関東大震災から100年 「燃えない街へ」木密地域で進む対策

2023.08.29(火)

11:10

9月1日は関東大震災から100年の節目です。今週1週間にわたり震災の特集をお伝えします。初日は、震災に伴う火災対策です。古くからの木造建築が密集し、1万棟を建て替える必要がある荒川区では、様々な取り組みを進めています。

9月1日は関東大震災から100年の節目です。今週1週間にわたり震災の特集をお伝えします。初日は、震災に伴う火災対策です。古くからの木造建築が密集し、1万棟を建て替える必要がある荒川区では、様々な取り組みを進めています。

100年前、首都圏を襲った関東大震災の死者・行方不明者は約10万5千人。そのうち9割にあたる約9万2000人が火災によって犠牲となりました。大きな地震が首都・東京を襲ったとき、木造住宅が密集するいわゆる「木密地域」では家屋が倒壊し、火の手が広がることが想定されています。関東大震災から100年、いま、進む対策とは?

区内の約6割が「木密地域」であるという荒川区。現在の耐震基準を満たさないなど、建て替える必要がある古い建物は、荒川区内で約1万棟に上ります。こうした地域の改善を図るため東京都は、都内の52地区を「不燃化特区」に指定しています。荒川区では荒川・南千住、町屋・尾久地区が対象で、区は、都と連携して老朽化した木造建築の取り壊しや建て替えに助成金を出し、「燃えない街づくり」を進めています。

荒川区 村山課長:「火種となる建物がひとつ燃えて、それが大きな火災につながらないように、燃えにくい建物をまずは建てていく」

荒川区で不燃化特区制度がはじまって10年。これまで463棟の住宅が助成制度を使って建て替えられているということです。

それではさらに不燃化特区について詳しく見ていきます。不燃化特区制度は、都と区が連携して燃えない街づくりを進める助成制度です。例えば、荒川区内の一般的な老朽化した木造建築住宅80平方mを建て替えた場合、解体工事費で最大208万円、設計費などに194万円ほど、そして建設工事費に155万円ほどと、合計で最大556万円が助成されます。

こうした助成がある一方で、取材を進めると、課題も見えてきました。土地の所有者と住宅の所有者が違う場合もあり、建て替えをすんなりと進めることが難しいケースもあるということです。住宅が密集している地域では、火災が広がる恐れがあるだけでなく、道幅も狭いため、緊急車両が通れないといった場所も多々あります。

こういった課題を抱える木密地域を「災害に強い街」に変えようと、荒川区がさらに進めているのが無電柱化です。阪神淡路大震災では4500本、東日本大震災では2万8千本の電柱が倒れ、緊急車両の通行の妨げとなりました。古くからの住宅密集地が多い荒川区では「無電柱化」も進めています。

6年前にオープンした複合施設「ゆいの森あらかわ」に合わせて無電柱化された通りでは、緊急時の車両の通行といった防災機能の強化だけでなく、景観も大幅に改善されました。区では30年ほど前から木密地域を中心に約10kmの区道を無電柱化しています。しかし、その割合は区道全体のわずか5%ほどにとどまっています。

電柱を無くすためには、①道路拡幅のための用地買収に加え、②電柱の移設、そして③新たな電線の埋設工事、といったさまざまな課題があり、進んでいないのが現状です。こうしたなか、区では4年前に「無電柱化推進計画」を策定。国や都の補助金を活用しながら、2029年までに区内10の路線で合わせて約3.4Kmを優先して無電柱化するべく、整備を進めています。

荒川区 大木課長:「電柱があること自体で、災害への不安というものがあると思います。そうしたものを払拭していくためにも、無電柱化は必要な事業であると思っております。区民の皆さんの安全につながることですから、今後も順次続けていきたと思っております」

お伝えした無電柱化ですが、なかなか進まない大きな一因となっているのが費用です。まず、電柱の移設1本につき130万円ほどかかります。ただし1本だけでは工事ができないため、道路を封鎖して10本以上まとめて移設する必要があり、かなりの費用がかかります。国土交通省の試算によりますと無電柱化は、1キロあたり約5億3000万円かかるということです。

 

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