東京にゆかりのあるアスリート情報をお届けするTOKYO MX(地上波9ch)の総合スポーツ番組「TOKYO LOVE SPORTS」(毎週月曜20:00~)。8月5日(月)放送の「登坂が行く! マロズクローズアップ」のコーナーでは、富士通株式会社が開発している体操競技の採点支援システムに迫りました。

◆審判にかかるプレッシャー
今回、取材に訪れたキャスターの登坂淳一を出迎えてくれたのは、同社の東京オリンピック・パラリンピック推進本部シニアディレクターの藤原英則さん。
プロジェクトリーダーの彼を筆頭に開発を進めているのは、体操競技の採点支援システムだ。2020年以降、自動採点の実現を目指しているという。
現在、体操競技の審判は、目の前で進行している選手の演技を見ながら、シンボルマークと呼ばれる技の名前を記号で表したものやアルファベットで区別された技の難易度を採点シートに書き入れていくという、とてもアナログな手法でおこなわれている。
さらに採点が大変になったことも、審判への負担が増している。1964年の東京オリンピック当時は一番難しい技でC難度だったが、現在は最も難易度の高いものでI難度と、技の難易度が年々進化しているのだ。それだけに、「複雑で速い動きがどんどん技のなかに取り込まれていて、目だけでは判断がしきれないような状況になっている」とのこと。
そんな審判の負担を減らし、より正確な採点を実現するためにと立ち上がった藤原さん。採点支援システムの要となるのは、「3Dレーザーセンサー」だ。
この機器を用いて、競技をする選手に向けて1秒間に200万点ものレーザーを照射し、跳ね返ってくる時間によって3次元の位置、すなわち選手のシルエットを捉えることができるという。加えて、取得した選手のシルエットに骨格や関節を当てはめるアルゴリズム(計算方法)も開発。これにより、選手がどのような動きをしているか判断することを可能にしたのだ。
さらに驚くのは、男子で819種、女子で549種もあると言われる体操競技の技を、この動きから導き出す「技の辞書」の存在だ。これは、トップアスリートの実際の演技のデータを取得し、すべての技をAIに学習させたもの。
◆「技の辞書」のすごさ
技の難易度が向上の一途をたどるなか、アスリートファーストがいわれる昨今、審判は選手の競技を離れた横の位置から見て判定を下さなければならないのが現状だ。
そこで大きな力を発揮してくれるのが、採点支援システムなのだ。藤原さんは、「3次元データなので、いろいろな方向から見られるのが特徴」と胸を張る。複数の3Dレーザーセンサーを設置することで、横からだけでなく真上や真下など、さまざまな角度から立体的な動きを見ることができるのだ。さらに、採点の判断基準となる基準線を画面上に表示できるため、点数の判断もしやすいという。
例えば、つり輪の十字懸垂という技は、地面に対し並行に両手を伸ばし体と腕の角度を90度の状態で2秒間静止しなければ減点対象となるが、この採点支援システムを用いれば、角度や静止時間が一目でわかる。
「実際の映像と、取得したデータを3次元情報に変えて表しています。(画面上には)角度も出ていて、これは審判が技を判定するときに“ここの角度を見ている”という箇所を全部教わり、それを反映している」と藤原さん。
そんな骨の折れる作業を凝縮した“未来の採点システム”を前に、登坂は「すごい!」と舌を巻いた。
現在その正確性は、ほぼ100%近いところまで達しているそうで、今年10月にドイツのシュトゥットガルトで開催される「第49回世界体操競技選手権大会」で運用開始となる予定だという。
選手と審判に負担をかけない、より正確な採点システムの構築のために……富士通の採点支援システムがスタンダードとなる日は、そう遠くないのかもしれない。
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<番組概要>
番組名:TOKYO LOVE SPORTS
(9月までの放送情報)
放送日時:毎週月曜20:00~20:40 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:登坂淳一、稲村亜美
コメンテーター:水内猛
リポーター:宮下純一(カウントダウンTOKYO)、室伏由佳ほか
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/sports/tokyo_love_sports/