広がる「デジタル教科書」 現場の先生が語るメリットと課題

2021.06.10(木)

06:50

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月12日(水)放送の「フラトピ!」では、キャスターの田中陽南が“デジタル教科書”の最前線を取材しました。

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。5月12日(水)放送の「フラトピ!」では、キャスターの田中陽南が“デジタル教科書”の最前線を取材しました。

◆政府が本格導入を目指す「デジタル教科書」とは?

紙の教科書の内容をタブレット端末などに取り込んだ「デジタル教科書」。今年度はその普及を目的に22億円もの国の予算が計上されるなど、政府は本格導入に向け力を注いでいます。

デジタル教科書を展開している株式会社Lentrance(レントランス)代表取締役の石橋穂隆さんに、その特徴を聞いてみると「デジタル教科書は紙の教科書を電子化し、音声、アニメーション、動画などを合わせて見られるようにしたもの」と言い、掲載されている写真を拡大することも可能で「紙面では気づけなかったディテールまで見ることができ、それによって新たな気づきを得ることも可能」と解説。

その他にも簡単に書き込みができたり、例えば理科の資料集では元素記号を立体的に見ることができたり、学習の理解を深めるだけでなく、文字の拡大や色の選択といった視覚などの障害を持つ子どもにも個別に対応できる機能が備わっているのも特徴の1つです。

ただ、課題もあり、先生も初めて使うため慣れていない部分が多く、「現場で指導する先生方のフォローもあわせてやっていかなくてはいけない」と石橋さん。

◆現場の先生が語るデジタル教科書の利点

次に田中は、デジタル教科書をすでに導入している東京学芸大学附属小金井小学校を取材。鈴木秀樹教諭に話を伺うと、この小学校では5、6年生にデジタル教科書を導入しており、例えば文章の要約をする際、デジタル教科書だとスタイラスペンでなぞるだけで簡単に教科書から本文を引っ張ってくることが可能。その機能により、子どもたちは試行錯誤しながら自由に文章を入れ替えることができ、従来の教科書ではできなかった操作性の自由さが子どもの思考力を高めるのに役立っていると言います。

また、デジタル教科書で没頭しない子はいないそうで、これは同時に「学習しやすい環境が整ったということ」と鈴木さん。間違えてもすぐに消せたり、直せたりすることが子どもたちの試行錯誤を促し、「試行錯誤のチャンスがあるということはどんどん没頭していく環境なのだと思う。そこが紙の教科書の時代との大きな違い」と実感を語ります。

多くの生徒が意欲的に課題に取り組むようになるなどのメリットがある反面、やはり課題もあるそうで、それは「転校」。デジタル教科書を導入している自治体としていない自治体があり、「そこのギャップは大きすぎる」と鈴木さん。教師も声を上げ、デジタル教科書について語り合い、より良いものにしていくことで「子どもたちの学びはさらに広がっていく可能性は大きい」と話していました。

◆文科省が掲げるGIGAスクール構想…その現状は?

そんな教育現場の声にキャスターの堀潤は、デジタル教科書の導入を巡り、地域格差が生じる可能性があることに驚く一方で、デジタル教科書を用いることで先生の負担が軽くなること、遠隔での授業もやりやすくなるなどさまざまなメリットを感じている様子。また、デジタルを駆使することで生徒一人ひとりが何を見ているのか、子どもたちのデータが回収できることから、それが教育現場にどうフィードバックされるのかに関心を示します。

実際に現場を取材した田中は「教科書が違う使い方になるなと感じた」と率直な感想を述べ、さらには「子どもたちのなかには縦書きが読みづらいと感じる子がいる。そういうデータを集めることで、縦書き・横書きをすぐに変換できる機能を入れるなど、いろいろ開発している」と現状を伝えます。

番組Twitterに、「実験はリアルに体感するから意義があるんじゃないか?」という意見が寄せられると、田中は「実験だけでなく紙の教科書のほうが良い場合もあるし、実際に体験することが良い場合もある。1つに絞らず全部併用して使い、特に紙で時間がかかっていた部分をデジタルにし、その時間を体験に持っていきたいという話もあった」と返答。

現在、デジタル教科書は大きな広がりを見せていますが、文科省は「GIGAスクール構想」を掲げ、「児童生徒1人1台端末」、「高速大容量の通信ネットワーク」を提唱。子どもたちの資質・能力を育成できる教育ICT(情報通信技術)環境の実現化を目指しています。

東京23区内の端末の整備状況は、整備が完了しているのは17区で、残り6区も整備中なものの、その進捗はかなり進んできています。

しかし、全国で見ると平均値は7.9%で、最高値は佐賀県の25.3%。一方、最低値は千葉県の1.7%とかなりバラつきがあり、堀は生まれ育つ場所による“デジタル格差”を懸念。かたや田中は「デジタル教科書も今年度から導入した学校がかなり多いということなので」と今後のさらなる普及に期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

 

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