事故が相次ぎ、死亡事故も…電動キックボードはなぜ規制緩和される?

2023.03.01(水)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、“電動キックボードの規制緩和”について、視聴者を交えて議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、“電動キックボードの規制緩和”について、視聴者を交えて議論しました。

◆巷で普及する電動キックボードが規制緩和、その背景は?

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは“電動キックボード”です。

警察庁は1月19日、電動キックボードについて、最高速度が時速20キロ以下のものを特定小型原動機付自転車と分類し、7月1日から運転免許を不要とする方針を明らかに。

一方で警察庁によると、電動キックボードによる道路交通法違反容疑などの摘発は、2021年9月から2022年11月までに1,639件となっています。

現行ルールと7月以降の新ルールを比較してみると、年齢制限は16歳以上と変わりません。現在のルールでは、免許証は「必要」、走行は車道のみとなっていますが、7月以降は免許証「不要」で、時速6キロ以下であれば歩道走行も可能に。また、ヘルメットについては「義務」から「努力義務」となります。罰則については、違反すると反則金、繰り返すと講習は変わりませんが、新ルールでは、追加で車体の高さ190cm以下、幅60cm以下と定められ、緑色のライトや専用のナンバープレート、ミラーの装着が必要になります。

今回の規制緩和の背景には、政府が推進する「規制のサンドボックス制度(新技術等実証制度)」があります。これは新技術やビジネスモデルの社会実装のためには“まずやってみる”ことが重要という理念のもと、さまざまな実証を行い、そこで得られた情報・資料を活用して規制の見直しに繋げる制度で、FinTech(Finance・金融とTechnology・技術を組み合わせた造語)やヘルスケア、ブロックチェーン、AI(人工知能)・IoT(Internet of Things・モノのインターネット)など23計画142者が認定されています。

キャスターの堀潤は、規制緩和、民間のビジネス支援は容認どころか今以上に行うべきという姿勢であるものの、この件に関しては「車道でも歩道でもない走行レーンの整備などをやり切ってから導入してはどうか。みんなマナーを守って安全に乗ってくれればいいが、正直、怖いと感じる」と話します。

臨床心理士のみたらし加奈さんも「電動キックボードは車窓から見たことしかないが、ヘルメットをつけなくていいのか、ヒール(のある靴)で乗ってよろけたときに大丈夫なのだろうか、という気持ちになる」と話し、安全面への不安が拭えない様子。

スポーツサイクルや中型バイクも所有しているほどの“二輪車好き”という、獨協大学特任教授の深澤真紀さんは、国内外でさまざまな乗り物を乗ってきたなかで、電動キックボードも体験済み。それらの乗車経験を踏まえた上で、「いろいろな乗り物のなかで(電動キックボードは)トラブルのときのコントロールが一番難しい。きちんと講習をしないと難しい乗り物だと思う」と実感を語ります。

また、「日本の交通の歴史は安全のために変化してきた」とも。かつてバイクはヘルメットを着用していなくても乗車OKでしたが、時代とともに着用が義務付けられます。また、2000年からはチャイルドシートの設置義務、2008年からは全座席でのシートベルトの着用が義務化されました。そして、最近では自転車もヘルメットの着用が4月から努力義務化されます。日本では何より安全が重視されているなかで、「唯一、電動キックボードだけルールが逆走している」と指摘。「道路交通法は命を守ることをアナウンスすべきなのに、(電動キックボードの規制緩和は)逆のアナウンスになっていないか心配」と懸念します。

◆2022年9月には、全国初の死亡事故が発生…

電動キックボードの摘発件数は、2021年9月から2022年11月までに14都府県で1,639件あり、なかでも人身事故は69件。うち、接触事故が75%となっています。そして、2022年9月には、全国初の死亡事故が発生。これは、50代の男性がマンション駐車場内を走行中、方向転換の際に車止めブロックに衝突して転倒し、頭を打って死亡。このとき、男性はヘルメットをつけておらず、飲酒運転の疑いがあったということです。

堀は、規制緩和して産業のイノベーションを促す一方で、命に関わるような事故、さらには加害者にも被害者にもなり得るような状況を危惧します。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、「(規制緩和の際に)こうした事例は今後も起きる可能性があるという前提に立つ必要がある」と話します。

新たなイノベーションを起こすためにも規制緩和の必要性は十分に認めるところではあるとしながらも「手続き、そのプロセスが透明でなければいけない。しかし、今は残念ながらそうではない」と非難。「あらゆるものが規制緩和という大義名分の名の下に、それが印籠のように機能し、手続きやプロセスが全く透明でないし、重んじられていない」と指摘します。

また、当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「交通弱者というものをみんな履き違えている。電動キックボードが公道を走るのはまだ早い」という厳しい意見や、自転車や車が好きでよく乗っているという方からは「道路というのは資源なので、譲り合う精神が大事」といった意見もありました。

※この番組の記事一覧を見る
    
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね

RELATED ARTICLE関連記事