TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。6月7日(金)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、キャスターでジャーナリストの岸田雪子さんが、川崎と練馬で起きた2つの事件の背景にある“ひきこもり”について意見を述べました。

◆厚労大臣「結びつけるのは慎むべき」
根本匠厚生労働大臣は、6月4日(火)の記者会見で川崎市の20人殺傷事件や、練馬区で元農水事務次官が長男を殺害した事件について「事実関係が明らかではないが、安易にひきこもりなどと結びつけるのは慎むべき」と述べました。
また、川崎市の事件の容疑者と元農水事務次官の長男は、いずれもひきこもり傾向にあったと報じられていますが、根本大臣は「ひきこもりの状態にある人への対策としては、個人の状況に寄り添い、きめ細かく支援しながら、社会とのつながりを回復していくことが重要」としています。
岸田さんは「ひきこもりは“恥”ではない」と主張。今回の2つの事件から、ひきこもり当事者が抱えている苦しさについて「私たちがもっと知っておくべき」と訴えます。
◆「8050問題」
川崎市の事件の容疑者は、同居する親族が介護を頼もうとすると、激高したと報じられています。岸田さんによると、80代の親が50代の子の生活を支える「8050問題」は、親の介護が介入する過程で発覚する場合が多いそうです。
外部から介護が入るとなると、子どもにとって安定していたはずの家のなかに、大きな変化が生じることになります。それだけに、この問題に対しては「非常に丁寧さが必要ということを知ったほうがいい」と岸田さん。
一方、練馬の事件では、息子の家庭内暴力がなぜ生まれたのかに注目。過去にいじめられた体験があったそうで「苦しさを抱えるなかで、SOSとしての暴力だった可能性もある」と言います。そして、ひきこもり当事者にどれだけ寄り添えたのかを案じ、岸田さんは「周囲の理解のなさが当事者を追いつめてしまうことがある、と覚えておいたほうがいい」と話します。
◆誰からも認めてもらえない苦しさ
岸田さんはひきこもり当事者の思いを伝えるべく、過去に取材した男性の言葉を紹介します。その男性にとって、何が一番つらかったかと言えば「自分の存在を、誰からも認めてもらえなかったこと」。
そして、男性を救ったのが「ずっと、つらかったんだね」という父親からの言葉だったとか。この何でもないように思える言葉が、当事者には「初めてわかってもらえた」と思えたそうです。
当時、この父親は息子に対してとても悩んでいたそうですが、同じように苦しむ親たちと出会うなかで「自分だけじゃない」「子どもも苦しんでいる」ということに気付き、息子と向き合うことができたんだとか。
◆「自分を守るために、休む権利は誰にでもある」
岸田さんは多くの取材をするなかで、子ども時代にいじめや虐待を経験している方が、ひきこもりになりやすいと感じているそう。幼少期に自己肯定感を育むことができず、なおかつ就職の難しさ・厳しさを経験し、そこで立ちいかなくなってしまった際に「自分を守る術として、ひきこもりが現れている」と言います。さらには「その認識を家族や同居する人がわかってあげることが大事だと思う」とも。
また、親を追い込まないようにするのも重要で「家庭のなかを安定させることが大事」と主張します。そして、親を追い込まない社会作りの一例として、ここ数十年で大きく変化した不登校への認識を挙げます。
かつては「登校拒否」と言われ、学校に行かないことを良しとしない時代がありましたが、現在は「教育機会確保法」により、つらいときなどは休んでもいいと定められているそうです。「自分を守るために、休む権利は誰にでもある」と理解を促します。
最近では、ひきこもりだった方がフリーペーパーを作り、情報を発信したりしているそうです。それだけに、ひきこもりの方も経験者と繋がり「どう社会復帰できたのかなどの情報共有をしていただきたい」と話していました。
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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/