで行われた「True Act2021」です。会場は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、アルコール消毒や検温、座席もソーシャルディスタンスが確保されました。このステージは新型コロナの拡大で公演中止が続いていた藤山さんにとって、およそ半年ぶりの舞台となりました。出番前の藤山さんからはマスク越しにも緊張感が伝わってきます。そして、華やかなステージは無事終了しました。終演後、藤山さんの手妻を見た観客からは「マジックは海外から来たイメージがあったので、日本の手妻があるというのはびっくりした」「はかまとか普段見慣れない衣装で、演出もきれいだなと思って見ていました」などと感嘆の声が聞かれました。

 舞台を終えた藤山さんは伝統芸・手妻の将来のビジョンについて「伝統は守るだけでは良さが伝わらない。伝統芸能ってちょっと古いよねと思われがちなので、そうではなく、時代とともに一緒に進むことで伝統を前に前に進めたい」と意気込みます。

 藤山さんが吹かせる新しい風が、伝統芸・手妻に新たな可能性を生み出しそうです。

 

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