地震被害想定で“倒壊多数”の荒川区 現状と支援策は

2022.06.14(火)

10:35

 東京都は5月、10年ぶりに首都直下地震の被害想定を発表しました。この中で、地震が発生した際に倒壊する建物の数が1地点当たり100棟以上とされる地点が集中しているのが「荒川区」です。なぜ、被害が大きくなると想定されているのでしょうか。荒川区の現状と対策を取材しました。

 東京都は5月、10年ぶりに首都直下地震の被害想定を発表しました。この中で、地震が発生した際に倒壊する建物の数が1地点当たり100棟以上とされる地点が集中しているのが「荒川区」です。なぜ、被害が大きくなると想定されているのでしょうか。荒川区の現状と対策を取材しました。

 5月25日に東京都が発表した首都直下地震の被害想定の中で大きな被害が想定されている荒川区の街を訪ねました。案内をしてくれた荒川区・住まい街づくり課の大木浩課長は「区内にはこのような木造住宅密集地域が約6割ぐらいある」と区が抱える課題について話します。

 区内には老朽化が進む“木造住宅の密集地域”、いわゆる「木密地域」が広がっていて、これが地震の際に被害が拡大する一因になると予想されています。大木課長は「1981年以前の旧耐震基準で建てられた建物は、地震に対する耐性が低い」と指摘します。

 懸念される建物の倒壊に加え、木密地域では火災が発生しやすく燃え広がりやすいなどの問題点があります。これに対し東京都は東日本大震災以降、木密地域の中でも特に改善が必要なエリアを「不燃化特区」として指定しています。これを受け、荒川区では建物を建て替える際の支援制度を行っています。

 制度を利用して自宅の建て替えを行った山口さんは、元々築40年ほどの木造住宅に住んでいましたが“ある体験”をきっかけに考えが変わったといいます。区内に住む山口さんは「東日本大震災の時、すごく揺れた。古い家だったのでクラック(ひび)が入ってしまって、これは早く建て替えなくちゃいけないなというのが一番の理由」と話しました。

 家は支援制度が使える不燃化特区にあり、荒川区ではこのエリアでの建て替えに対して費用の一部を支援しています。例えば100平方メートルの建物の場合、解体工事費で最大260万円、設計費などに最大166万円が助成されます。山口さんは「お金に代えられないものがある。自分の経験上、制度を利用して早く地震に強い建物に建て替えた方が好ましいと思う」と語りました。

 荒川区はこうした建て替えが街の不燃化や耐震化にもつながっていくと話しています。荒川区・住まい街づくり課の大木課長は「防災は地道に続けていくしかない。数多くの区の施策を利用してもらい、区民にも協力いただきながら安全な荒川区をつくっていきたい」と話しています。

 

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