深刻化する“報道砂漠”…もしも報道メディアがなくなったら?

2023.05.17(水)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月3日(水・祝)放送の「New global」のコーナーでは、深刻化する“報道砂漠”について着目しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月3日(水・祝)放送の「New global」のコーナーでは、深刻化する“報道砂漠”について着目しました。

◆世界的メディアが破綻危機、米では地方紙も減少

5月2日、世界30ヵ国以上に支部があるジャーナリスト出身者ではない報道集団「VICE」が破産間近であることをアメリカメディアが一斉に報じました。「VICE」はIS(イスラム国)の潜入ルポなどを世界に先駆けて発信したメディアとして注目を集め、その発信力は世界的な支持を集めていましたが、今年4月には世界の紛争や人権侵害を扱う報道部門「Vice World News」を閉鎖していました。

この報道に、過去にVICEの創業者を取材したことがあるキャスターの堀潤は惜しみつつ、「SNSの台頭により生の情報が直接当事者からあがるようになってきたので、VICEが得意とするような潜入が付加価値としては低下してしまったのかなというところはある」と冷静に分析。

アメリカでは現在、VICEのようなネットメディアだけでなく、地方紙も厳しい状況にあります。ノースウエスタン大学が昨年発表した調査によると、全米各地で新聞のない地域が増加。新聞が1紙もない、もしくは1紙のみという地域が増え、その割合はアメリカ国民の5分の1以上。2004年には8,891紙あったものが2022年5月には6,377紙と、約20年の間に約2,500もの媒体が廃刊に追い込まれています。

◆報道媒体がなくなることによりデメリット

新聞をはじめとする報道媒体がなくなるとどうなるのか。堀は「権力の監視という機能が弱まるので、政治腐敗や治安維持が難しくなるなど、さまざまな課題が言われている」と案じます。

この状況に、法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんからは、新聞が減っていることとメディアの電子化に因果関係があるのか質問が。

これに堀は「そもそも経営が維持できない。そして、読者のニーズもなかなか捉えきれない。『ニューヨーク・タイムズ』などは電子化にうまく成功した例だが、極めて特異なケースで、こうした形で報道機関が維持できない状況が生まれている」と解説します。

ノンフィクションライターの吉川ばんびさんは、ウクライナ戦争を含む紛争地域においてはSNSへの投稿が盛んに行われていて、新聞社などよりもSNSが最も鮮度の高い情報メディアになっていることを挙げると、堀は「報道機関の役割が問われてくる」と頷きます。

ジャーナリストで海洋冒険家の辛坊治郎さんは、報道機関の重要性に言及。現在、SNSなどで個人がニュースを発信できる時代になりましたが、「その報道が嘘か本当かはわからない」と真偽の危うさを唱えます。さらに「最終的に嘘か本当か(判断するの)は、誰が発信しているかしかない。出している情報に対して、誰が責任を取るのかが見えない情報は、私は信じないようにしている」と情報に対する自信の考えを明かし、そうした真偽のわからない情報が増えることを「怖い」と述べます。

続いて、アメリカがなぜこうした状況になってしまったのかを解説。辛坊さん曰く、「ニューヨーク・タイムズ」も本来は地方紙だったものの、インターネットのおかげで全米に情報を流せるようになり、その名が全国区に。一方でそれができなかったローカル紙は次々に破綻し減少していったと説明します。そして、これが進むと日本にも影響が及ぶとし、「日本は日本語で守られているが、もしも『ニューヨーク・タイムズ』が日本語サービスを始めたら、日本のメディアが壊滅する可能性もあると私は危惧している」と案じます。

◆黒船来航で日本のメディアに危機!?

日本でも記者数は減少の一途を辿っています。2008年は2万1,093人いたものの、2022年は1万6,531人と約15年間で約4,500人減少。かろうじて会社は維持できたとしても支局は閉鎖になるなど弱体化。堀の肌感としても「報道量はだんだん減ってきているのかなと」と懸念の声が。

さらに、日本を拠点に取材を行う外国人記者の協会「外国特派員協会」も財務状況が悪化し、会員数はピーク時の半分になるなど、危機的な状況にあるとか。しかし、その一方でイギリスの公共放送「BBC」などは日本語版のサービスをスタート。そのため、堀は「辛坊さんの言う通り、海外メディアが日本の市場を席巻する可能性はある」と憂慮。

由井さんは「(海外メディアの参入によって)日本のメディアが一掃されてしまうと、メディアの監視機能が外国に任せていいのかという話になる。メディアは“第四の権力”と言われているが、その強さをもっと打ち出していかないと価値がなくなってしまう」と言及。

では、報道の砂漠化を防ぐ、緑化するためにはどうすればいいのか。辛坊さんは“意識改革”を挙げます。「多くの人はニュースをネットで見るが、そのネットのニュースは、誰が取材し、誰が流しているのか。もしも(ニュースが)ひとつしかなくなってしまったら恐ろしい。そうした意識をみんなが持つべき」と注意を促していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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