TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。5月27日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは健康社会学者/気象予報士の河合薫さんが、増加する希望退職と終身雇用の見直しについて語りました。

◆既に昨年比突破
人件費を抑えるために希望退職を募る上場企業が増えています。業績の良い企業でも将来を見据えて踏み切るケースがあり、東京商工リサーチの調べによると、今年の実施を公表した企業は5月13日までで16社あり、既に昨年1年間の12社をすでに上回りました。
募集者数の合計でも6,697人と、4,126人だった昨年を大幅に上回り、年間では1万人を超える可能性も出ています。希望退職の募集者数が1万人を超えるのは、前年の円高を背景に製造業での募集が目立った2013年以来となります。
◆“希望”という名の“絶望退職”
こうした“希望退職”でターゲットになるのはだいたい45歳以上で、企業によっては40歳から対象にするケースも。近年は労働市場の流動化が進み、再就職先も増えているという報道もありますが「私は“希望”という名の“絶望退職”と呼んでいます」と話します。
◆企業は「若くて安い労働者」が欲しい
「実際には45歳を過ぎると(求人票に)年齢については書いていないけれど、面接すら受けさせてもらえないのが現実」として、こう指摘します。
「企業が欲しいのは、極論を言うと『若くて安い労働者』です」
40歳代は経験を重ねてきて、これからまさに脂が乗り、裁量権を与えればさまざまなことができる人材です。「それを“要らない”と言っているわけですから、人材をコストとしか見ていないし、短期的にしか見ていない」と企業の姿勢を批判。経済界のトップが相次いで「終身雇用は制度疲労を起こしている」「終身雇用を見直さなければならない」と発言して話題になっていますが「経営者たちが終身雇用を“制度”と呼ぶことに非常に違和感を覚える」といいます。
「終身雇用は経営哲学だったはず」
これは制度として決まっているものではなく、企業の姿勢であり「人間の可能性を信じるという経営哲学だったはず」と訴えます。河合さんによれば、長期雇用は日本独特のものではなく、欧米でも基本は同様で「特にヨーロッパでは、生涯に何社勤めるかというアンケートを行うと、1990年代から日本とほとんど変わらない」と紹介。それだけに「短期的な視点にしか立っていない」という昨今の日本企業の方針に、疑問を投げ掛けます。
続けて「今の日本の経営者は、長期雇用で得られる利点を引き出す経営をせずに、長期雇用を諸悪の根源のごとく言っている」として「長期雇用の中でどういうことをやらなきゃいけないか、それを考えていかないといけない」と提言。ただその一方「現場で取材していると、すべて経営者のせいにする気にもなれない」と、次のように述べました。
「働かないおじさん問題、というのがあります」
◆会社に守られ定年までしがみつく
MCの堀潤も「僕が言う“ソリティアおじさん”ですね」と頷きます。長期雇用に守られ、自ら積極的に仕事はせず、ただ定年まで会社にしがみつく。「そういう人も結構いらっしゃいますし、むしろ増えてきたといっても過言ではない」と指摘。そうした存在が、希望退職者募集や終身雇用の見直しに結びついている面もありそうです。
「会社員であること自体が目的になってしまっている人材は、企業の負担にしかならないし、若者も活躍できないし、何より自分の人生を台無しにしてしまうことになる」と指摘。「会社という大きな存在に頼るのではなく、自分の人生に何が大切なのかという価値判断を持っていないと生き残れない、幸せになることができない時代に突入したと思います」と、雇われる社員の側にも意識改革を求めました。
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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/