TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。11月19日(火)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、矢野経済研究 社長の水越孝さんが“ソフトバンクグループの実情”について見解を述べました。

◆“GAFA”に対してシナジーを
経営統合で基本合意した、ヤフーを展開するZホールディングスの川邊健太郎社長とLINEの出澤剛社長が18日、記者会見を行いました。川邊氏は「経営統合を行い、その下でヤフーとLINEが兄弟会社になる。考え方は対等の経営統合だ」と述べ、“GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)”と呼ばれる世界の巨大ネット企業に対し、第三極として「シナジーを作っていきたい」と抱負を語りました。
水越さんは、「少し前に、ソフトバンクグループが大きな赤字出したことがわかり、孫(正義)さんの投資家としての目利き力が問われ、ソフトバンクグループの財務は“大丈夫なのか”という懸念が広がっていた。それを今回のニュースが、一発でひっくり返した」と言います。また、孫さんについて「やはり投資家、実業家としての凄味を感じる」とも。そして、この日はそのソフトバンクグループの赤字部分に焦点を当て、言及します。
ソフトバンクグループは、中間決算で約4兆6,500億円の売上高を記録しつつも156億円の赤字。グループ会社のなかで最も大きな赤字を出したのがファンドで、その額5,726億円。実現益は348億円で、未実現損失が5,379億円でした。
この“未実現損失”、その反対の“未実現利益”とは何なのか。水越さんによると、今回はそもそもWeWorkという未上場会社の上場を取りやめ、その企業価値が下がったそうで、「今は赤字でも将来確実に高収益があるとするならば、その分も資産に組み込む。それが未実現利益」と解説。
しかも、未上場会社の価格は創業者と投資家に決定権があり、「未実現利益を高くもっていきたいから、実力よりも高くなりがち」と水越さん。さらには、そこにファンドのお金を投資し、赤字であっても将来利益が出るのであれば大きな価値だと言えると補足。今回の内情としては、「未上場のWeWorkの価値が事業性がないと懸念され、5分の1の評価損を出した」と水越さんは言います。
◆ソフトバンクグループの懸念点とは?
総じて、水越さんは3つのポイントを指摘。1つは「未実現利益は危ういもの」ということ。2つ目は、ソフトバンクグループのファンドが出資している会社の状況は、ファンドの出資者でないとわからないこと。そのため「ソフトバンググループの株式に投資をしている人にはブラックボックス」と水越さん。3つ目は「公共のインフラのような事業をしているソフトバンクがファンドの影響を受けることが好ましいことなのか」と疑問を呈します。
水越さんは、「反省すべき点は反省しつつも萎縮はしないでほしい」と願望を述べます。そして、「10兆円のファンドを切り盛りできるのは世界で孫さんしかいない」と言いつつ、「ただ、一面的な危うさを孕んでいることは承知しておく必要がある」と話していました。
立命館大学准教授で社会学者の富永京子さんは、インターネットは実は中央集権的で、個人情報が特定の企業に保有され、その経営も経営者と資本家に独占されている状況に「かつて夢見ていた、自由で平等なインターネット像からどんどん離れていく感覚がある」とコメント。MCの堀潤もそんな非民主的な体制を苦慮し、「しかも、そこに国家が介入すると人々の活動を制限、制約することもできてしまう。投資の在り方はもっと情報開示されないといけない」と論じます。
これに水越さんは同意し、「価値というのは客観的に見ていく必要があるし、客観的な評価機関なりが必要」と話していました。
<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross