受賞しなくてもスゴい! ノーベル賞候補の研究“結晶スポンジ”とは?

2020.11.03(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。10月8日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、化学講師の坂田薫さんがノーベル賞候補の研究“藤田誠博士の結晶スポンジ”を紹介しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。10月8日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、化学講師の坂田薫さんがノーベル賞候補の研究“藤田誠博士の結晶スポンジ”を紹介しました。

◆新薬の開発で最も重要な工程とは?

スウェーデン王立科学アカデミーは、今年のノーベル化学賞をゲノム編集技術の開発に貢献したアメリカとフランスの女性研究者2人に贈ると発表。今回は残念ながら日本人の受賞はなりませんでしたが、この日は坂田さんがノーベル化学賞候補として挙がっていた日本の研究を紹介します。

坂田さんによると、新薬を開発する研究において最も重要な工程は「その成分の構造を決めること」。例えば、世の中には右手と左手のような関係にある物質があり、それは酷似していて区別するのが難しいと坂田さん。ただ、両手と同じく立体構造は違うため重なりませんが、こういう物質の場合、一方だけが医薬品としての機能を持っていることがあるそうで、「どちらの構造かを知るのは非常に重要なこと」と言います。

しかし、研究者はその構造を肉眼で捉えることはできないため、さまざまなデータを集め、構造を予想・決定するのですが、「そこに最大の時間と労力を割く」と説明。

◆実はスゴい! 藤田誠博士の「結晶スポンジ」

そんな構造を決める、信頼できる手段の1つが「X線解析」。これはX線を照射すると物質の構造がかなり明確にわかるものの、全てが解析可能なわけではなく、「結晶であること」が条件

結晶とは「粒子が規則正しく並んだ固体」ですが、X線解析をする場合はただ綺麗に並んでいればいいわけではなく、「みんな同じ方向を向いて並んでいなければならない」と坂田さん。それだけにX線解析はハードルが高く、自然界から抽出したものは微量だったり、結晶にできなかったり、できたとしても数年かかることもあったりとかなり困難。それだけに「X線解析の100年問題」と言われていたそうですが、それを解決する技術が藤田誠博士の研究から生まれた「結晶スポンジ」。

◆ノーベル賞級の研究は発見までのドラマも面白い!

坂田さん曰く、結晶スポンジは「イメージ的にはジャングルジムみたいに規則正しい空間を持っている物質」で、そのなかに結晶にできない物質を流し込むと同じ方向を向いて取り込まれると解説。

この結晶スポンジの登場によって、今まで必要だった1,000分の1の量でX線解析ができるようになり、発表後数年でさまざまな分野でその能力を発揮。例えば、保存中に分解されるビールの苦味成分はこれまで未解明でしたが、結晶スポンジ法を使うことでそのうちの13種類が構造まで明らかに。その他にも医薬品や農薬、化学捜査などの分野にも波及し、現状100種類以上の分子が明確になり、直接新薬や新素材に関わるものも見つかっています。

最後に坂田さんは、「直接触れない技術にも関心を持ってみよう!」と提言。ノーベル賞級の研究は難しくてよくわからないものの、「個人的には研究の中身を理解する必要はないと思っている」と言います。むしろ、その研究・技術によって日々の生活がどう変わるのかを知ったり、発見までのドラマを知ったりするだけでも楽しめると助言。さらには研究者のインタビューには人生の教訓になるような言葉が入っていたりすることもあるだけに、「どういった形でもいいから興味を持つことで、日本の研究開発が盛り上がっていく力になるんじゃないか」と期待していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

 

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