“部活動の地域移行”は教師の負担軽減につながる? そこには課題も

2022.08.22(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“部活動の地域移行”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“部活動の地域移行”について深掘りしました。

◆政府も後押しする“部活動の地域移行”とは?

室伏広治スポーツ庁長官は7月26日、公立中学校の運動部の部活動の休日指導を地域に移行するため、日本スポーツ協会に協力要請を出しました。室伏長官は「地域移行を前に進めるため、一層の連携を図って取り組みたい」としています。

そもそも“部活動の地域移行”とは、スポーツ庁の有識者会議の提言で、公立中学校の運動部の部活の休日指導を地域のスポーツクラブや民間事業者へ委託していくもの。2025年度末までに実現するとしています。他にも平日の部活動の地域移行は、休日での問題点を検証した後に進め、文化系の部活動については今後(8月内に)提言を行う予定。そして、高校については各校の実情に応じて検討していくとしています。

部活動は今後、誰がいかに担っていくべきなのか。タレントで起業家の加藤ジーナさんは「今の状態は先生の負担があまりにも大きすぎる」とまずは先生の負担軽減を望みます。

また、加藤さんが周囲の中学生に聞いたところでは、部活動の指導者と生徒たちのモチベーションが合致していることが少ないなど、現状では部活参加が義務化されていることなど「課題はすごく多い」と案じます。

◆部活動の地域移行が必要とされる2つの背景

部活動の地域移行の発端のひとつは「少子化」。公立中学校の生徒数は、ピーク時1986年の589万人に比べ、2021年は296万人とほぼ半分に。一方で、運動部の部活動の数は2004(平成16)年から2019(令和元)年まで約12万部と変化なく、部員不足の運動部も増加しています。

2つ目は、「教師の長時間労働」。日本の中学校教師の仕事時間は、週に約56時間とされていて、OECD(経済協力開発機構)の48ヵ国中最長。原因は部活動や事務作業の多さが挙げられています。

そうしたなか、Twitterでは一時「#教師のバトン」が話題に。これは本来、文科省が講じた教師志望者の減少防止のための企画でしたが、いつしか教師たちが膨大な業務を嘆く投稿が散見。「休日の部活などで残業が100時間を超える」、「保護者が部活動の文句を言い、責めてくる」などもあったそうです。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは、「学校の先生たちの負担は本当に大きいものだと思う」と危惧し、「そもそも学校教育だけで教育をしていくべきなのか」と疑問を投げかけます。「自分のチャレンジしたいことにもっと時間を使えるようにしてあげるべきで、そこに社会がもっとお金をかけていくなど、いろいろな教育の仕方があると思う」と持論を展開。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、「部活動はそれが生きがいになっている子どももいれば、僕らの相談窓口などでは悩んでいる子どもの原因のほとんどが部活動の人間関係。二面性がある」と現状を捉えつつ、この問題については「必ずしも、地域移行が教員の負担減には繋がらない側面もあると思う」とこれまでとは異なる意見を提示。

その理由は、学校教育から部活動を切り離すことはできないから。「地域移行したとしても、例えば部活のなかでの人間関係やトラブルは学校が把握しなければいけないので先生との連携は必須。そこでまず業務が発生してしまう」と大空さん。

さらに、もうひとつの問題点は「家庭の負担」。民間のクラブや地域の機関・団体などに任せることで既存の部活動以上の費用がかかることを懸念し、「人とお金、そこを行政がしっかりと支援することができれば、少しは改善するのかもしれない」と言及します。

◆課題は人材や場所の確保、さらには費用の問題も

すでに先行して部活動の地域移行を実施している事例があります。それは新潟県の村上市で、総合型スポーツクラブ「希楽々(きらら)」(NPO法人)が市内の公立中学校の男子バスケットボール部、約20人の練習を見ています。コーチはスポーツ少年団の専門コーチを常時5人雇っており、月謝は3,000円。メリットは初心者から熟練者までレベルにあった指導ができること。さらには他校との交流ができることも挙げられました。

これに対し、大空さんは「地域移行するのであれば、(費用は)絶対に公費で賄わないといけない。たとえ3,000円でも、生活保護の家庭などもあるのでものすごく負担」と指摘し、「同時に地域側も無償のボランティアに押し付けることにならないよう、もしやるのであればしっかりと報酬を発生させていくべき」とも。

今後の課題としては、大空さんが危惧する家庭の負担に加え、地域によっては競技指導者がいないことやスポーツクラブ・施設がない地域もあるため、指導者と場所の確保の問題もあります。

そうしたなか、加藤さん、古井さんとも費用は公費負担にするべきと強調。古井さんは「子どもたちの学びにこそ支援していかないと。家庭や地域に押し付けではうまくいかない」と国のサポートを期待し、「学校の外にいる大人たちとうまく関わり、育ててもらうことで僕もいろいろな経験が積めた。そうした幅広い選択肢が子どもたちに用意できる社会にしたい」と熱望します。

一方、大空さんは前述の「#教師のバトン」を「みなさんにぜひ見てほしい」と声を大にします。なぜなら、そこには切実な教員たちの声が多々あり、「過酷な状況があることを理解しなければいけない」と提言。そして最後に「地域は必ずしも安全な場所ではない」と警鐘を鳴らします。

「今、“日本版DBS”が議論されているが、性的な犯罪に手を染めた人がこうした地域の活動に関われない仕組みをちゃんと整備した上で、部活動も地域に移行していかなければいけない」と注意を促していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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