軟骨伝導イヤホン 品川区役所で活用開始 より聞こえやすい音の伝え方

2024.08.01(木)

10:40

聴覚に障害がある人や高齢者にも聞こえやすい新たな音の伝え方として、「軟骨伝導」が注目されています。東京・品川区では、この“軟骨に振動を与えて音を伝える技術”を使った「軟骨伝導イヤホン」の活用を区役所の窓口で始めました。

聴覚に障害がある人や高齢者にも聞こえやすい新たな音の伝え方として、「軟骨伝導」が注目されています。東京・品川区では、この“軟骨に振動を与えて音を伝える技術”を使った「軟骨伝導イヤホン」の活用を区役所の窓口で始めました。

品川区が福祉など幅広い分野で協力する連携協定を結ぶ城南信用金庫から贈呈を受けた「軟骨伝導イヤホン」は、耳の周りの軟骨に振動を与えることで、鼓膜を通して音を伝えるイヤホンです。聴覚に障害がある人や高齢者も聞こえやすくなる特長があります。通常のイヤホンと違って耳の穴の奥に入れないため、外の音も聞こえるほか、汚れにくく衛生的に使用できるということです。

品川区は高齢者や障害者の福祉の窓口で試験的に導入し、今後、台数を増やすことを検討しています。贈呈を受けた品川区の森澤区長は「コミュニケーションの円滑化はもとより、大きな声を出すことが減り、プライバシーの保護にも寄与する。高齢者のより積極的な社会参加や地域交流に発展することも大変期待している」と語りました。

今後の普及が期待される「軟骨伝導」は、都内の学校で実験も行われました。文京区の都立小石川中等教育学校で行われたのは、「軟骨伝導」の技術を使って大人数で同じ音を聞く実験で、100人以上の生徒が参加しました。生徒たちが床に寝そべり、床に耳をつけ、楽器のいろいろな音を聞いてみるというものです。開発した音響システムを使って鳥のさえずりや人の声などを体育館の床に振動として響かせると、生徒たちからはどよめきが起きました。実際、体育館の空間には何の音も響いていませんが、耳の軟骨をつたって子どもたちには鳥のさえずりや川のせせらぎの音が聞こえていて、まるで床下から直接音が入ってきているような感覚です。実験に参加した生徒からは「振動によって音が伝わっていることが本当によく分かった」「僕、水泳部なんですけど、泳ぎながら音が聞こえたらすごく楽しいだろうなと思った」などと、日常で使ってみたいという声が上がりました。

「軟骨伝導」の仕組みを発見し、今回の実験を行った奈良県立医科大学の細井裕司学長は、今後、水中や周囲の音も聞くために耳をふさげない環境などさまざまな状況での活用に期待を寄せています。細井学長は「(今回の実験は)非常に大成功だと思う。軟骨伝導のポテンシャルや軟骨伝導とは何か、多くの人に一度に知ってもらう。そういう意味で非常にいい実験ができた」と語りました。

<「軟骨伝導イヤホン」公共施設などで導入も>

軟骨伝導イヤホンを開発した細井学長によりますと、イヤホンの価格は3万円ほどで、一般的な補聴器より比較的安く購入できるため、役所や警察などの公共の施設で導入が進められているということです。

 

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