親の負担になっているだけ? 子どものための活動“PTA”は今の時代に必要か?

2023.10.16(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、“PTAの必要性”について議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。「激論サミット」のコーナーでは、“PTAの必要性”について議論しました。

◆親の負担になるPTAは本当に必要か?

昨今、PTAの必要性を疑問視する声が上がっています。街頭で話を聞いてみると「子育ての話などができる」(50代女性)、「先生の時間外労働問題などを考えると歩み寄るべき」(60代女性)など肯定的な意見の一方で、PTAの経験者からは「運動会の受付などをPTAがやらなくてもいい」(30代女性)、「学校行事で土日がつぶれて、PTAの集まりで夜に何度も学校に行くのが嫌」(50代女性)と否定的な声も多数。理不尽に奉仕することを要求される“ブラックPTA”の存在も危惧されています。

そもそも“PTA”とは「Parent Teacher Association」の略で、保護者と学校が連携して子どものための活動をする団体。加入は任意で、会費は年間2,000~3,000円程度。なかには5,000円を超えるケースもあり、1世帯ごとの場合と学校に通っている児童数ごとで支払う場合があるということです。

主な活動は「学校行事・地域イベントの手伝いや広報活動」、「廃品やベルマーク回収で学校に必要な物の購入」、「通学路の見守り・防犯パトロール」などが挙げられ、こうした活動が保護者の負担になっているということですが、今の時代にPTAは本当に必要なのか。

コメンテーターに聞いてみると、キャスターの堀潤と5回PTAを経験した妻に取材してきたというジャーナリストの春川正明さんは「必要」。モデルでタレントの藤井サチさんと国内外で20年以上のPTA経験を持つコラムニストの河崎環さんは「不要」。

まず、「不要派」でPTA経験のない藤井さんは「親御さんへの負担がすごく大きいイメージ」と印象を語り、「例えば、会長と副会長だけ決めて、最低限のスタッフだけで、あとはボランティア。空いている人が参加する形がいいのでは?」と提案します。

これに春川さんは「ボランティア制にしたら誰も参加しない」と異議を唱えます。

すると、「不要派」の河崎さんは「むしろボランティアぐらいフレキシブルにしないと現代には実装できない。最終的に日本でこうした仕事は女の仕事になる。なぜなら昼に父親は地元にいないから」と女性任せの実情を吐露。

また、現在は子どもが小学校に入学すると、学校から「子どもが在学中に必ず1回はPTAをやってください」との通達が届くそうで、しかもそこには「もしできない理由があるならば、それは病気なのか、妊娠・出産、もしくは介護なのか理由を書いてください。なお、フルタイム勤務は理由になりません」との文言が添えられているそうです。

河崎さんは続けて「(子ども)1人あたり1回ということは、3人いたら3回。1回で1年間拘束されるので、子どもが3人いたら3年拘束される。それを女性の労働参加率が高い東京でフルタイム勤務はやれない理由にならないというのはあり得ない」と不合理的な慣習を嘆きます。

そんな河崎さんの意見に、春川さんは「それは運用の問題で改善したらいい」、「今のPTAは専業主婦を前提としたやり方。そこを変えればいい」と言い、むしろ必要なのは「親と学校がもっと関わること」と指摘します。

◆恐ろしい“ブラックPTA”の実態

今、PTA問題が俎上に上がっている理由のひとつに“ブラックPTA”があります。今回は実際に経験したブラックPTAの実態を漫画「やめちまえ!PTAって言ってたら会長になった件」に描き話題となった、漫画家・斎藤かよこさんに現状を聞いてみました。

斎藤さんがブラックPTAと付き合うことになったきっかけは、初めての保護者会。PTA役員の決め方を巡って紛糾するなか、ある保護者から「家庭の状況に基づき誰が役員をやるべきか決めましょう」と提案があり、「お子さんもひとりで(仕事は)在宅ワークだし常設委員いかがですか?」と言われたそう。

さらには実家暮らしで自分も同じ小学校であることも指摘され、斎藤さんは半強制的に役員をやらされることに。「家におばあちゃんがいることや家で働いていることを調べてくるお母さんがいる。そういう人に『あの人の家はできると思うよ』って言われてしまったら終わり」と振り返ります。

ブラックPTAの実態に藤井さんは驚きつつ、“ボランティア制”に関して「東京・立川、名古屋、新潟などは(PTAを)解散して、ボランティア制にしたら逆に参加率が上がったというデータもある」と補足します。

これに春川さんからは「同じ人しか来ていないのではないか」との指摘が。しかし、藤井さんは「年間を通じての仕事と1回の仕事ではハードルが違う。今日は参加してみようという気持ちになる」と反論。

河崎さんは「“子どもと関わりたい”、“学校にいる子どもの姿を見たい”と思っているお母さん・お父さんはたくさんいる。だけど、1年間役員をしないとそれを許してもらえないということがおかしい」と現状を憂うと、春川さんは「そういうことを含め、開いた学校にしようとPTAで提案したらいい。(PTAの)中で改革できるはず」と主張します。

◆アウトソーシングにボランティア…PTAにも変化が

PTAが保護者の負担になっていることを受け、近畿日本ツーリストでは「PTAアウトソーシング(委託)サービス」を開始。そこでは広報誌などの印刷・デザイン、行事の受付・事務作業などの人材派遣を行うほか、PTA専用のWebサイトの開設や記念品などのグッズ製作、学校イベントの企画・運営などもしてくれるということです。

河崎さんによると、こうしたサービスを使っているPTAはすでに数多くあり、そうすることで負担軽減、人数削減が可能に。いまや多くの委員会を傘下に置き、巨大化すると同時に、忙しい先生方に変わって学校の雑用まで行うようになったPTA。そのため、河崎さんはこうしたサービスを利用するなどして「組織をダウンサイズすべき。必要なものだけを残し、切り捨てることが必要」と訴えます。

一方、PTAを解散して新しい形を作り上げた学校もあります。東京・大田区の嶺町小学校ではPTAに代わり「PTO(Parent Teacher Organization)」を導入。同団体の星副団長は、その特徴について「完全にボランティア制という形にし、お手伝いが必要な時に保護者に呼びかけ、できる人、やりたい人に参加していただく」と紹介します。

つまり、PTOはボランティアを行いたい保護者に登録してもらい「できるときに、できる人が、できることをやる」を原則に活動を行う、まさに藤井さんが主張していた形。

河崎さんは「引き受ける側もどこからどこまでが自分の仕事で、何日、何時間の作業で終わるのか事前に読める。それがすごく大事」とそのメリットを語り、さらには「1年間も役員拘束だと終わりが見えない。役割を明確にすることでお母さんたちの参加もしやすいし、意欲を持った人が来てくれる。だからこのような仕組みが回る」と熱弁。

ここで春川さんは長年PTAを経験していた河崎さんに「PTAのなかで改革の議論はあるのか?」と質問。これに河崎さんは「もちろんあるが、PTAは単年度ベースでの寄せ集め。中長期的に構造を改革しようとなると2~3年は腰を据えて会長なり副会長なりやらないとならない」と現状の問題点を指摘します。

当初、PTAは「必要」としていた堀でしたが、ここまでの話から大胆な改革を行うならばPTAではなくPTOでもいいのではないかと「不要」に心が傾き、「親以外の参加を増やすこと」を望むと、河崎さんも同意。

日本は少子高齢社会でシルバー人材が豊富。そのなかには子どもたちに関心を持っている方も少なくないことから「シルバー人材の雇用創出も含め、高齢者や地域の、保護者じゃない人たちの力を入れる。地域で子どもを育てることをやっていけたらいいと思う」と河崎さん。

◆ダウンサイズ、社会のシステムから変える…PTA改革案

今回の議論を踏まえて、コメンテーターがPTAの改革案を発表。まず春川さんが訴えたのは「子どものために仕事の時間を割く社会」。「今まで女性に負担をかけたので、男性ももっと関わるべき」と男性の奮起を促しつつ、「今の日本社会では『PTAがあるので早退します』が許されないが、子どもは“社会の宝”。PTAのために仕事を割ける社会に。アメリカではそうなっている。社会のシステムから変えるべき」と主張します。

河崎さんは「(PTAは)ベビーブームの頃に出来上がった組織なので、少子高齢の社会にフィットしていない。組織が大きすぎるので1度解体、あるいはダウンサイズする必要が絶対にある」と改めて訴えます。そして、今後については「機能別に考えていけばいい」とも。例えば、ボランティア制の導入やNPOの活用なども提案。

藤井さんもダウンサイズの必要性を唱えるとともに、地域の協力、さらには「自主的に行うことで楽しんで、余裕をもってできる」と自主性を重要視

最後に、堀はPTAの「発信力向上」に期待を寄せます。というのも「まだまだ社会全体にPTAが何をしているのか伝わりきっていないと思う」と前置きした上で、「PTA改革はまだできることがたくさんあると思うし、それには私たちがもっとPTAを知ることが大事。行政や全国組織も含め、PTAの発信力の向上に力を入れたらどうか」と提案していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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