LGBT理解増進法案めぐる議論に、論客が意見「国会議員に対して理解増進を図らないと…」

2023.02.21(火)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月13日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、“LGBT理解増進法”について、視聴者を交えて議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月13日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、“LGBT理解増進法”について、視聴者を交えて議論しました。

◆多様性を認める社会を目指すはずが…

Twitterを活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、“LGBT理解増進法”です。

2月1日、岸田首相は同性婚の法制化について「極めて慎重に検討すべき課題」、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題」と否定的な考えを示しました。そして、3日には荒井勝喜総理秘書官が性的少数者などに対し「隣に住んでいたら嫌だ。見るのも嫌だ」と述べ、更迭。これらの問題を受け、性的マイノリティの当事者らが人権保障に向けた法整備を急ぐよう、政府に訴える動きもあります。

LGBT理解増進法を巡っては、2021年5月に超党派の議員連盟で合意するも「差別は許されない」という表現に、自民党の一部保守派が反発。国会への提出は見送りとなりました。その後、前述の岸田首相、荒井前総理秘書官の発言があり、自民党の萩生田光一政調会長はテレビ番組で「不当な差別や偏見はあってはならない。党内のコンセンサスを得て議論を前に進めたい」と話し、党内の意見を整理する考えを示しています。

このLGBT理解増進法案のポイントとしては、まずは「性的指向・性自認の多様性に寛容な社会の実現を目指す」、「国・自治体・企業・学校による知識普及・相談体制の整備」があり、さらには「性的指向・性自認を理由とする差別は許されない」との認識の下に施策を講じるとしていますが、この“差別は許されない”という表現に、自民党保守派から反対の声が上がっています。

◆まず行うべきは法整備、そうすることで社会も変わる!?

この問題に対し、モデルでタレントの藤井サチさんは、若い世代は周囲にLGBTQの方々がいるケースがあるため理解が進んでいるものの、「(前総理秘書官の)荒井さんのような一部の上の世代の方たちは、なんとなく嫌だという方が多いと思う」と考えを述べ、「そうした人たちに対して、その感情は間違っていると言うのは簡単だけど、価値観まではなかなか変えられない。だからこそ、まずは法整備が大事。法整備することで、そういう人たちも“社会は変わっている”(という気づきが)後からついてくると思う」と話します。

さらに、「ぜひ自民党の一部の保守派の方たちには、まずLGBTQの方々についてもっと知ってもらいたい。もっと話してもらいたい」と切望。加えて、岸田首相に対しても「選択的夫婦別姓を推進していたので、この問題に関しても岸田さん自身のカラーをもっと出して、舵を切ってほしい」と主張します。

キャスターの堀潤によると、かつてイギリスでは同性愛を公言しただけで逮捕されることがあったものの、制度を変え、社会も変化。「社会は誰が変えるのかといえば、一人ひとりの意識」と言い「アメリカでも依然としてさまざまな議論が続いている」と現状を語ります。

藤井さんは「台湾でも伝統的な家族観が壊れてしまうという議論があったけど、そこを乗り越えて、同性婚も認められた」と台湾を例に挙げつつ「同性婚を認めている国は、どこの国も与党が支持しているのが大きなポイント。日本は、そこに大きな差がある」と指摘します。

なお、自民党保守派の反対意見としては「行き過ぎた差別禁止運動につながる」、さらには「法制化されれば、性的少数者を支援する団体や野党が勢いづき、こちらが守勢に回る」といった声があります。そんななか、高市経済安全保障担当大臣は先の衆議院予算委員会で「文言について十分な調整が必要。厳格なルールを作れば、企業は性的少数者の雇用に及び腰になる」と話しています。

◆LGBT理解増進法の裏に思惑がある?!

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、LGBT理解増進法は必要としつつも、「同性婚はハードルが高いから、とりあえずはLGBT理解増進法を出そうと。これを通せば、同性婚の議論はしばらくしなくていいだろうという思惑が一部あるのでは」と裏読みし、「この法律も必要だが、やはり最終的には同性婚」と主張。

そして、もうひとつの問題点として“差別と区別の違い”を挙げます。「社会的に合理的ではない区別はダメだが、区別そのものは悪いわけではない。差別と区別の違いは、もう少し冷静に議論してほしい」と訴えます。

株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは、岸田首相が発した「社会が変わってしまう」という言葉に対し「そもそも社会はもう変わっていて、なおかつ“変わる・変わらない”ということ自体が論点としておかしい」と異を唱えます。なぜなら、性的マイノリティの方々は以前から社会に存在していたからで「元々いた同じ人間の人権を尊重しましょうという話」と語った上で、LGBT理解増進法の推進は「確実に必要なこと」と明言。

そしてもうひとつ、自民党の一部保守派から「法制化されれば性的少数者を支援する団体や野党が勢いづき、こちらが守勢に回る」という声がいまだ残る状況であれば、LGBT理解増進法とともに、「国内に人権機関を設立する必要性がある」と主張します。

というのも、国連は1993年に政府から独立した国内人権機関の必要性を示していますが、日本は遅々として進んでいません。「(自民党の一部保守派のような方が)法律を決める側にいて、彼らの感情を全否定することができないとしたら、藤井さんが言う通り、仕組み・制度でどのように担保するかが重要。国内人権機関の設立も同時に議論を進めてほしい」と望みます。

また、キャスターの田中陽南は、高市氏の発言に違和感を覚えたようで「性的少数者の意見として述べたことだったと思うが『企業が雇用に及び腰になることはありますか?』と思う。企業面接時に自分の性自認や性的指向を話すことはないんじゃないかなと思うし、これを理由にするのは疑問に思う」と感想を述べます。

◆国民に理解を促す前に国会議員の理解促進を!

LGBT理解増進法を望む声も上がっています。公明党の山口代表はLGBTなどの情報発信施設を訪問し、G7広島サミット前の法案成立を目指す考えを表明しています。また、国民民主党の玉木代表は、党大会で多様性社会の実現、LGBT支援団体との交流促進を明示。立憲民主党の泉代表は「(LGBT理解増進法の)成立は最低限やるべきことでゴールではない」と強調しています。

番組Twitterには「認める・認めないとかの関係ではない」、「同性婚に異様に腰が重たいのは憲法にどうしても関係してくるからだと思う」といった意見が寄せられ、堀は「そもそも性自認と性的指向の話は似て非なるもので、LGBTQという言葉だけでそれぞれの人たちが規定されるものではない。LGBTQというものに押し込めてしまうのも乱暴な意見」と主張します。

では、この問題に対してまず行うべきことは何か。神保さんは「国民に対しての理解増進を図る以前に、国会議員に対しての理解増進を図らないと、結果的に目先の細かい利益の調整のなかで法律が揺れてしまうことが起こる」と案じます。さらには「最終的にはやはり同性婚に対し、国としてどう判断していくのか。そこを切り崩す上での最初の一手として、まずはこのファーストステップは必ず進めていきたい」とも。

大空さんは「おそらく自民党の国会議員はどちらでもないという人は多いと思う。だから、この問題と夫婦別姓の問題は党議拘束を外して、個人で投票とするとすれば、今、この状況でも法律が通る可能性は非常に高いと思う」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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