「倍速視聴」は賛成? 反対? ITジャーナリストと徹底議論

2022.10.24(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、タイムパフォーマンス(タイパ)を考慮した“倍速視聴”について、ITジャーナリストの三上洋さんを交え、Z世代の論客が議論しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、タイムパフォーマンス(タイパ)を考慮した“倍速視聴”について、ITジャーナリストの三上洋さんを交え、Z世代の論客が議論しました。

◆Z世代はタイパ重視、オンライン授業は倍速視聴が当たり前

Z世代を中心に広がる「倍速視聴」。最近では、録画したドラマなどのほか、大学のオンライン授業まで倍速で観る人も。その理由は、タイムパフォーマンス(タイパ)。時間効率を求め、倍速視聴をする人が増えているようです。

この風潮に、キャスターの堀潤は「危機感を感じている」と吐露。なぜなら、ニュース配信などを倍速で観ることで「誤った情報や偏った情報、印象に残るワンシーンだけを(倍速視聴で)観て、それで何かを判断していくのは本当に怖い」と危機感をあらわにします。さらに「プロパガンダを打ちたい側にとってはこんなに都合のいい状況はない」とも。

一方、三上さんは倍速視聴賛成派。「生で観られるときはいいが、(録画などを)見返すときは3倍速ぐらい欲しい場合が多い」、「情報が欲しい場合は圧倒的にタイパを考えて倍速以上」と断言します。

また、Z世代のコメンテーター、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さん、Health for all.jp代表の茶山美鈴さん、アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんも全員賛成派で、スタジオで反対派は堀ただ1人。

この結果に、堀は「内容をエンタメ的に消費して終わってしまう。タイパで空いた時間もコンテンツで埋め、考えるよりもまた(次のコンテンツを求めて)観てしまうことが怖い」と危惧します。

現在大学生で、入学当初からコロナ禍で授業はずっとオンラインだという茶山さんにとって、オンライン授業を倍速で観ることは日常的になっていて、「タイパを気にして、できるだけ自分が欲しい情報のときだけ等倍にしている。そこを調整することで、オンライン授業を観ていない時間を他のことに使える。それはコロナになった世代からすると、一番の醍醐味」と実感を語ります。

また、倍速視聴することによって空いた時間でさらに情報が得られることから、インプットできる情報量が増えると思われがちですが、「逆に情報量は減った気がする」と茶山さん。例えば、90分の授業でも要点となるのはわずかな時間だけで、それ以外の部分を飛ばすことで「逆に情報の整理ができていると思う」と話します。それを聞いた堀は、一時、反対から賛成派へと心が揺れ動く一幕も。

◆等倍か倍速か、判断するのは個人の自由、そしてコンテンツ次第!?

ここで過去に番組で放送した映像を、通常の速度と1.5倍速で比較。双方の映像を観た堀は「耳が慣れてきてからは(1.5倍速でも)意外と聴こえる。早口だし、声も高くなっているが、字幕(テロップ)もあることで違和感なく聴こえた印象」と率直な感想を語ります。なお、三上さんによると、最近では倍速にしても声が高くならず、そのままの声のトーンで再生スピードだけ速くなるようなテクノロジーもあるそう。

倍速視聴に関しては賛成ながらも、自身はというと「正直、僕はあまりやらない」と小幡さん。「そもそも個人の自由」と前置き、「コンテンツ側からすると、2倍速ぐらいがちょうどいいようなコンテンツしか作れていないという意味だと思う」と指摘します。

そして、「(倍速視聴は)ユーザーが決めることであり、僕は自分が観たいと思うコンテンツしか観ないし、倍速で観るようなものはそもそも観ないという考え方。(好きな作品は)倍速では観ないし、そもそも倍速で観ないといけないようなつまらないコンテンツは観ない」との厳しい意見も。

倍速視聴に関する実態調査の結果を見てみると、「経験あり」と答えた人の割合は、20代が最も多く49.1%。そして、学生に限って見てみると、スマホやテレビを観る際に倍速視聴する割合は20~30%台ですが、学校のオンライン講義を倍速視聴する人は51.2%と半数を超えました。

この結果に、自身も大学でオンラインによる講義をしているという三上さんは「(学生たちに)倍速で観られるという前提で作っている」と話します。基本的に生徒にはライブ、同時接続で観るようお願いし、双方向であることを活かしてさまざまな工夫を行い、飽きさせないようにしていると言います。

しかし、講義の模様はアーカイブでも観ることができ、同時接続で観ないとなると、せっかくの工夫も「同時性の意味がなくなる」と三上さん。

また、倍速視聴が増加している背景については「3つのポイントがある」とし、1つ目が「コンテンツが増えたこと」で、2つ目は「スマホの普及」。そして、3つ目に「パフォーマンス=効率性」を挙げます。

堀は「(倍速視聴は)熟考するきっかけ、トリガーとなっているのか。右から左へと情報を入れてなんとなくわかった感じで次にいってしまうのか。ちゃんと考える時間も作り出せているのか」と案じると、三上さんは「それはメディアが時間設計できているか、できていないかが問題」と答えます。間を空けて考えさせるコンテンツ作りをしていれば視聴者も倍速にすることはなく、そうではなく情報をただ一方的に流しているだけのもの、考える余地を与えていないコンテンツは倍速視聴されがちだと解説。

阿部さんも同じく「ものによる」と話します。講義には3種あると言い、1つは学校で授業を受ける「オンキャンパス」。もう1つは同時接続して同じ時間を共有する「オンライン」。そして最後は録画されたものを観る「オンデマンド」。オンキャンパスとオンラインはリアルタイムのため倍速視聴はできず、オンデマンドになって初めて倍速視聴ができるわけですが、オンデマンドでやることは情報のインプットだけという側面があり「そうした一方的なコミュニケーションに対しては倍速視聴が有効なのではないか」と主張します。

◆倍速視聴に対するZ議会の総意は“場合分けと目的意識”

カリフォルニア大学の研究によると、オンライン授業の録画は2倍速で観ても理解度は変わらないとか。また、脳の医療・研究に携わる加藤プラチナクリニックの加藤院長は、倍速視聴が向いているものに大学講義の復習などの情報を挙げ、そのメリットは集中力が得やすいので知識の習得や学習効率が良いとのこと。

一方、向いていないのは、ドラマなど感情を動かされるもの。人間の感情は倍速に対応しておらず、コミュニケーションで本質が掴みづらくなるとしています。

こうした専門家による分析に、茶山さんは「(倍速視聴に)賛成としているが、確かにドラマや娯楽を倍速で観ることはなかなかない。大学の講義や情報を得たいときに、例えばニュースとかを倍速で観ることが多い。集中力が得やすいというのはそうだなと思う」と納得の様子。

最後に、Z議会を代表して阿部さんが提言を発表。今回の議論を通じて分かったこととして「作り手も聞き手も、場合分けと目的意識を考えないといけない」と主張。

また、倍速視聴が増加している背景については「3つのポイントがある」とし、1つ目が「コンテンツが増えたこと」で、2つ目は「スマホの普及」。そして、3つ目に「パフォーマンス=効率性」を挙げます。


例えば、余韻や間を楽しむのであれば等倍で、情報をただ早く得たいのであれば倍速といった具合に、その場面によって使い分けること。そして、受け取り手はもちろん、作り手、いわば大学の教授やメディアの発信者側も「どういう意図で観てほしいのか、同時に発信する必要がある」と訴えます。

これに対し、三上さんが「作り手の工夫、倍速視聴にならないような面白いコンテンツ、考えさせる局面を作るのは正直コストが相当かかる。そんなに作り込んでいられない」と問題点を挙げると、堀は「私たちはメディア発信する側。こういう時代に創意工夫し、一緒に考える体験の時間、この場を大事にしたいなと改めて感じた」と思いを語りました。

※この番組の記事一覧を見る
    
<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

この記事が気に入ったら
「TOKYO MX」 公式
Facebookアカウントを
いいね!してね

RELATED ARTICLE関連記事