30年以内に70%の確率で起こる首都直下地震 減災の専門家に聞く地震への備え

2022.07.11(月)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、減災の専門家をゲストに迎え、“首都直下地震 想定見直し”について深掘りしました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、減災の専門家をゲストに迎え、“首都直下地震 想定見直し”について深掘りしました。

◆30年以内に約70%の確率で首都直下地震が起こる

5月25日、東京都は10年ぶりに首都直下地震の被害想定見直しを行いました。都心南部直下地震(M7.3)が起こった場合、23区では約6割の地域が震度6強以上を観測すると想定され、それは30年以内に約70%の確率で発生するとされています。

また、その際の被害想定は死者数が10年前の約9,700人から約6,200人に。その他、負傷者や避難者、建物被害も10年前の想定から減少しています。これは建物の耐震化や不燃化が進んだことで、被害が減っているということです。

キャスターの堀潤は、各地の被災現場を取材するなかで「当事者になってみて分かることが多い」という声を聞くといい、減災に向けた心構えが重要と話します。

この日のゲスト、東日本大震災で緊急消防援助隊を指揮した減災の専門家、減災研究室 ラボラトリー・フィードバック代表の永山政広さんは、この想定見直しに対し「想定では火災件数の規模が小さくなったように見えるが、震災の火災は条件が悪い。出火しやすく、消火しづらい、延焼拡大しやすいので、この想定を超えることも考えておかなければいけない」と注意を促します。

永山さんの意見に納得しつつ、堀は都内には普段から消防車両が入りにくい地域があったり、震災となると建物の倒壊や、道路の寸断も容易に考えられるとあって、震災時の火災に憂慮。

すると永山さんも「普通であれば1時間程度で消火できた火災が、(震災では)1日燃えたままということが増える。そうすると、消防の力は東京だけでは足りなくなることが現実に起こり得る」と補足します。

株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんも「震災への対策をしていないなかで被害が大きく広がるので、リスクに備えることはとても重要」と改めて気を引き締めます。

生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、今回の想定見直しで約10万人が死傷者に該当するという部分に注目し、「幸運にも死傷者にならなかったときに自分に何ができるのかを考えたい」と震災時の対応を慮ります。

◆首都直下地震が起きた場合、私たちはどうなるのか?

今回は首都直下地震が起こった際の災害シナリオも発表。「インフラ」に関しては、発生直後~1日目には停電が発生したり、電話やネットが使えなくなることが想定されます。

3日後には計画停電が続き、1週間後には順次通信が回復するものの、鉄道の運行などは一部停止されたままで、1ヵ月後に広い範囲で電気供給が再開すると見込まれています。

そして、自宅で避難をする場合については、地震直後にはエレベーターの停止。さらには断水発生でトイレが使用不可になることが予想されます。

3日後には家庭内の備蓄がなくなり、1週間後には空調などが使えず体調を崩す人が増加。1ヵ月後は自宅の修理をしようにも業者が足りないといった状況が考えられます。

避難所では、仮設トイレなどの衛生環境が悪化し、3日後になると物資を求めて避難する方が増え、適切な物資提供が困難に。

そして、1週間後には感染症の蔓延、1ヵ月後には避難者の精神的負担が増えることが想定されています。

こうした状況を回避するための対策について、永山さんは「ポイントは普段と違う行動を強いられること。避難所で日常生活を過ごすことは無理なので、それに備えた、適用した心構えが重要」と言います。

また、首都直下地震が発生した場合は「3日~1週間ではなく、さらに長いスパンで避難生活を考えていかなくてはいけない事態に陥る可能性もある」とも。

持病のある方や子育て中の方に加え、アレルギーのある子ども、高齢者などさまざまな人がおり、堀はその一人ひとりに対応できるのかと案じていると、「公的機関は基本的な援助しかできない」と永山さん。その上で「必要なものはそれぞれ違うので、自分、そして家族や地域などで考えておかなければいけない」と忠告します。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、今回の想定見直しが10年前のものに比べて被害が少なくなっていることに関し、「リスクが過小評価されていないといいが」と危惧。そして、日本は災害大国で、さまざまな災害が考え得るなかで、こうしたデータがメリットとなる一方で、ある種の後知恵バイアスとして働いてしまうなど、データに縛られてしまうことを懸念。

さらには、「リスク予見は無限にあるから、すごく疲れる作業」とその大変さを認めつつ、「そのリスクを予見し、マネジメントしていくことを諦めないことが大事であり、いろいろな想定ができると思うので、あらゆることをやっていくということに尽きる」とリスク予見の重要性を示唆します。

大空さんの意見に永山さんも賛同し、「意外と簡単なことでクリアできることもある。数字を見てしまうと諦めてしまうこともあるが、自分たちもできる、何かしなければいけないという視点に立ち、まず気づいてもらうことが重要」と主張。

そして、身を守るためのポイントとして「災害は段階的にやってくる」とも。まずは揺れ、そして火災や津波、さらには避難生活で長期的にライフラインが停止したことによる危機などがあり、「段階的にやってくるステージを分けて考えると自分に必要なものが整理しやすい」と助言します。

◆減災の専門家が訴える、地震に対しての備えとは?

今回の想定見直しでは、首都直下地震が起こった際の帰宅困難者は約453万人と想定されています。ちなみに東日本大震災時は約515万人でした。

なお、ターミナル駅に滞留すると想定されている人数は、東京駅で43.6万人。新宿駅で40.1万人、渋谷駅で20.3万人ですが、都内で「一時滞在施設」が確保できているのは約44万人分のみとなっています。

そして、今課題となっているのは高層マンションの対策で、エレベーターが停止することなどで救助が困難になることが予想されます。また、木造住宅の密集地域の不燃化についても、そこに住むのは高齢者も多く、建て替えが進まない現状があります。

最後に、減災の専門家・永山さんに今できる地震への備えについて聞いてみると「いざというときの行動を考えておくこと」と回答。というのも、そうすることで必要なことや必要なものがわかり、備えが進むからで、永山さんは「他人事ではなく、自分ごととして捉えてもらうことが重要」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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