BL偏りの指摘も 都「不健全図書」名称変更で議論…指定された漫画家「大人には不健全じゃない」

2023.02.14(火)

10:00

 未成年への販売を禁じる東京都の「不健全図書」という制度があります。過激な性描写などがある作品を指定するものですが、この「不健全」という名称の変更を求める動きを取材しました。

 未成年への販売を禁じる東京都の「不健全図書」という制度があります。過激な性描写などがある作品を指定するものですが、この「不健全」という名称の変更を求める動きを取材しました。

 過激な性描写や残虐表現などが含まれると判断された作品を指定し、未成年への販売を禁じる東京都の「不健全図書制度」は1964年から始まり、青少年の健全な育成を図る狙いで作られました。この60年近く続く制度に数々の人気漫画家から名称変更を求める声が上がっています。人気ボクシング漫画『はじめの一歩』の作者・森川ジョージさんは「どうか一度立ち止まり、考えてほしいと思っています」とメッセージを寄せ、『進撃の巨人』の作者・諫山創さんも名称の変更に賛同しています。

 こうした漫画家からの名称変更に賛同する声が集まり、2月9日には有志らによる陳情が都議会の文教委員会にされましたが、最終的には反対多数で不採択となりました。ただ、委員からは「この『不健全な』というのが今の時代に合うものかどうかは、確かに感じる」(自民党・鈴木純都議)、「『不健全な図書類』の指定による不利益を積極的に解消していく」(都民ファーストの会・白戸太朗都議)など、制度の見直しを求める声もありました。また、委員からは男性同士の恋愛を描く「ボーイズラブ」=いわゆるBLの作品に偏っているとの指摘もあり、共産党の戸谷英津子都議が「現在指定される図書類のほとんどがBLコミックとなっている。BLコミックばかりが指定される理由は何か」とただしたのに対し、都の担当者は「審議会の答申を経て、不健全図書類と指定している」と答える一幕もありました。

 「著しく性的感情を刺激する」として、自身が描いたボーイズラブの漫画を「不健全図書」に指定された漫画家の星崎レオさんは「思い入れのある作品だったこともあり、当然ショックだった。『不健全なものをあなたは描いている』という指摘や、きついものだと『性犯罪者』みたいな言い方もされた」と話し「青少年に対しては不健全といえるかもしれないが、大人に対して不健全というものではない。名称は考えてほしい」と訴えます。

 有志らの団体は「名称変更を進める下地は整った」として、今後も取り組みを進める考えです。

<東京都の「不健全図書」制度 課題は?>

 東京都の「不健全図書」制度は、次の手順で選定され指定されています。まず、選定する東京都の事務局には男性5人・女性1人の職員がいて、都内の書店やコンビニを回って毎月100作品ほどを集めています。この中から事務局で1点から複数の作品を選び、出版の協会などで構成される自主規制団体からの意見聴取を踏まえた上で、審議会で指定することになっています。

 取材した記者は、事務局が男性5人と女性1人というわずか6人の職員で構成されていることや「ネット社会」になってもなお書店やコンビニから本を探すという旧態依然とした体制が続いていることも、時代に即しているのか疑問だと指摘します。また、以前にも性的描写のある漫画を規制する動きはありました。制度や手順が時代に合わなくなってきているという指摘がある一方で確かに大人向けの描写がある漫画が多くみられるのも事実で、ゾーニングは必要です。しかし「成年向け」とすればよいのではないかという指摘も多く見られます。

 

 東京都には時代に合致した制度を検討することが望まれます。

 

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