「記者クラブ」の存在意義とは?経験者が語るメリット・デメリット

2023.04.17(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。3月31日(金)放送の「モニフラZ議会」のコーナーでは、日本の“報道のあり方”や“記者クラブの存在意義”についてZ世代の論客が議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG(モニフラ)」(毎週月~金曜7:00~)。3月31日(金)放送の「モニフラZ議会」のコーナーでは、日本の“報道のあり方”や“記者クラブの存在意義”についてZ世代の論客が議論しました。

◆日本の報道が弱い要因!? 記者クラブとは?

報道の自由度ランキングでは、71位の日本。その一因と言われているのが、取材や報道のための自主組織で大手メディアの記者などが所属し、記者会見や代表取材などを官公庁などで行っている“記者クラブ”の存在です。

今回、当番組ではTOKYO MXの報道局に所属する記者クラブ経験者にアンケートを実施。記者クラブのメリット・デメリットや改善点などを聞きました。そのなかで、一般的なメリットとして挙がっていたのは「官公庁の発表による効率的な情報収集ができる」、「取材活動が円滑化される」、「当局に対して団体で交渉できる」など。そのほか、「当局のトップや幹部職員らと簡単に情報交換ができる。当局の現状や方向性が理解しやすい」、「日本の官僚制度、価値観を考えると、記者クラブがあるからこそ、まだ情報が取れている」といった意見も。

一方、デメリットは「閉鎖的・特権的になりやすいこと」、「当局に有利な情報発信が多くなること」などがあり、「組織に有利な情報発信に利用されやすい。距離が近いことで権力監視の役目が弱くなる」、「本当に聞きたいことは個別で開き、形骸化した記者会見と感じる場面があった」といった懸念の声も寄せられました。

行政と深く関わるメディアを運営する株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、過去に政治家からの公式の依頼で記者会見の模様を映像に収めようとした際、古井さんらのカメラよりも記者クラブが優先されたといい、「政治家としてはオフィシャルで発信したいが、それができないことがあった。上手いルールが作れないものか」と苦慮。

キャスターの堀潤は、福島第一原発事故の取材の際、裁判官の現場検証をしようとしたところ、撮影は記者クラブの代表カメラのみ。原告弁護団の後押しがあっても取材に入れなかったことがあったと回顧。さらに、代表カメラの映像を貰うこともできなかったそうで「そうなると、伝えられるもの、伝えられないものが出てきてしまう」と案じます。

古井さんはこうした状況について「広報が機能し、報道の監視もともに上がっていけばいいが、今は政府や政治家などの広報の発信が弱い」と分析。そうした状況下で「報道が強くなっていくと、政治や行政に対するネガティブな印象が積み上がっていく原因になる」と危惧します。

◆海外メディアは記者クラブを「時代錯誤」と酷評

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんが堀とディスカッションするなかで、とりわけ話題に上がっていたのが、フリーランスや新興メディアが記者クラブに容易に入れないこと。

日本の記者クラブ制度について、海外メディアの記者に聞いてみると、フランスラジオ特派員の西村カリンさんからは「日本の記者クラブ制度は時代錯誤」と辛辣な意見が。

なぜなら、「海外のマスコミは総理大臣に質問する機会はほぼない。それはG7の国のなかで日本だけ。フランスでは何か事件があると検察は記者会見し、全ての記者が参加できる」と言い、「何らかの理由で記者クラブが必要だった可能性はあるが、もうそれはダメ」と記者クラブの自由度の低さを指摘。

Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんは、以前、自身の活動をプレスリリースにまとめて記者クラブに渡し、その結果として現在、そこで繋がりができた記者を経由して、フリーランスの記者などにも情報を散布できるようになったそうで、ハブとしての記者クラブに有用性を感じている様子。

大空さんも「僕らのようなNPOなど権力も人脈もない人でも記者クラブの(電話)番号は公開されているから、そこに投げ込めば情報が大手メディアにも伝わるというのは間違いなく利点」と評価しつつ、「アメリカにも記者クラブのようなものはある。目に見えない形での紳士協定があったりするので、日本だけの特有の制度ではないことは伝えておくべき」とも。

◆記者クラブの未来…Z議会からの提言は?

TOKYO MXの記者クラブ経験者へのアンケートでは、記者クラブの今後についても聞いています。そこには「改革は必要だが記者クラブ制度を勝ち取った歴史があり簡単ではない」などの声や、「記者クラブは廃止し、第三者機関が発行する記者PASSを作ればいいのではないか」という改革案も。さらには「国民にとって意義のある情報をとるために記者クラブは必要。今後も当局とは是々非々の関係を続ける」という肯定的な意見や、「報道機関・記者の倫理観を損なわず高めていく指導・教育が必要」といった声もありました。

また、「情報を発信する側としては投げ込むことで一定の情報が届くという利便性もあると思う。ただし、記者クラブは特定のメディアのための存在ではなく、全てのメディア、記者のための存在であるべき」という意見には、堀も「フリーランスも含めてみんなで情報を共有していくようになれば、もっと開かれてくるかもしれない。やはり開かれたパスのあり方が必要かなと思う」と共感。

今回の議論を通じての提言を、大空さんが代表して「解体より解放」と発表。大空さんは「記者クラブのメリットを強調する必要があると思う」と主張します。前述の通り人脈・影響力がない人たちにとって情報流布の窓口になっており「それは民主主義的にも非常に大事」と強調。

ただ、弊害があるのも事実で、「ホワイトハウスでは記者PASSが発行されている。その発行基準も議論の必要があるが、やはり記者クラブという組織そのものをなくすのではなく、(フリーランスの記者や新興メディアであっても)誰でも入れるようにしていく解放性が必要だと思う」とまとめます。

この意見の是非について、当番組のTwitterスペースに参加していた人たちに聞いてみると、賛成とする意見が多数。最後に、堀は「みんなが現場に出ていけばいい。ニュースソースは官公庁じゃない」と現場至上主義を訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

 

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