能登半島地震から考える、災害時のSNSの活用法【令和版】 ニセ情報を見抜く「だいふくあまい」

2024.02.03(土)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、災害時の“SNS活用法”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、災害時の“SNS活用法”について議論しました。

◆発災後、SNSには虚偽情報が有象無象

石川県・能登地方を震源とする最大震度7を観測した「能登半島地震」の発生後、SNSでは助けを求める投稿が増加。しかし、そのなかにはデマ・虚偽の投稿も数多く、SNSは災害時の情報伝達手段として有用な一方で、その信憑性を巡ってはまだまだ課題があることが明らかになりました。

今回の一連の虚偽投稿に関して、専門家であるITジャーナリストの高橋暁子さんは「災害時は(SNS上に)デマが多くなることはわかっていたが、それにしてもタチの悪いデマが多く、肝心の情報が取りづらくなってしまった」と悔やみます。

キャスターの堀潤は「本当のSOSが疑心暗鬼のなかに埋もれてしまうのは、とても不幸なこと」と嘆きます。

株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは、「今回改めて思ったが、SNSの怖いところは悪意のある発信元より、発信元の悪意を(デマと気づかずに)悪意なく拡散してしまう人が多い」と言います。当然、虚偽情報を流す発信元は悪く、厳罰化する議論は必要ですが、同時に悪意なく拡散する存在を減らす取り組みもしないと根本的な解決には至らないと指摘します。

では、虚偽情報をなくすためには、プラットフォーマー、リテラシー、技術・テクノロジーなど何から手をつけていくべきなのか。堀から問われた高橋さんは「リテラシーの底上げも大事だし、プラットフォーマーも例えば問題がある投稿には注意が付けられるようになっているが、(それは)すぐには出ないし、(投稿の)数が多いと機能していないので、そこが機能できるような抜本的なものが必要」と回答。

神保さんは、「プラットフォーマー側を責めすぎる風潮も無理がある」と言います。というのも、プラットフォーマーもあくまで営利企業で、SNSは災害時のインフラとして事業を起こしたわけではないから。さらには、「そもそも(プラットフォーマーは)外国の企業。日本の災害インフラを外国の私企業に頼っている、この構造的な問題に、手を打たないといけない」と危惧。例えば、X社のサポートを受けながら国産Xを開発するなりしないと解決にはつながらないと案じます。

こうした虚偽情報はこれまでも多数あり、2016年の熊本地震では「動物園からライオンが逃げ出した」という嘘情報が合成写真とともに投稿され、大きな話題に。その際はデマを流した本人が逮捕されています。また、2022年の静岡台風被害では、街全体が水没したように見える生成AIを使って作られた虚偽画像が拡散されました。

ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントラインさんは、虚偽情報への対策として、ネット上に情報を上げるハードルを高くすること、さらには国家が危機管理の一環として情報発信を管理することを提案。

「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんは発信だけでなく、受信する側の対応にも注意を促します。

ただ、災害時の情報源はSNSだけでなく、テレビなどのマスメディアや公共放送もあることから、高橋さんは「既存のメディアの明らかに信用できる情報をベースに、SNSを付加的に使っていくのもあり」と話していました。

◆虚偽情報の確認は“だいふく”、発信は“あまい”

今回、能登半島地震で相次いだ偽の救助要請の背景にあると目されているのが、Xの仕様変更です。Xは昨年7月、広告収益をユーザーに分配するプログラムを開始。インプレッション数(投稿の表示回数)などの条件を満たすと収益を受け取ることができるようになり、救助要請がインプレッション稼ぎになると悪用された恐れもあります。

高橋さんは、「インプレッションさえ稼げれば収益につながる可能性があるので、最近はデマを飛ばしたり、フォロワーの多い方にコメントするといった行動が多く見られる」と現状を語ると、堀はインプレッション目的の虚偽投稿に対して「嘘の情報でそんなに儲からないのでやめるべき」と語気を強め、「そんなことのために大切なプラットフォームを利用しないで」と呼びかけます。

では、SNS上に蔓延る虚偽情報をどう見極めればいいのか。高橋さんは「SNSを見るときは“だいふく”に注意」と言います。“だ”は「誰が言っている?」で発信源が信頼できるかどうかを確認すること。“い”は「いつ言った?」で必ず最新の情報を得るよう注意し、“ふく”は「複数の情報を確かめた?」。

また、情報を発信する際には“あまい”を心がけるといいそう。“あ”は「安全確認」で、まずは自分が安全な状態にいるかを確認した上で発信すること。“ま”は「間違った情報にならないか」。“い”は「位置情報を上手に使う」。位置情報を示し被災地にいる証明ができれば信頼性は高くなり、同時に受信側もこれをチェックすれば虚偽情報かどうか判別する基準になります。

さらに、高橋さんは「今回デマの発信源となった人たちを確認すると、前後の投稿がおかしかった。例えば、複数のSOSをいろいろな住所で発信しているアカウントなどもあったので、(前後の)投稿を確認するのもひとつの手段。また、作りたてのアカウントはデマを流すために作った可能性がある。それから、プロフィールがしっかりしているかどうか、その辺りも確認すべき」と補足します。

◆災害時にSNSを有効に活用するためには?

最後に、今回の議論を踏まえ、災害時にSNSを有効に活用するにはどうしたらいいのか、ゲストとコメンテーター陣に発表してもらいます。能條さんは“公助の基盤整備”。「国・自治体は発信する側もそうだが受信する側の体制を整える責任がある」と言い、「災害用伝言ダイヤル“171”があるが、そうした仕組みを救助用にも作っていくことが必要」とも。

神保さんは変わらず“災害用の日本版Xの開発”を主張。災害時のインフラを外国の私企業に頼ることを危険視し、「悲劇の現金化の流れを防ぐためにも、簡易な機能だけに絞ってもいいので、正しい情報、投稿が集まる(国産の)アプリを開発する必要がある」と訴えます。

マライさんは、“防災準備として自分が信頼できる情報源をまとめておく”とし、事前の準備の重要性を示唆。

高橋さんの意見は、“普段から備える”。例えば、安否確認用にLINEグループを事前に用意しておく、Xで信頼できる情報源や居住している自治体のアカウント、防災関連情報が得られるアカウントをフォローしておくなど、普段から備えておくことで確実な情報が得られるとアドバイス。

そして、堀は即効性のある手段として“自治体、自衛隊など公的機関の情報公開・自動化”を提案。今回、堀のもとには自衛隊のつぶさな活動状況、避難所の安否確認名簿をシェアしてほしいといった要望が多かったそうで、そうした公的な情報を自動に公開する仕組みがあってもいいのではないかと訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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